2017年2月4日土曜日

これも「働き方改革」? 日経「働き方改革、AIで後押し」

働き方改革」に絡めれば記事の扱いが良くなるのだろう。最近の日本経済新聞には、やたらとその手の記事が載っている。しかし、やり過ぎも目立つ。
阿蘇山(熊本県阿蘇市) ※写真と本文は無関係です

4日の朝刊企業総合面に載った「働き方改革、AIで後押し 三井物産 社内の情報、共有しやすく」という記事は、最近はやりの「AI」とも絡めている。知名度の高い「三井物産」の取り組みなので、見出しは申し分ない。だが、中身にはかなり無理がある。

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

三井物産は人工知能(AI)を使って働き方改革を進める。社内のサーバーなどに散在している膨大な情報の中から、新事業の立ち上げにつながる情報をAIが抽出し担当社員に知らせる。子育て中の女性や外国人など社員の多様性が広がる中、効率的に成果を生み出せる環境を整える。

三井物産が扱う分野はエネルギーや金属資源、インフラ、自動車、食糧、流通など幅広く、取引先は26万社にも及ぶ。この膨大な社内サーバー内の文章や画像などのデータファイルを、月内をメドに部局にかかわらず誰でも検索できるようにする。例えば別の部署の社員が同じ会社の決算情報を重ねて問い合わせるといったムダをなくす。

1年後にはAIが検索の履歴を分析し、社員が求めていそうな新たな情報を自動で掘り起こして知らせるようにする。「新たな発見で新事業などのアイデアにする」(経営企画部)狙いだ。従来は人的ネットワークで広がっていた情報を、共有する速度を上げる。

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AIが検索の履歴を分析し、社員が求めていそうな新たな情報を自動で掘り起こして知らせるようにする」と「働き方改革」につながるだろうか。「働き方が少しでも良い方向に変われば、働き方改革になる」との弁明はできるだろう。だが、普通に考えれば、別の話だ。

労働時間を減らすとか、勤務時間を柔軟にするとか、そういった動きと結び付けずに「働き方改革を進める」と書いても説得力はない。今回の記事は「中身の乏しい大げさな内容」と評するしかない。

同じ面に載った「茨城・牛久に直営保育所 ゼンショー」というベタ記事にも、似たような問題を感じた。記事では以下のように書いている。

【日経の記事】

牛丼店「すき家」などを展開するゼンショーホールディングスは3月、茨城県牛久市に直営の保育所を設ける。2015年9月に茨城県つくば市に開設した直営保育所に続き2カ所目。グループ企業が周辺で運営する飲食店やスーパーなどで働く従業員の子供を預かる。働きやすい環境を整えると同時に、人手不足に対応する狙いもある。

ゼンショーHDの子会社、かがやき保育園が運営する。定員は19人で保育料は月5000円。1時間100円の一時保育も利用できる。

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これも「働き方改革」に関連させたつもりだろう。だとしても、載せる意味はあるのか。ゼンショーが初めて直営保育所を設けるのならば、まだ分かる。だが「茨城県つくば市に開設した直営保育所に続き2カ所目」だ。ゼンショーが直営保育所を開設するたびに、日経はベタ記事で紹介していくつもりなのか。そうではないとすれば、なぜ「2カ所目」を記事にするのか。

直営保育所なので、「従業員の子供」しか預かってもらえない。それでも記事で取り上げるのは、「企業の取り組みとしてニュース価値がある」と判断したからだろう。だが、どこにそんな価値があるのか。ベタ記事であっても、もう少しニュースの価値を吟味して紙面に載せるべきだ。


※2つの記事の評価はD(問題あり)。

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