2019年10月13日日曜日

「バブル再来! 不動産投資」に根拠欠く週刊ダイヤモンド大根田康介記者

バブル」は経済記事の中で安易に使われやすい言葉だ。週刊ダイヤモンド10月19日号の特集2「バブル再来!不動産投資」もその例に漏れない。「リーマンショックによってバブルが崩壊した不動産投資市場。それからおよそ10年、市場は再びバブル化の様相を呈している」と大根田康介記者は特集の冒頭で煽っている。ここから問題がある。
グラバー園の旧リンガー住宅(長崎市)
          ※写真と本文は無関係です

リーマンショック」の前にも「ミニバブル」と言われた時期はあった。なので「ミニバブル」と呼ぶのは構わない。しかし大根田記者は「バブル」としている。そこがまず引っかかる。

さらに「不動産投資市場」が「再びバブル化の様相を呈している」と言う。これだと「不動産投資市場」全体が「バブル化の様相」だと感じてしまう。しかし、記事を読み進めると「投資用マンション」に限った話のようだ。「アパート投資は軒並み厳しい状況にある」のならば、最初から「投資用マンション市場」に限って「バブル化の様相を呈している」と書くべきだ。

投資用マンション市場」限定ならば「バブル再来!不動産投資」というタイトルはかなり大げさだ。

では「投資用マンション市場」は「バブル」なのかと言えば、これも苦しい。記事の一部を見てみよう。


【ダイヤモンドの記事】

こうした中、最近では投資用マンションを扱う企業の成長が目覚ましい。金融緩和が始まった頃の12年度から18年度に至るまでの売上高上昇率を見てみると、軒並み数倍になっている(右下表参照)。まさにバブルの様相を呈している

この期間で売上高の上昇額が1182億円と最も大きいのは、投資用ワンルームマンションと分譲マンションの両方を扱うプレサンスコーポレーションだ。

同社は13年に東証1部に上場し、ワンルーム販売戸数が12年度の712戸から18年度には2363戸と3.3倍になった。さらに上昇率で見ると、最も高かったのはビーロットで、売上高が何と15倍以上になっている。

他にも売上高の急増でジャスダックやマザーズ、東証2部から東証1部へ市場を“格上げ”した企業は枚挙にいとまがない。

13年にFJネクスト、15年にサムティ、エー・ディー・ワークス、ディア・ライフ、16年にムゲンエステート、17年にコーセーアールイー、18年にグローバル・リンク・マネジメント、プロパティエージェント、ビーロット、グッドコムアセットが、それぞれ東証1部に“格上げ”した。

バブル化する投資用マンション市場の勢いはどこまで続くのか。



◎「売上高上昇率」でバブルと判断?

投資用マンションを扱う企業」の「12年度から18年度に至るまでの売上高上昇率を見てみると、軒並み数倍になっている」ことを根拠に「まさにバブルの様相」と大根田記者は言い切っている。

バブル」とは「泡沫的な投機現象。株や土地などの資産価格が、経済の基礎条件から想定される適正価格を大幅に上回る状況をさす」(大辞林)はずだ。ならば「株や土地などの資産価格」を見る必要がある。

今回の特集で言えば「投資用マンション」だ。その価格が「経済の基礎条件から想定される適正価格を大幅に上回る」と判断できるならば「バブル」と表現してもいい。

なのに、なぜか「売上高上昇率を見て」判断してしまう。しかも「投資用マンション」全体の売上高ではない。「12年度から18年度」にかけて売上高が大きく伸びた企業がいくつもあるというだけの話だ。市場規模が大きく膨らんでいても、それだけで「バブル」とは言えない。一部の企業の「売上高上昇率」だけを見ても、さらに参考にならない。

資産価格が、経済の基礎条件から想定される適正価格を大幅に上回る状況」があれば、大根田記者もそこに触れたのだろう。「バブル」という言葉を使いたいが、価格面でそれを裏付ける事実が見当たらない。なので仕方なく「売上高上昇率」を使ったのではないか。だとしたら一種の騙しだ。(ついでに言うと「売上高上昇率」よりも「売上高増加率」の方が日本語として自然だと思える)。

百歩譲って「投資用マンション」市場が「まさにバブルの様相」だとしよう。だとすれば投資を考えている人にとっての判断は簡単だ。「見送り」でいい。「バブル」がさらに膨らむ過程で利益を得るチャンスはあるが、「バブル」ならば「適正価格を大幅に上回る状況」にあるはずだ。手を出すのが得策ではないのは誰でも分かる。投資するならば「バブル」が崩壊した後にしたい。

しかし大根田記者は違う考えのようだ。「今回のバブル的に過熱した状況は、リーマンショックの二の舞いを演じて崩壊してしまうのか」と読者に問いかけてくる。「まさにバブルの様相」ならば、当然に「崩壊」する。問いかけるまでもない。

ずっと「崩壊」しないのならば「バブルの様相」という見立てが間違いだろう。「バブル」とは「泡沫的な投機現象」だ。

そう考えると特集に「500棟を調べたプロによる投資用マンション選び7カ条」という記事を入れたのは感心しない。「バブルの様相」だと大根田記者が確信しているのならば「投資用マンション」には手を出すなと助言すべきだ。なのに「投資用マンション」に誘い込むような記事を載せている。

記事の中で「市場が過熱する中、素早い決断をしなければ販売会社から相手にされず、投資機会を逃す恐れは確かにある」と大根田記者は書いている。「販売会社から相手にされず、投資機会を逃す」のは投資家にとって喜ぶべき状況ではないか。

投資用マンション」は「まさにバブルの様相」という話が本当ならばだが…。


※今回取り上げた特集「バブル再来!不動産投資
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/27779


※特集の評価はD(問題あり)。大根田康介記者への評価はDを維持する。

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