2016年4月16日土曜日

問い合わせから1カ月後に届いた週刊エコノミストの回答

問い合わせから1カ月が経って、ようやく週刊エコノミストから回答が届いた。3月22日号の特集「直撃! マイナス金利 地銀・ゆうちょ・信金+生保」の中の「生命保険 長期的には経営の影響大 保険料の上昇圧力強まる」という記事に関するものだ。回答が遅れたことに関してエコノミスト編集部を責めるつもりはない。筆者に回答を促していたと思えるからだ。以下は筆者であるSMBC日興証券株式調査部シニアアナリストの丹羽孝一氏の見解だ。予想通りの苦しい弁明になっている。問い合わせの内容と併せて見てほしい。

久留米城跡の桜(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係です
【問い合わせ】

「保険料を上げないということは、会社の所有者である、上場会社であれば株主、相互会社であれば相互会社の持ち分価値を毀損させているということである。保険契約者と会社の所有者のどちらを重視するかという価値判断の問題である」という説明です。ここからは「相互会社の所有者は相互会社そのもの」と読み取れます。しかし、「相互会社の所有者=社員(保険契約者)」ではありませんか。

【回答】

記事における「相互会社であれば相互会社の持ち分価値を~」の部分は、直前の「上場会
社であれば株主」の部分と対になります。

ご指摘の通り、相互会社の所有者は、社員(保険契約者)です。記事では社員(保険契約
者)の総体が保有する持ち分価値を指すという意味で「相互会社の持ち分価値」という表
現を用いました。この場合、「社員(保険契約者)が有する持ち分価値」という表現も可
能となります。

【問い合わせ】

「保険契約者と会社の所有者のどちらを重視するか」という記述について。相互会社の
所有者を保険契約者とすると、保険契約者を重視することは同時に会社所有者の重視にも
なるので、「保険契約者と会社の所有者のどちらを重視するか」という問いかけ自体に意
味がなくなります。

【回答】

保険契約者は時間の経過とともに、加入および契約の終了・中途解約などにより入れ替わ
ります。資産運用の環境悪化により保険料を値上げしなければならない状況で、過度に割
安な保険料で保険の販売を行うと、会計上、保険関係責任準備金の追加的な計上が求めら
れ、保険会社の利益が減少し、保険料を値上げしなかった場合と比べ、純資産の拡大ペー
スが低下します。このことは、保険料改定前の契約者保険契約者(=相互会社の持分を有
する人)が本来持っていた経済的持分が減少します。契約者配当が減少する可能性もあり
ます。つまり、契約者間の不公平感が生じることになります。記事の言葉を補うとすれば
、「相互会社の場合、将来の保険契約者と現在の会社所有者(保険契約者)のどちらを重
視するかという価値判断の問題」となります。

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この程度の回答であれば、海外出張があったとしても1カ月もかけたことを正当化はできない。記事中で基礎的な説明がきちんとできなかった上に、回答まで常識外れの時間をかけた点を重くみて、書き手としての丹羽孝一氏の評価はE(大いに問題あり)とする。

回答までに1カ月もかかったのは、丹波氏の書き手としての姿勢に問題があったからだと推測できる。それでも最終的に回答したことは前向きに評価したい。間違い指摘の無視が常態化している日本経済新聞、日経ビジネス、週刊ダイヤモンドの関係者は見習うべきだろう。


※この件に関しては「1つだけ惜しい所が…週刊エコノミスト『マイナス金利』特集」も参照してほしい。

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