2017年2月11日土曜日

内容無視してご都合主義の見出し 日経女性面の罪

11日の日本経済新聞朝刊女性面に載った「男・女 ギャップを斬る」という記事(筆者は労働政策研究・研修機構主任研究員の池田心豪氏)の見出しはひどい。「仕事か家庭かの二者択一 均等法前も今も変わらず」と付けた見出しに合致する話は記事に出てこない。それどころか、この見出しは記事内容と正反対に近い。
筑後川(福岡県朝倉市・うきは市) ※写真と本文は無関係です

記事で見出しに関連しそうな部分と、女性面のアドレスに送ったメールの内容を見てほしい。

【日経の記事】

保育園といえば普段は父と登園していたが、ある日母と登園したときのこと、開園前の園庭に私を放り込んで母は出勤したという思い出もある。男女雇用機会均等法制定のずっと前、ワークライフバランスという言葉も当然なかった1970年代の話である。結局、母は3人の子育てと仕事を両立して管理職になり、定年まで勤めた

女性活躍の歴史はしばしば85年の均等法制定を起点に語られる。だが、実は前史がある。均等法は勤労婦人福祉法という法律を改正してつくられた。72年制定の同法に努力義務として「育児休業」という言葉がすでに載っている。公務員の教師・看護師・保育士については、75年に育児休業法が制定されている。先進企業の育休制度導入はさらに前、高度成長期の60年代にさかのぼる。多くの女性が結婚や出産を機に家庭に入ることが当たり前だった時代から、長く働き続けてほしいと使用者が思う女性労働者にはその道が用意されていたのである。だが、母と同じような逸話を持つ当時の女性の話から察するに、その道は平たんでなかったようだ。

均等法は総合職と一般職、正社員とパートといった形で女性に分断をもたらし、結果として男女格差解消に役立っていないとの批判がある。だが、その前から仕事と家庭のはざまで女性の意欲と能力を試して振り分けることは行われていたようだ。線引きの基準は時代とともに変化しているが、基本的な図式は今も変わっていないように見える。これを是認せず、誰もが仕事で活躍できる政策を推進することが重要である。

【日経へのメール】

11日の「男・女 ギャップを斬る」というコラムの見出しについてお尋ねします。この記事には「仕事か家庭かの二者択一 均等法前も今も変わらず」との見出しが付いています。しかし、最後まで読んでもそうした内容の話は出てきません。
ゲント(ベルギー)※写真と本文は無関係です

前半部分で筆者の池田心豪氏は、働きながら自分を育ててくれた母親について述べています。「母は3人の子育てと仕事を両立して管理職になり、定年まで勤めた」そうです。そして「(均等法前にも)長く働き続けてほしいと使用者が思う女性労働者にはその道が用意されていた」と結論付けています。

つまり、均等法の制定前にも家庭と仕事を両立させた女性がいたことを池田氏は読者に示しています。見出しとしては「仕事か家庭かの二者択一 均等法前も今も変わらず」ではなく、「仕事と家庭 両立の歴史 均等法前から」とでもすべきです。今回の記事では、内容と正反対に近い誤った見出しになっていませんか。正しいとすれば、その根拠も教えてください。

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均等法前も今も変わらず」続いていることについて、池田氏は「仕事と家庭のはざまで女性の意欲と能力を試して振り分けることは行われていたようだ」とは述べている。しかし、ここから「仕事か家庭かの二者択一」と見出しに取るのは無理がある。

推測するに、今回の見出しの“ミス”は意図したものではないか。「仕事と家庭 両立の歴史 均等法前から」といった見出しであれば、記事内容に忠実ではある。だが、日経で女性面を担当する記者らにとって都合が悪い見出しなのだろう。だから強引に「仕事か家庭かの二者択一 均等法前も今も変わらず」と付けてしまった。そう考えれば腑に落ちる。

編集方針に方向性があるのは構わない。だが、事実を無視してまで強引に自分たちの価値観を押し付けようとすれば、紙面への信頼を損ない、結果として女性のためにもならない。「私たちは偏った考えに囚われたまま紙面を作っています」と宣言するような見出しを付けていては、自分たちの首を絞めるだけだ。

※見出しの問題なので、記事・筆者への評価は見送る。

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