2016年4月14日木曜日

日経 浜美佐記者の「新社会人の外貨運用」に抱いた疑問

13日の日本経済新聞朝刊マネー&インベストメント面に浜美佐記者が「新社会人の外貨運用 長期視野で、リスク考慮」という記事を書いていた。その中に引っかかる説明があったので取り上げてみたい。

気になったのは以下のくだりだ。
小椎尾神社(福岡県うきは市) ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

長期の資産運用をこれから始める場合、一部に外貨建ての資産を入れておくメリットは大きい。日銀は現在、持続的に物価上昇率年2%が維持できる環境を目指して金融緩和を実施している。これが実現すれば、物をいくらで買えるかという円の実質的な価値は目減りする。資産の一部を外貨建てで持っておけば、インフレによって円建て資産価値が目減りするのをカバーできる。「中長期的な資産防衛のために外貨を持つことは重要だ」と福田氏は指摘する。

投資に回せるお金が少ない新社会人でも始めやすいのは積み立てによる外貨運用だ。例えば毎月1万円など無理のない金額を外貨で積み立てる。投資時期を分散できるため、1度に大金を投じるよりもリスクを少なくできる

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疑問点を列挙してみる。

◎疑問その1~「インフレ率2%」が条件?

これ(インフレ率2%)が実現すれば、物をいくらで買えるかという円の実質的な価値は目減りする」と浜記者は言う。インフレ率2%で円の実質的価値が目減りするのであれば、インフレ率1%でも目減りは起こる。日銀が目標を達成するかどうかは基本的に関係ない。インフレかデフレかの問題だろう。

◎疑問その2~金利を考慮してる?

円の実質的な価値は目減りする」と単純に言っているのが気になる。現金で持っていれば確かにそうだが、「目減り」を考える場合、金利を考慮したい。インフレ率が2%でも、名目の預金金利が2%以上ならば、預金の実質的な価値は目減りしない。そしてインフレ率と金利は基本的に連動する。「インフレ傾向が強まると現金の実質的価値が減るから何か投資を考えないと…」というのは、投資に誘い込む文句としてよく耳にする。誘い込む側の人が「金利」に触れないのは分かるが、記者も同じでは困る。

◎疑問その3~外貨建て資産でインフレに対応?

資産の一部を外貨建てで持っておけば、インフレによって円建て資産価値が目減りするのをカバーできる」だろうか。外貨預金を持つ場合で考えてみよう。インフレによる円の実質的な価値の目減りを心配するならば、他の通貨でも同じだろう。高金利通貨の場合、基本的にはインフレ率も高くなる。インフレ率の高い通貨は低インフレの円に対して下落しやすいので、理論的には高金利と相殺される。もちろん理論通りにならない場合はあるし、外国株などに投資するならば別の要素も考慮する必要がある。ただ、「インフレによって円建て資産価値が目減りするのをカバー」するために外貨建て資産を持つ必要があるかどうかは微妙だ。

◎疑問その4~投資時期の分散でリスクを低減?

投資時期を分散できるため、1度に大金を投じるよりもリスクを少なくできる」という説明は嘘ではないが誤解を招く。投資期間を今後10年、投資金額を100万円とする場合、100万円を一気に投じて10年間待つ方が、これから月1万円ずつ投資して10年後に回収するよりリスクは膨らむ。一気に投資する方が「金額×期間」が大きくなるからだ。同一商品に投資するならば50万円より100万円の方が大きなリスクを負うのと同じ理屈だ。

積み立ての場合「1度に大金を投じるよりもリスクを少なくできる」のは、「投資時期を分散できるため」というより「金額×期間」を小さくできるからだ。「金額×期間」が同じで、同一商品に投資するならば、基本的にリスクは変わらない。投資でいう「リスク」とは「リターンの不確かさ」だからだ。

A社株を保有するリスクは、A社株を買った時の価格が100円の人も150円の人も同じになる。これは「投資のリスク=リターンの不確かさ」という認識がないと、やや理解しづらい。積み立て投資は「高値づかみのリスク」を避ける効果はあるが、これだと「リスク」の意味が変わってくる。それに「高値づかみのリスク」から逃れるために「安値で一気に拾う機会」も放棄している。「投資時期の分散」に関しては「有利不利はない。本人の好みで判断すればいい」と考えるのが妥当だろう。


※色々と注文を付けてきたが、記事全体の完成度はそれほど低くない。記事の評価はC(平均的)とする。暫定でD(問題あり)としていた浜美佐記者への評価は暫定Cに引き上げる。

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