2018年6月14日木曜日

錦織圭を「2014年以降に誕生のニュースター」と誤解した日経

錦織圭は2014年以降に誕生した「ニュースター」と言えるだろうか。明らかに違うと思えるが、13日の日本経済新聞朝刊スポーツ1面に載った「熱狂の裏側 変わるサッカービジネス(上)サムライ人気 曲がり角? 好収益でも募る危機感」という記事ではそう断言していた。
宇佐神宮(大分県宇佐市)※写真と本文は無関係です

日経への問い合わせ内容は以下の通り。

【日経への問い合わせ】

13日朝刊スポーツ1面の「熱狂の裏側 変わるサッカービジネス(上)サムライ人気 曲がり角? 好収益でも募る危機感」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。

“史上最強”とうたわれた『ザックジャパン』が2014年ブラジル大会で1次リーグ敗退に終わり、日本中が失意のどん底に落とされた。あれから4年。本田圭佑(パチューカ)、岡崎慎司(レスター)ら主力がピークを過ぎた一方で、新戦力の台頭は遅れ、世界ランキングも大きく下げた。この間、スポーツ界には錦織圭、大谷翔平らニュースターが続々と誕生。20年東京五輪が近づき、『世間の関心は卓球など他競技に移り始めた』と日本サッカー協会の須原清貴専務理事は警戒する。W杯出場が当たり前となった今、サッカーに国民が向ける視線は厳しくなりつつある

記事の説明が正しければ「錦織圭、大谷翔平」が「ニュースター」となったのは2014年7月以降となります。

まず錦織圭から見ていきましょう。錦織の公式ホームページには「2007年10月のジャパンオープンでプロ転向。翌2008年2月、デルレイビーチ国際選手権でATPツアー初優勝。同年8月の全米オープンでは、日本男子シングルスとして71年ぶりにベスト16進出という快挙を達成し、その年のATPワールドツアー最優秀新人賞を受賞」と出ています。常識的には、08年に「ニュースター」錦織圭が誕生したと言えます。ブラジルW杯前の14年5月には、世界ランク9位とトップテン入りを果たしています。

次に大谷翔平です。こちらはやや微妙ですが、2013年の日本ハム入団前から大きな注目を集めた選手で、13年も「二刀流」である程度の成績を残しています。ブラジルW杯後に「ニュースター」として登場した印象はありません。

この間(14年7月以降)、スポーツ界には錦織圭、大谷翔平らニュースターが続々と誕生」との説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社として、責任ある行動を心掛けてください。

付け加えると、「世間の関心は卓球など他競技に移り始めた」とのコメントを使うのであれば、「錦織圭、大谷翔平」のところに卓球選手を1人は入れた方が良いでしょう。例えば張本智和であれば、まさに14年以降に現れた「ニュースター」です。

さらに言えば、「世界ランキングも大きく下げた」との説明にも問題を感じました。ブラジルW杯の時の世界ランクは46位で今が61位。「下げた」のは事実ですが、「大きく」かどうかは微妙です。個人的には、大きく下げた感じはしません。「低迷が続いている」といったところでしょうか。「大きく下げた」と断定的に書くのならば、誰もが納得するような大きなランクダウンが欲しい気はします。

せっかくの機会なので、記事の終盤にも注文を付けておきます。

同じように下馬評が低かった8年前の南アフリカ大会は、勝ち進むにつれ日本中を熱狂の渦に巻き込んだ。決勝トーナメントのパラグアイ戦は50%超の視聴率を記録した。『こんな爆発力のあるコンテンツは他にない』(テレビ関係者)と期待する声はなおやまない。W杯で勝てばまた熱狂の風が吹く。しかし、競技の土台を耕し、未来の代表選手を育てる次の『戦い』が待つ

まず「勝ち進むにつれ」が気になりました。こう書くと、次々と上の段階に進んでいったように感じます。しかし、勝ち「進んだ」のはグループステージを突破した1回だけです。言いたいことは分かりますが、少し引っかかります。

W杯で勝てば」も、どういう状況を想定しているのか疑問が残ります。例えば2連敗でグループステージ敗退が決まってからポーランドに勝利した場合、「熱狂の風が吹く」でしょうか。「W杯で勝てば=決勝トーナメントに進出すれば」といった前提があるのならば、その点は明示した方が良いでしょう。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。

◇  ◇  ◇

追記)結局、回答はなかった。

※今回取り上げた記事「熱狂の裏側 変わるサッカービジネス(上)サムライ人気 曲がり角? 好収益でも募る危機感

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180613&ng=DGKKZO31694940T10C18A6UU1000


※記事の評価はD(問題あり)。

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