藤蔭高校(大分県日田市)※写真と本文は無関係です |
日経には以下の内容で問い合わせを送った。
【日経への問い合わせ】
日本経済新聞社 馬場燃様 後藤達也様 福岡幸太郎様 浜美佐様 荒木望様
10日の朝刊経済面に載った「ゆるみとゆがみ~膨らむ副作用(下)マイナス金利 家計は敗者」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。
「『それって本当に動くんですか?』。京都大学で金融論を教える岩下直行教授は、最近の授業で学生が示す反応に戸惑いを隠せない。マクロ経済学の基本である金利が変動すると説明しても、キョトンとした顔をするのだ。今の学生は生まれてからずっとゼロ金利で育ってきたため無理もない。岩下教授は『金利は古い教科書にある話で、メリットや役割を実感できなくなっている』と苦笑する。日銀はデフレに対応するため、1999年にゼロ金利政策を導入した。2016年にはマイナス金利政策に踏み切ったが、物価は上がらない。かつて経済の体温計とされた長期金利もゼロ%程度に抑えこみ、家計、企業、政府の間にゆがみをもたらしている」
本当に「今の学生は生まれてからずっとゼロ金利で育ってきた」のでしょうか。「日銀はデフレに対応するため、1999年にゼロ金利政策を導入した。2016年にはマイナス金利政策に踏み切った」と書いているので、99年以降は「ゼロ金利政策」または「マイナス金利政策」だと皆さんは認識しているのでしょう。
実際には2000年8月に「ゼロ金利政策」を解除しています。01年3月に「ゼロ金利政策」へと戻りますが、06年7月に再び解除へ踏み切っています。「今の学生は生まれてからずっとゼロ金利で育ってきた」との説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
記事には「金利は古い教科書にある話で、メリットや役割を実感できなくなっている」という「岩下直行教授」のコメントと整合しない記述もあります。
「国立大学院に通う25歳の男性は『低金利の恩恵は全くない」と話す。低金利とはいえ学生ローンの固定金利は2%を超え、私大の学部時代を含め1千万円超の授業料などの借り入れの返済に家族も追われる。『Tポイントだけで1週間暮らしたことがある』と嘆く」
「学生ローンの固定金利は2%を超え」ているのならば、今の学生にも「金利」への意識はあるはずです。少なくとも「国立大学院に通う25歳の男性」は「金利は古い教科書にある話」とは感じていないでしょう。
ついでに言うと「低金利の恩恵は全くない」という「国立大学院に通う25歳の男性」の認識は誤りです。「低金利」だからこそ「学生ローンの固定金利」が「2%」台という低水準に収まっているのです。その「恩恵」はこの「男性」も得ています。それは皆さんも分かっているはずです。なのになぜ「低金利の恩恵は全くない」という誤解に基づくコメントをそのまま使ってしまったのですか。
付け加えると「Tポイントだけで1週間暮らしたことがある」とのコメントも引っかかります。「生活が苦しい」と訴えているのでしょうが、どちらかと言うと「1週間も暮らせる程のTポイントをためていたのか」という驚きが勝ります。例えば「1000円分のTポイントだけで1週間暮らしたことがある」となっていれば、話は変わってきますが…。
最後に記事の書き方について指摘しておきます。語順の問題です。記事には「みずほ総合研究所が16年2月に導入したマイナス金利政策の影響を経済主体別に試算したところ、家計への影響が大きいことがわかった」との記述があります
この書き方だと「みずほ総合研究所が16年2月にマイナス金利政策を導入した」と取れます。「16年2月に導入したマイナス金利政策の影響を、みずほ総合研究所が経済主体別に試算したところ、家計への影響が大きいことがわかった」と直せば問題は解消します。
「みずほ総合研究所がマイナス金利政策を導入した」と誤解する読者は稀だとは思います。しかし「記事を作るプロ」と呼べるレベルを目指すのであれば、こうした点にも目配りすべきです。
問い合わせは以上です。回答をお願いします。御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社として、責任ある行動を心掛けてください。
◇ ◇ ◇
追記)結局、回答はなかった。
※今回取り上げた記事「ゆるみとゆがみ~膨らむ副作用(下)マイナス金利 家計は敗者」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190510&ng=DGKKZO44602980Z00C19A5EE8000
※記事の評価はD(問題あり)。連載の責任者は馬場燃記者だと推定し、馬場記者への評価をDで確定とする。
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