◆週刊エコノミスト7月12日号 「英国EU離脱の衝撃」30ページ
◆週刊東洋経済7月9日号 「EU離脱 英国発 世界不安」18ページ
◆日経ビジネス7月9日号 「英離脱ショック」11ページ
◆週刊ダイヤモンド7月9日号 「英国EU離脱」9ページ
熊本学園大学(熊本市) ※写真と本文は無関係です |
ちなみに、東洋経済、日経ビジネス、ダイヤモンドは「緊急特集」としていたが、エコノミストだけは「緊急」の文字が見当たらない。特集の冒頭では「総力特集する」と宣言している。この時点で他誌との勝負は付いている。エコノミストの担当者は桐山友一、種市房子、大堀達也の各記者。「どうせ残留だろ」と決め付けず、入念な準備を進めた姿勢を高く評価したい。
エコノミストの特集の中では「現地ルポ 主権を取り戻そうと情に訴えた離脱派 ひ弱なエリートの残留派を打ち破った」という記事(筆者はジャーナリストの今井一氏)が印象に残った。
日経ビジネスがロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授のパトリック・ダンレビー氏に「直接民主主義の恐ろしさが表れた」と語らせたように、国民投票で国の重要問題を決めることに懐疑的な見方がメディアでも多い。しかし、今井氏の主張はこれと一線を画す。記事の一部を紹介しよう。
【エコノミストの記事】
「EU離脱という愚かな選択をしたひどい国民投票だった」
投票結果が出た後、英国内では残留派の中からこうした声が噴出している。日本でも同様の発言をする学者や評論家がいるが、彼らの中には「3年前に実施を公約にしたキャメロン首相が悪い」と批判する人もいる。
確かにキャメロンが党首を務める政権与党(保守党)内のEU離脱派議員(約4割)の不満を抑え込む狙いもあっての実施だった。それも承知の上で、国民投票で決着を図ったことを私は肯定したい。その理由は3つ。
1つ目は、イギリスはECに加盟した2年後の1975年に「EC残留」の是非を問う国民投票を実施しているのだが、あのとき以上に「EU残留」に対する懐疑心が充満していることだ。
2つ目は、キャメロンVSジョンソン前ロンドン市長に代表されるように、政権与党が「残留・離脱」で真っ二つになっている状況で、議会や政府が「残留だ」と言い続けても多くの国民は納得しない。
3つ目は離脱派、残留派を問わず、国民の多数は「国民投票での決着」を支持している。今回の国民投票はまさに「デモクラティア(民主主義、人民主権)」を具現化するものだったからだ。
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現地で離脱派、残留派それぞれの集票活動を取材した上で、上記のように訴える今井氏の記事には説得力があった。この記事も含め、エコノミストの特集には質と量の両面で満足できた。
それに比べるとダイヤモンドは辛い。表紙には「落語にはまる!」という大きな見出しが躍り、「EU離脱の深刻」の文字は片隅に追いやられている。40ページも使って落語の楽しみ方を伝えるのが経済誌としてのダイヤモンドの使命なのか。ビジネスマンの趣味を応援する雑誌にでもなっていくつもりか。
「落語にはまる!」のような脱線企画をたまにはメインに据えていいのかもしれない。しかし、英国のEU離脱という歴史的な転換点を迎えた時に、この問題を9ページで済ませて40ページの落語特集を組むのがダイヤモンドの在り方ならば、そこに頼って経済情報を収集する気にはなれない。
※特集の評価は週刊エコノミストがB(優れている)。他誌はC(平均的)とする。エコノミストの桐山友一記者への評価はBを維持する。暫定でBとしていた種市房子記者と大堀達也記者はBで確定とする。ジャーナリストの今井一氏は暫定でBとする。
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