北海に近いカイゼル通り(オランダ) ※写真と本文は無関係です |
「理不尽な二重課税がなかなか是正されない」。ホンダの池史彦会長(63)がインドでの税務トラブルに悩んでいる。
インド北部ウッタルプラデシュ州にある四輪車の製造子会社、ホンダカーズインディア。目を疑うような課税通知が届いたのは2011年のことだった。
ホンダカーズインディアは日本本社の機能の一部も担っているとみなし、本社の関連売上高に一定額の税金を払うよう求めた。当初の税額は累計1000億円を超した。だが、ホンダカーズインディアは現地法人として法人税を納めている。「二重課税だ」。ホンダがこう主張した結果、売上高課税は撤回されたが、現法を「本社の一部」ともみなすかは対立したままだ。
新興国に進出した企業と現地税当局の紛争が増えている。政府調査によると企業が日本と進出先国で課税される「二重課税」は15年2月までの6年で145件。約8割をインドなどアジアが占めた。新興国は課税ルールが整っておらず「米西部劇さながらの無法地帯に近い」(日本企業幹部)との嘆きも聞こえてくる。
最初に読んだ時は「インドで法人税を払っているのに、日本の税務当局からも二重に課税されそうになった」と解釈しかけた。しかし、途中で「企業と現地税当局の紛争が増えている」と出てきたので、「インドで法人税と売上高課税の二重課税をされそうになった」という意味かなと考え直した。ところが今度は「日本と進出先国で課税される『二重課税』」と書いてある。ここで迷路にはまってしまった。
「本社は日本で課税されているのに、本社の関連売上高にインドでも課税されるので、その意味で二重課税」という可能性も探ってみた。しかし、ホンダカーズインディアが現地法人として法人税を納めていることが「二重課税」の根拠になっているので、これも考えにくい。こちらの知識不足もあるのだろうし、何かを見落としているのかもしれないが、説明が十分だとは思えない。
上記のくだりには、他にもいくつか注文がある。列挙してみる。
◎税務トラブルに悩んでる?
まず、このホンダの話が古い。課税通知が届いたのが2011年。売上高課税が撤回されたのがいつかは不明だが、こんな古い話をなぜ今頃になって紹介するのか。また、「現法を『本社の一部』ともみなすかは対立したまま」とは書いているが、既に課税が撤回されたのならば「インドでの税務トラブルに悩んでいる」と言われても説得力はない。
◎紛争が増えてる?
「新興国に進出した企業と現地税当局の紛争が増えている」と書いた後にデータを示しているが、そこには「企業が日本と進出先国で課税される『二重課税』は15年2月までの6年で145件。約8割をインドなどアジアが占めた」としか出てこない。これでは「増えている」かどうか判断できない。
◎「関連売上高」とは?
「ホンダカーズインディアは日本本社の機能の一部も担っているとみなし、本社の関連売上高に一定額の税金を払うよう求めた」というくだりも意味がよく分からなかった。まず「本社の関連売上高」が分かりにくい。「本社のインド関連売上高」の可能性が高そうだが、はっきりしない。「関連売上高に一定額の税金を払うよう求めた」も不自然な書き方だと思えた。「関連売上高の一定額を税金として払うよう求めた」ならば違和感はないのだが…。
記事の後半部分についても指摘を2つしておく。
◎あまり変わらないような…
【日経の記事】
企業の悩みはこれから深刻になりそうだ。国際通貨基金(IMF)の調べによると、13年に5%だった新興・途上国の成長率は15年には4.3%まで減速する。国際税務に詳しい白崎亨税理士(46)は「マネー流出で成長が鈍った新興国は税収不足を補うために外資への追徴課税を強める可能性がある」と言う。企業はどう対応すべきだろうか。
5%だった成長率が「4.3%まで減速する」のは、そんなに大きな変化だろうか。大差ないと考える方が自然だ。
◎長い目で見なくても…
【日経の記事】
浮き沈みが激しい金融市場の動向は気がかりだが長い目で見れば新興国の人口は増え経済も成長する。未来への期待と現実のリスク。「地元に根付くにはきちんとしたタックスペイヤーでなければならない」。ホンダの池会長はここが踏ん張りどころだと考えている。
「長い目で見れば新興国の人口は増え経済も成長する」と言われると「短期的には新興国で人口は増えず経済も成長しない」との前提を感じる。しかし、そんなことはない。短い目で見ても人口は間違いなく増えるし、経済も非常に高い確率でプラス成長になりそうだ。むしろ、長い目で見ると、人口も増えず経済も成長しない事態に陥る可能性が高くなるような…。
※記事の評価はD(問題あり)とする。
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