2017年5月3日水曜日

日経ビジネス篠原匡記者が語る「サウジ世俗化」の謎

日経ビジネスの篠原匡記者(ニューヨーク支局)が5月1日号で「FRONTLINE ニューヨーク~ウーバーに見るサウジの世俗化」という苦しい記事を書いていた。ニューヨーク発でサウジアラビアに絞った話に仕上げるのを許すとしても、その中身がお粗末すぎる。「サウジは今まさに、世俗化に向けてアクセルを踏もうとしている」と篠原記者は言うが、その後に続く事例のどこが「世俗化」なのか謎だ。
平成筑豊鉄道 行橋駅(福岡県行橋市)※写真と本文は無関係です

【日経ビジネスの記事】

コーランの戒律に厳格なワッハーブ派を国是とするサウジは今まさに、世俗化に向けてアクセルを踏もうとしている。

米配車アプリ、ウーバー・テクノロジーズの躍進にその一端が見て取れる。

サウジの女性はクルマの運転が事実上禁じられており、外出の際は親や夫に送り迎えを頼むなど不便を強いられている。ところが、3年ほど前にウーバーが進出したことで、移動にウーバーを使う女性が急増した。ウーバーによれば、直近のアクティブユーザーの8割が女性だという。

「いまだに女性が運転できないのはナンセンスだと思うけどウーバーがある。(女性の運転を巡る問題は)テクノロジーが解決した」と外資系企業に勤めるサウジ女性は語る。


◎「テクノロジーが解決した」?

女性が運転できない」問題は、ウーバーの進出によって「テクノロジーが解決した」と篠原記者は言う。しかし、料金を払って車を他者に運転してもらうことで「解決」できるのであれば、タクシーを利用すれば済む。ウーバーの進出を待つまでもない。

サウジの交通事情はよく分からないが、タクシーではダメでウーバーならば問題なしとなる理由は考えにくい。例えば「宗教上、知らない男性と2人で車に乗るのは厳禁」となっているのならば、ウーバーでは問題を解決できない。タクシーは危険でウーバーは安全というなら分かるが、そこに大差がありそうな感じもしない。仮にあるのならば、記事中で説明すべきだ。

あくまで推測だが、ウーバーが自社に都合のいい情報提供をして、篠原記者が鵜呑みにしてしまったのではないか。


◎これは「世俗化」?

ウーバーの進出を「世俗化」と捉えるのも無理がある。「サウジの女性はクルマの運転が事実上禁じられて」いる状況は変わっていないはずだ。ならば「世俗化」とは言えないのではないか。
千仏鍾乳洞(北九州市)※写真と本文は無関係です

「知らない男性と2人で車に乗るのは厳禁」から「容認」に変わったのならば「世俗化」かもしれない。だが、その場合はタクシーも利用できることになり、「テクノロジーが解決した」という見方が崩れてしまう。


◎舌足らずな表現

ついでに、記事中の舌足らずな表現を指摘しておきたい。まず「コーランの戒律に厳格なワッハーブ派を国是とするサウジ」について。「ワッハーブ派を国是」はやや不自然だ。「コーランの戒律に厳格なワッハーブ派のを国是とするサウジ」などとした方が好ましい。

米配車アプリ、ウーバー・テクノロジーズ」も引っかかった。ウーバーは「配車アプリ」そのものではない。「米配車アプリ大手のウーバー・テクノロジーズ」などとすれば問題は解消する。

篠原記者がこれから優れた書き手になる可能性はほぼない。記事を書かせ続けるのならば、周囲が問題点をしっかり補ってあげるべきだ。今回の記事を見る限り、それができているとは思えない。


※記事の評価はD(問題あり)。篠原匡記者への評価もDを維持する。


※篠原記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経ビジネス篠原匡記者の市場関連記事に要注意(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/04/blog-post_93.html

日経ビジネス篠原匡記者の市場関連記事に要注意(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/04/blog-post_67.html

相変わらず辛い日経ビジネスNY支局 篠原匡記者の記事
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/blog-post_22.html

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