2017年2月25日土曜日

日本の労働生産性は「世界の中位」? 「日経働き方改革有識者提言」の騙し

日経働き方改革有識者提言」に関連する記事を載せた25日の日本経済新聞朝刊特集面に「騙し」とも言えるグラフを見つけた。これに関しても、記事に出ていたアドレスへ意見を送ってみた。その内容は以下の通り。
九州国立博物館(福岡県太宰府市)
         ※写真と本文は無関係です

【日経へのメール】

取り上げたいのは特集面に載っている「日本の労働生産性は世界の中位に」というグラフです。グラフによると、日本は労働生産性でOECD加盟35カ国中22位となっています。これで「世界の中位」と言えるでしょうか。「世界」には「OECD加盟国」以外の国もたくさんあります。「世界で中位」と断定するならば、OECD加盟国ではなく世界全体で何位かを示すべきでしょう。

注記によると、今回のグラフは「日本生産性本部調査」となっています。日本生産性本部は「労働生産性の国際比較 2016年版」の中で「世界ランキング」も出しています。「世界銀行のデータを中心に、アジア開発銀行やILO、各国統計局などのデータも補完的に使用することで155カ国の労働生産性を計測」した結果、日本は32位になっています(データは2014年のものを使用)。155カ国中32位なので、どう考えても「世界の上位」です。

OECD加盟国内で比較したいのならば「OECD加盟国で中位」とすべきです。「世界」の中でどうなのか示したい場合、「世界ランキング」を用いるべきです。日本生産性本部が「世界ランキング」を出しているのに、それを避けてOECD加盟国内での比較を用いて「世界で中位」とタイトルを付けるのは極めて恣意的です。

記事の作り手に「日本の労働生産性が世界の中で見劣りすることをグラフで示したい」との意識があるのは分かります。自分たちの意図をアピールできるようにデータを用いるのも、ある程度は許されるでしょう。しかし、今回はやり過ぎです。「世界で中位」と断定するのは、厳しく言えば「間違い」です。自分たちの主張に自信があるのならば、こんな「ごまかし」に頼らず、正々堂々とタイトルを付けてください。

◇   ◇   ◇

今回の件を例えるならば、「部長以上の社員の中で収入が中位」の人を「社員の中で収入が中位」と紹介するようなものだろうか。しかも記事では、誤った印象を故意に与えようとした可能性が高い。だとしたら読者への背信行為であり、提言をまともに受け止める気にはなれない。

※今回取り上げた記事「働く力再興~成果と生活、両立探れ 日経働き方改革有識者提言
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170225&ng=DGKKZO13364910U7A220C1M10800

※「日経働き方改革有識者提言」に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「働き方改革提言」主体は「日経」それとも「有識者」?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/02/blog-post_25.html

働き方改革有識者提言と事例に齟齬 日経1面「働く力再興」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/02/blog-post_38.html

具体策なしに非現実的な目標「日経働き方改革有識者提言」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/02/blog-post_66.html

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