2016年4月5日火曜日

日経1面「市場の力学~投資の新潮流」に抱いた疑問(1)

5日の日本経済新聞朝刊1面に載った「市場の力学~投資の新潮流(2)『熟練トレーダー』AI参上 相手は機械、戻らぬ時代」という記事の中に、どうしても理解できない部分があった。「米投資会社、バーチュ・ファイナンシャル」の投資手法に関するものだ。記事によると、超高速取引を使えば、「99円の買いと100円の売りを同時に出す」ことで「1円の利ざやが得られる」らしい。しかし、にわかには信じがたい。以下の説明で、バーチュが「投資会社」として少額ながら確実に利益を出せる理由を納得できるだろうか。

浅草寺の雷門(東京都台東区) ※写真と本文は無関係です
【日経の記事】

機械が支配し始めた投資の世界。その先駆けが超高速取引だ。

1237勝1敗――。米投資会社、バーチュ・ファイナンシャルが2014年3月に公開した情報に、世界の市場関係者が驚いた。1238日間の取引で損を出したのは1日だけというのだ。

あれから2年。バーチュの勢いは衰えていない。今や日本も主戦場だ。「日本は我々にとって高収益の市場だ」。ダグラス・シフ最高経営責任者(CEO)は3月、満足そうにそう語った。

日本で手掛けるのは主に売りと買いの両方の注文を提示する手法。たとえば99円の買いと100円の売りを同時に出す。通常は商いが成立するまで時間がかかり、価格も変動する。だが超高速取引で注文の最前列にいければ、1円の利ざやが得られる。「野球のイチローのようにコツコツ稼ぐ」とシフ氏はいう。

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ある株式に関して「99円の買いと100円の売り」の注文を同時に出して99円での買いが実現したとしよう。しかし、その後に100円で売れるかどうかは分からない。100円での買い手が現れずに相場が下がってしまえば利益は得られない。超高速取引であれば、先に100円で指値の売り注文をしていた人を押しのけて「最前列」に行けるとも思えないが、仮にできたとしても100円での買い手がいなければ意味がない。

記事の説明ではなぜ「1237勝1敗」になるのか、さっぱり分からない。そこで電子版の関連記事を読んでみた。1面の記事にも出てくる「ダグラス・シフCEO」のインタビューを読んで、何となく謎が解けた。

【電子版の記事】

――具体的にどんな取引をしているのですか。

「コンピューターを使い、株式や先物、原油、為替など1万2000もの金融商品のマーケットメーク(値付け)をしている。日本では上場投資信託(ETF)に加えて、数百の個別株の取引を手掛けている。例えば、日経平均株価のETFを売りたい、買いたいという世界中の投資家と売買するのが我々だ。売りたい値段と買いたい値段との価格差が収益の源泉になる。価格が上がる、下がるといった投資の方向感は持っていない」

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バーチュ・ファイナンシャルがマーケットメーカーならば、損をする日がほとんどないのは当然だろう。驚く話ではない。「マーケットメークをしている」と1面の記事で明示してくれれば、こんなに迷わずに済んだのに…。バーチュを「投資会社」としているのも誤解を招く一因ではないか。

「バーチュがやっているのはマーケットメークだ」と1面の記事に入れると、「1237勝1敗」のインパクトが薄れるとの計算があったのかもしれない。だとすれば、読者への背信行為だ。そういう意図がなかったとしても、説明が不十分なのは間違いない。

今回の連載には他にも問題を感じた。それらは(2)で取り上げたい。

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