2019年10月8日火曜日

人材は「名門高校」頼み? 国立情報学研究所 新井紀子教授の気になる主張

週刊東洋経済10月12日号の特集「AIに負けない読解力を鍛える」の中の「Interview 国立情報学研究所 教授 新井紀子~読解力のない経営者や社員は会社を潰すリスクがある」という記事に引っかかる部分があった。そのやり取りは以下の通り。
大川小学校跡地(宮城県石巻市)※写真と本文は無関係

【東洋経済の記事】

──地方の名門高校の復権が必要ともおっしゃっていますね。

バランスのよい日本の成長を考えると、東京一極集中ではダメだと思う。国会議員を含めて地方からちゃんとした人が出たり、地方議会がきちんと成り立って意思決定をしたりしていかないと、地方創生にならない。

ではその人材はどこから生まれるのか。地方の名門高校だ。そこから東京大学や京都大学に入って、最先端のことを勉強してUターンしてほしい。そういう人が地方の魅力を売る。福岡で作った商品をタイやシンガポールのお金持ちに売る、といったビジネスをつくれる人間が各地方に出てくると、所得が増えていくと思う。

そのためには1〜2番手校の東大進学率を絶対に上げないといけないが、ずっと低落している。実際、地方のかつての1番手校におけるRSTの成績は低い。読む力がないのだろう。

◇   ◇   ◇

気になった点を列挙してみる。

(1)「人材」は「名門高校」頼み?

ではその人材はどこから生まれるのか。地方の名門高校だ」と言い切っているのが引っかかる。「名門高校」からも「地方創生」を担う「人材」は生まれるだろうが、「名門高校」に限定する必要があるのか。「地方議会」の議員であれば「名門高校」以外の出身者も多数いるはずだ。それに「福岡で作った商品をタイやシンガポールのお金持ちに売る、といったビジネスをつくれる人間」は「名門高校」出身者とは限らない気がする。


(2)東大、京大だけが「最先端」?

そこから東京大学や京都大学に入って、最先端のことを勉強してUターンしてほしい」といった発言から判断すると、「最先端のことを勉強」するためには「東京大学や京都大学」に行く必要があると「新井紀子」氏は考えているのだろう。

九州大学や北海道大学では「最先端のことを勉強」できなくて「東京大学や京都大学」ではできるのかとの疑問は湧くが、そういうものだとしよう。だったら九大や北大で「最先端のことを勉強」できるように改革する方が効果的ではないか。

最先端のことを勉強してUターンしてほしい」と「新井紀子」氏は言うが、九州や北海道の学生が「東京大学や京都大学」に出て「最先端のことを勉強」した場合、就職時に「Uターン」を選ぶ可能性はかなり低くなるだろう。

「『東京大学や京都大学』以外では『最先端のことを勉強』できないとは言っていない」と「新井紀子」氏は反論するかもしれない。この場合、ならばなぜ「東京大学や京都大学」にこだわるのかとの疑問が残る。


(3)「1〜2番手校」限定で「東大」限定?

1〜2番手校の東大進学率を絶対に上げないといけない」と断言しているのも引っかかる。「名門高校」から「1〜2番手校」に絞り込まれてしまった。

1〜2番手校」は「(県内)1〜2番手校」だとの前提で考えてみたい。例えば、「福岡」県では久留米大附設と修猷館が「1〜2番手校」だろう。筑紫丘、福岡、小倉、東筑などの「名門高校」もあるが、この辺りは「新井紀子」氏の眼中にないのか。福岡、筑紫丘などの学生のレベルが「1〜2番手校」に大きく劣るとは思えない。なぜ「1〜2番手校」限定なのか理解に苦しむ。

そこから東京大学や京都大学に入って、最先端のことを勉強してUターンしてほしい」と訴えていたのに、「1〜2番手校の東大進学率を絶対に上げないといけない」と「東大」に絞り込むのも解せない。「最先端のことを勉強」できる環境は「京都大学」にもあるはずなので「東大・京大進学率を絶対に上げないといけない」となるのが自然だ。

今回のインタビュー記事での「新井紀子」氏の発言には、偏見に近い思い込みを感じた。


※今回取り上げた記事「Interview 国立情報学研究所 教授 新井紀子~読解力のない経営者や社員は会社を潰すリスクがある
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/21791


※記事への評価は見送る。

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