2017年5月9日火曜日

「WHY」はどこへ? 日経「吉野家 2カ月ぶり減収」

ニュース記事を書くときには「5W1H(誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、どのように)」が基本となる。新聞記者ならば誰でも知っているはずだ。全てのニュース記事に5W1Hの要素を漏らさず入れる必要はないが、だからと言って自由に抜いていいわけでもない。
日吉神社(福岡県太宰府市)※写真と本文は無関係です

9日の日本経済新聞朝刊企業2面に載った「『吉野家』2カ月ぶり減収 4月既存店、8.4%」というベタ記事では、内容から見て必須である「なぜ=WHY」が抜けている。これは明らかな欠陥だ。記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

牛丼大手3社の4月の既存店売上高が8日、出そろった。吉野家ホールディングスの「吉野家」は前年同月比8.4%減と2カ月ぶりに減収に転じた。金・土曜日限定の値下げキャンペーンなどでテコ入れしたが苦戦が続いている

一方、ゼンショーホールディングスの「すき家」は5.2%増、松屋フーズは3%増と伸びた。

◇   ◇   ◇

吉野屋」の減収率は「8.4%」とかなり大きい。一方で、「『すき家』は5.2%増、松屋フーズは3%増」とライバル企業はそこそこの伸びを見せている。「なぜ吉野屋だけかなりのマイナスなの?」と疑問が湧くが、記事では全く触れていない。

「行数が限られていて…」というのは言い訳にならない。「金・土曜日限定の値下げキャンペーンなどでテコ入れしたが苦戦が続いている」の部分を省いて、落ち込んだ理由を入れれば済む。それで足りないならば「一方、ゼンショーホールディングスの『すき家』は5.2%増、松屋フーズは3%増と伸びた」を削ってもいい。「WHY」の優先順位はそれぐらい高い。

ついでに言うと「苦戦が続いている」との説明も謎だ。「2カ月ぶりに減収に転じた」のだから、3月はプラスだったはずだ。2月までが不振続きであれば「苦戦が続いている」でいい場合もあるが、そうならば記事でその点を説明する必要がある。

今回のような欠陥記事を書いても、粗製乱造に慣れた企業報道部のデスクは見逃してくれるかもしれない。だが、まともな書き手を目指すのであれば、今のままではダメだ。猛省して基礎から学び直してほしい。


※今回取り上げた記事「『吉野家』2カ月ぶり減収 4月既存店、8.4%
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170509&ng=DGKKASDZ08I3X_Y7A500C1TJ2000

※記事の評価はD(問題あり)。

0 件のコメント:

コメントを投稿