2017年5月16日火曜日

人材輩出力で関西が圧倒? 週刊ダイヤモンド「関西流企業の逆襲」

週刊ダイヤモンド5月20日号の特集「関西流企業の逆襲~大阪・京都・神戸はなぜ強い?」は展開がかなり苦しい。まず「(関西には)東京を圧倒する人材輩出力あり!」との前提に無理がある。特集の最初に出てくる「ホンマかいな!~関西人が東京を席巻する 関西空洞化の一方で、東京を圧倒する人材輩出力あり!」という記事の一部を見てみよう。
袋田不動尊(福岡県うきは市)
       ※写真と本文は無関係です

【ダイヤモンドの記事】

経営する企業の売上高を指標として、経営トップの出身地(47都道府県)と出身大学(有力20校)の組み合わせ、全940通りの中から、売上高の高い「最強の組み合わせ」はどれなのかを分析。すると、出身地が大阪と兵庫の組み合わせがトップ5をほぼ独占したのだ。

1位は「大阪出身×東京大学卒業」の組み合わせだ。2位の「東京出身×東大卒」とは僅差だが、参考値である効率性指標の従業員1人当たり売上高も1位で、文句なしのナンバーワンだ

そのトップ・オブ・トップに輝いたのが、伊藤忠商事の社長、岡藤正広だ。2016年3月期決算で初めて業界トップに立った伊藤忠は近江商人の系譜を色濃く残し、岡藤による“関西流”経営で飛躍を遂げた。


◎この指標で「人材輩出力」測れる?

上記の説明で「東京を圧倒する人材輩出力あり!」と納得できただろうか。色々な意味で苦しい気がする。問題点を列挙してみる。

・問題その1~「売上高」の大きさで見て意味ある?

記事では「売上高の大きな会社の社長を出せる=人材輩出力がある」との前提に立って話を進めている。しかし、売上高がいくら大きくても、赤字続きでは苦しい。一方、売上高がそこそこでも、着実に増収増益を続けている会社の経営者は評価できる。「売上高」の大きさで輩出力を見るのはあまりに安易だ。


・問題その2~「文句なしのナンバーワン」?

1位は『大阪出身×東京大学卒業』の組み合わせだ。2位の『東京出身×東大卒』とは僅差だが、参考値である効率性指標の従業員1人当たり売上高も1位で、文句なしのナンバーワンだ」との説明も辛い。
岩田屋久留米店(福岡県久留米市)
    ※写真と本文は無関係です

大阪出身×東京大学卒業」は52社で「東京出身×東大卒」は236社。平均売上高が「僅差」ならば、「人材輩出力」では「東京出身×東大卒」に軍配が上がるとの見方もできる。社数で5倍近く差を付けられているのに、「大阪出身×東京大学卒業」が「文句なしのナンバーワン」は言い過ぎだ。

表に出てくる30位までを出身地別に合計すると、関西(大阪、京都、兵庫)の1827社に対し、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)は2408社と大きく上回る。東京だけで1783社と関西に並ぶ規模なので「(関西には)東京を圧倒する人材輩出力あり!」とは言い難い。30位まででの話ではあるが、都道府県別で見ると東京の存在は圧倒的だ。


・問題その3~「平均」で見て意味ある?

平均」で見ることの問題もある。例えば9位は「山口出身×早稲田大学」だ。これはファーストリテイリングの会長兼社長である柳井正氏の存在が大きいと推測できる。適合社数は63しかないので、ファーストリテイリングによって平均が押し上げられたのだろう。この順位を基に「山口出身×早稲田大学」の社長の傾向を論じても意味がない。ファーストリテイリングを除けば、平均は大きく下がるはずだ。

他の順位でも同様の問題がある。売上高の大きな会社が1社入ると平均売上高は一気に増える。適合社数が少なくて、売上高のばらつきが大きい場合、平均で見ると問題が生じやすい。

結局、「(関西には)東京を圧倒する人材輩出力あり!」には説得力がないと結論付けられる。つまり、この特集は出発点で躓いている。


※今回取り上げた特集「関西流企業の逆襲~大阪・京都・神戸はなぜ強い?
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/20139


※今回の特集に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「京都人」の説明に矛盾 週刊ダイヤモンド「関西流企業の逆襲」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_81.html

「関西は高学力」? 週刊ダイヤモンド「関西流企業の逆襲」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_20.html

0 件のコメント:

コメントを投稿