2019年10月25日金曜日

FACTA「トヨタ滅ぼす御曹司と守役」に見えた事実誤認

FACTA11月号に載った「トヨタ滅ぼす御曹司と守役」という記事に「トヨタ本体はこの販売店再編を一切発表せず、業界紙の日刊自動車新聞が報じるにとどまっている。腹の中を探られたくなかったからではないかと勘繰ってしまう」との記述がある。しかし「この販売店再編」を報じたのは「日刊自動車新聞」だけとは思えない。
グラバー園の旧リンガー住宅(長崎市)
          ※写真と本文は無関係です

FACTAには以下の内容で問い合わせを送った。


【FACTAへの問い合わせ】

FACTA 主筆 阿部重夫様  発行人 宮嶋巌様  編集長 宮﨑知己様

11月号の「トヨタ滅ぼす御曹司と守役」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下の記述です。

<記事の引用>

そして、多くのトヨタ社員が疑問視するのは、「2トップ」の好き嫌いで進む販売店改革だ。

トヨタは10月中に、愛知県内の直営販売会社、トヨタカローラ愛知とネッツトヨタ中部の2社を、トヨタカローラ名古屋などを経営するGホールディングスに売却する。トヨタはメーカー直営の販売会社を地場資本に売る方針を強めており、それに則ったものだ。メーカー直営では「売れなくても潰れることはない」といった甘えが出ることから、地場化するのだ。

これで、愛知県内は地場資本2強の「名古屋トヨペット」と「愛知トヨタ」の両グループと、第三極としてのGホールディングスによる地場資本3社の健全な競争が展開されるとの見方もできる。しかし、10月1日付で同じく直営の福岡トヨペットが地場資本の昭和グループに売却されたが、昭和グループは福岡県内でトヨタ店、カローラ店、ネッツ店など幅広く運営しており、福岡トヨペットを傘下に収めれば一気に寡占が進み、愛知とは真逆の状態となる。

トヨタの元役員は「Gホールディングスの後藤善午社長は小林副社長と親しい。昭和グループの金子直幹代表は同じ三代目で豊田社長と親しくオウンドメディア『トヨタイムズ』のインタビューにも出る関係。2トップの人間関係で決まった再編と見られても仕方ない」と指摘する。

トヨタ本体はこの販売店再編を一切発表せず、業界紙の日刊自動車新聞が報じるにとどまっている。腹の中を探られたくなかったからではないかと勘繰ってしまう。

--引用は以上です。

トヨタ本体はこの販売店再編を一切発表せず、業界紙の日刊自動車新聞が報じるにとどまっている」との説明を信じれば「この販売店再編」を報じたのは「日刊自動車新聞」だけのはずです。

しかし日本経済新聞は7月12日付の「トヨタ直営販社、愛知でゼロに 地元ディーラーが買収」という記事で「トヨタカローラ名古屋(名古屋市)を傘下に持つGホールディングス(同)は、トヨタ自動車の全額出資子会社で新車販売を手掛けるトヨタカローラ愛知(同)とネッツトヨタ中部(同)を傘下に収める。Gホールディングスが2社の全株式を10月初旬に取得する見通し」と報じています。

業界紙の日刊自動車新聞が報じるにとどまっている」との説明は誤りではありませんか。文脈的に判断して「この販売店再編」には「愛知県内」での再編を含むはずです。

せっかくの機会ですので、さらに2点を指摘しておきます。

共同通信も「愛知県内」での再編を報じていて、その記事には「トヨタカローラ名古屋など販売会社3社が12日、発表した」と出てきます。これが正しければ、トヨタの子会社2社も「販売店再編」を「発表」しています。「トヨタ本体」が「発表」していないとしても、子会社が「発表」しているのであれば「腹の中を探られたくなかったからではないか」とトヨタを勘繰るのはやや無理があります。

福岡トヨペットを傘下に収めれば一気に寡占が進み、愛知とは真逆の状態となる」との説明も理解に苦しみました。「愛知県内は地場資本2強の『名古屋トヨペット』と『愛知トヨタ』の両グループと、第三極としてのGホールディングスによる地場資本3社」で競争するのならば「地場資本3社」による「寡占」ではありませんか。「福岡」と「真逆の状態」とは思えません。

愛知県内」には「地場資本3社」以外にトヨタ車の「販売会社」が多数あるのかもしれませんが、記事からはそうは読み取れません。

問い合わせは以上です。御誌では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。読者から購読料を得ているメディアとして責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇


追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「トヨタ滅ぼす御曹司と守役
https://facta.co.jp/article/201911005.html


※記事の評価はD(問題あり)

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