2019年10月4日金曜日

伊勢丹メンズ館に関する「裏付け」が成立してない日経 中村直文編集委員

4日の日本経済新聞朝刊企業3面に載った「ヒットのクスリ~伊勢丹新宿本店の異変 若い女性『男物購入』増加」という記事で、中村直文編集委員が無理のある分析をしている。まずは冒頭部分を見ていく。ここで「購買データとしてはどうか。三越伊勢丹によると、それは裏付けられた」と中村編集委員は言い切る。本当に「裏付けられた」か検証してみたい。
東北大学の魯迅先生像(仙台市)
     ※写真と本文は無関係です


【日経の記事】

ファッション通の女性は伊勢丹新宿本店メンズ館(東京・新宿)で、しょっちゅう買い物をするらしい。本当なのか。メンズ館へ足を向けると確かに若い女性が品定めをしている姿を見かける。

購買データとしてはどうか。三越伊勢丹によると、それは裏付けられた。2019年3月に全面改装オープン直後、カード顧客の売上高は前年比トントンだが、女性に限って言えば2%程度伸びていたのだ



◎どう読み取れば…

ファッション通の女性は伊勢丹新宿本店メンズ館(東京・新宿)で、しょっちゅう買い物をするらしい。本当なのか」と中村編集委員は問いかけている。これを「裏付け」るためにはどんな「データ」が要るか。

例えば「ファッション通を自認する女性1000人への調査で『月に1回以上は伊勢丹新宿本店メンズ館で買い物をする』と答えた人の割合が95%に達した」といった「データ」を示してもらえれば「裏付けられた」と言えるだろう。

しかし「2019年3月に全面改装オープン直後、カード顧客の売上高は前年比トントンだが、女性に限って言えば2%程度伸びていた」という「購買データ」だけでは何の「裏付け」にもならない。

女性」の「カード顧客」が「ファッション通」なのかどうかがまず不明だ。また「買い物」の頻度が分からないので「しょっちゅう買い物をする」かどうかも確認できない。この「購買データ」から「ファッション通の女性は伊勢丹新宿本店メンズ館(東京・新宿)で、しょっちゅう買い物をする」との「裏付け」が得られると中村編集委員が確信できたのならば、ちょっと怖い。

記事の続きも見ておく。

【日経の記事】

メンズ館のオープンは03年。開業時は女性の比率が70%と半数を超えていた。父の日やバレンタインデー、クリスマスなどのギフト需要が大きく、代理購買が中心だったからだ。

ところが年々ギフト需要は低下する。バレンタインも女性は自分や友人のために買うケースが増えるなど、代理購買が減少したからだ。18年までに男女比率はほぼ半々に低下。メンズ館の開業当初は「男である幸福」を掲げていたが、女性から届けられる幸福感はすっかり薄れたようだ。

代理購買が減ると、今度は女性の実需が増え始めた。三越伊勢丹の紳士MD統括部エディタの落合将一氏は「メンズ館のMD(商品政策)も色のバリエーションが増えるなど、デザインのジェンダーレスが進んでいるからではないか」と話す。1階の雑貨売り場では女性客が革小物やコスメなどを自家需要として購入している。



◎「女性の実需が増え始めた」と言うが…

代理購買が減ると、今度は女性の実需が増え始めた」という話を裏付ける「データ」が見当たらないのが引っかかる。「ギフト需要」かどうかは包装から判断できるだろうが「女性の実需」かどうかは分かりづらい。「ギフト」用の包装を頼まなかったからと言って自分で使うとは限らない。夫や恋人に頼まれて買い物をしているだけといった可能性は残る。

今回の記事で「伊勢丹新宿本店メンズ館」の売り上げに関しては「2019年3月に全面改装オープン直後、カード顧客の売上高は前年比トントンだが、女性に限って言えば2%程度伸びていた」という情報しかない。しかし「カード顧客の売上高」では「代理購買」と「女性の実需」が一緒になっている。「2%程度伸びていた」のも「代理購買」が寄与したのかもしれない。

結論としては、まともな「データ」の「裏付け」がないのに断定的にストーリーを組み立てた記事と見るべきだろう。



※今回取り上げた記事「ヒットのクスリ~伊勢丹新宿本店の異変 若い女性『男物購入』増加
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191004&ng=DGKKZO50483440S9A001C1TJ3000


※記事の評価はD(問題あり)。中村直文編集委員への評価はDを維持する。中村編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

無理を重ねすぎ? 日経 中村直文編集委員「経営の視点」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2015/11/blog-post_93.html

「七顧の礼」と言える? 日経 中村直文編集委員に感じる不安
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/blog-post_30.html

スタートトゥデイの分析が雑な日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_26.html

「吉野家カフェ」の分析が甘い日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_27.html

日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」が苦しすぎる
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_3.html

「真央ちゃん企業」の括りが強引な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_33.html

キリンの「破壊」が見えない日経 中村直文編集委員「経営の視点」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/blog-post_31.html

分析力の低さ感じる日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/blog-post_18.html

「逃げ」が残念な日経 中村直文編集委員「コンビニ、脱24時間の幸運」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/24.html

「ヒットのクスリ」単純ミスへの対応を日経 中村直文編集委員に問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_27.html

日経 中村直文編集委員は「絶対破れない靴下」があると信じた?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_18.html

「絶対破れない靴下」と誤解した日経 中村直文編集委員を使うなら…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_21.html

「KPI」は説明不要?日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」の問題点
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/kpi.html

日経 中村直文編集委員「50代のアイコン」の説明が違うような…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/50.html

「セブンの鈴木名誉顧問」への肩入れが残念な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/07/blog-post_15.html

「江別の蔦屋書店」ヨイショが強引な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_2.html

渋野選手は全英女子まで「無名」? 日経 中村直文編集委員に異議あり
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_23.html

早くも「東京大氾濫」を持ち出す日経「春秋」の東京目線
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_29.html

日経 中村直文編集委員「業界なんていらない」ならば新聞業界は?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/blog-post_5.html

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