2016年4月13日水曜日

週刊ダイヤモンド須賀彩子記者の「解決できない構造問題」

週刊ダイヤモンドの須賀彩子記者に関しては「素人臭さが目立つ」とこれまで評してきた。それは4月16日号の「財務で会社を読む~日本マクドナルドホールディングス 既存店売上高回復はまやかし 解決できない構造問題」という記事でも変わらない。個人的には、マクドナルドよりも須賀記者の「解決できない構造問題」が気になる。
唐津城から見た高島(佐賀県唐津市)
         ※写真と本文は無関係です

記事の問題点を具体的に見ていこう。まず「既存店売上高回復はまやかし」という見出しが引っかかる。

【ダイヤモンドの記事】

「勢いを取り戻している」。日本マクドナルドホールディングスのサラ・カサノバ社長は、2016年に入って以降、このように強調する。既存店売上高が、前年同月比で1月が35.0%増、2月も29.4%増、3月は18.3%増とプラスが続き好調だからだ。

しかし、これは「前年同月比」という数字のマジックにすぎない。というのも、14年7月に発生した鶏肉の消費期限切れ問題に伴って売り上げは激減。15年1月には異物混入事件が起きていっそう落ち込み、ハードルが大きく下がっていた。そうした事情を鑑みれば、3月の売上高は依然として2年前の水準を1割ほど下回っている。

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デジタル大辞泉によれば「まやかし」とは「ごまかすこと。また、そのもの。いかさま。いんちき」という意味だ。マクドナルドの既存店売上高に関して「数字のマジックにすぎない」と言うのは分かる。しかし、別に数字をごまかしているわけではない。既存店売上高の増減を普通に出しているだけだ。これが「まやかし」ならば、どういう数字を出せばいいのか。「前年同月比ではなく2年前の同月比で既存店の数字を出します」という方針をマクドナルドが打ち出したら、かえって混乱するだろう。

今回の記事で最も問題が多いと思えたのが以下のくだりだ。

【ダイヤモンドの記事】

背景にあるのは、利益を確保したいがために混迷を極めた価格戦略だ。

外食産業では、「中国による食材の買い占めや円安の進行により、12年ごろから食材価格が上がり始めた」(鮫島誠一郎・いちよし経済研究所主席研究員)。その影響はマクドナルドにも当然及び、10年に31.9%だった売上高に占める食材費率が、13年には35.3%にまで3.4ポイントも上昇した。

これに対して、当時のマクドナルドが打った手が「値上げ」だった。その結果、図(3)からも分かるように、13年は客単価が上がっている。しかし、値上げは消費者の反発を呼んで客足は遠のき、既存店売上高は回復しなかった。そうしたタイミングで鶏肉問題が起き、追い打ちをかけた。

慌てたマクドナルドは14年10月から「昼マック」を投入。平日昼のセット価格を100円程度引き下げ、350円、450円、550円の三つの価格帯で展開した。

ところが、15年1月に異物混入事件が発生、売り上げのさらなる減少に加えて、食材費率はますます上昇し、15年には原価が売上高を上回る赤字構造となってしまったのだ。

こうした事態を打開すべく、15年10月から「昼マック」に代えて、「おてごろマック」を導入。セット価格を一律500円にしたことで、食材費率の高止まりに歯止めをかけたというわけだ

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須賀記者は記事の冒頭で「2014年の鶏肉の消費期限切れ問題で崖っぷちに立たされたマクドナルド。今年に入ってようやく既存店売上高が回復しつつあるが、食材費率の高止まりと人材の不足という構造的な問題は抱えたままだ」と書いている。なのに、読み進めると「食材費率の高止まりに歯止めをかけたというわけだ」との説明も出てくる。「食材費率の高止まり」という構造問題を抱えたままなのに、既に「食材費率の高止まりに歯止めをかけた」というのは奇妙だ。

あくまで想像だが、「食材費率の上昇には歯止めをかけたが、水準は依然として高い」と言いたかったのではないか。しかし「高止まりに歯止めをかけた」と書いたために、辻褄が合わなくなったのだろう。そもそも、マクドナルドに関して「食材費率の高止まり」が確認できない。記事に付けたグラフを見ると、2009~15年にかけて食材費率は一貫して上昇しており、「止まって」いない。

セット価格を一律500円にしたことで、食材費率の高止まりに歯止めをかけた」という説明も雑だ。「350円、450円、550円の三つの価格帯」から「一律500円」に変えると全体としては価格アップなのかどうかはっきりしないが、基本的には値上げだと仮定しよう。しかし、350円の「昼マック」と500円の「おてごろマック」では、当然に商品の中身が異なるはずだ。同じ中身の商品を値上げしたのならば、食材費率は下がるだろう。しかし、中身が違うのならば、下がるかどうかは分からない。

例えば「原価が高く採算の悪かった350円の『昼マック』をなくしたことで、食材費率を引き下げた」などと書いてあれば、納得できる。

今回は記事に付いているグラフにも問題を感じた。「原価率がじわじわ上昇」という見出しを付けて、1つの表と3つのグラフを載せている。しかし、「原価率」が分かるグラフが見当たらない。「売上高に占める比率(直営店)」とのタイトルが付いたグラフには「食材費率」と「労務費率」の推移が出ている。しかし「原価率」ではない。2つを足したものが「原価率」ならば、まだ分かる。だが、たぶん違う。

記事には「15年には原価が売上高を上回る赤字構造となってしまったのだ」との記述がある。しかし、グラフに出ている15年の「食材費率」と「労務費率」を足しても70%にしかならない。「原価率がじわじわ上昇」という見出しなのに、読者が記事から原価率の推移を知る術はないのだ。この辺りに須賀記者の「素人臭さ」が出てしまっている。

須賀記者は「人材の不足」をマクドナルドの構造問題の1つとして挙げている。この説明にもツッコミを入れておこう。

【ダイヤモンドの記事】

マクドナルドにとって、もう一つ深刻になっているのが、人材の確保だ。

長期的に見れば労務費率も上昇傾向にあるが、14年12月期から15年12月期の直近1年で、食材費率が1.5ポイント上昇したのに対して、労務費率は0.3ポイントの上昇にとどまっている。これは、売り上げ減に合わせて、現場のアルバイトの人数を絞るなど人件費をコントロールしたためだ。

今年に入ってから売上高が3割増と急回復してきたため人手不足が顕著となり、現場が回らなくなってきた。「現在、全国にアルバイトが約12万人いるが、それでも対応し切れなくなっている」(マクドナルド)。

そこで、AKB48のメンバーを声優とした求人用のアニメを制作、3月16日からウェブ上で放映するなど、採用に力を入れ始めた。しかし、3月31日までに採用できたアルバイトの人数は約1900人。1店舗当たり0.7人しか採用できていない計算だ。

背景にあるのは待遇の低さ。周辺の飲食店チェーンよりも募集時の時給が低い上に、交通費も支給していない。このため、「高校生のアルバイトが大学生になったのを境に辞めていくケースが多い」(フランチャイズ店オーナー)。

こうした問題の対策として、東京・大森駅北口店にセルフオーダーシステムを導入するなど、一部で試験的な取り組みを始めているが、抜本的な解決策となるには、まだ時間がかかりそう。

社外のみならず、社内からも「芸能人を使ったアニメにお金を使うくらいなら、交通費を支給したらどうか」というもっともな意見も出ている、人手不足はサービスの劣化に直結するだけに根が深い問題だ。

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2015年までは「現場のアルバイトの人数を絞る」などの対応をしていたのであれば、「人手不足が顕著となり、現場が回らなくなってきた」のが構造問題なのかどうか疑わしい。「周辺の飲食店チェーンよりも募集時の時給が低い上に、交通費も支給していない」のは、それでもバイトを集められるブランド力があったからではないか。最近はそうもいかないだろうが、「構造問題」というより「新たに起きてきた問題」と考えた方が自然だと思える。

最後に接続助詞「が」の使い方に注文を付けておこう。上記の最後の段落では、逆接でないところで「が」を使っているので、読みにくくなっている。改善例を示しておく。

【改善例】

社外のみならず、社内からも「芸能人を使ったアニメにお金を使うくらいなら、交通費を支給したらどうか」というもっともな意見も出ている。人手不足はサービスの劣化に直結するだけに、対策を急ぐべきだ。

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書き手としての須賀記者が抱える「構造問題」を解決するのは、かなり難しそうだ。読者にきちんとした記事を届けるためには、編集部内での十分なバックアップが不可欠となる。しかし、現状でそれができているとは思えない。


※記事の評価はD(問題あり)。須賀彩子記者への評価はE(大いに問題あり)を維持する。須賀記者に関しては「素人くささ漂う ダイヤモンド『回転寿司 止まらぬ進化』」「週刊ダイヤモンド 素人くささ漂う須賀彩子記者への助言」「ロイヤル社長を愚か者に見せる週刊ダイヤモンド須賀彩子記者」も参照してほしい。

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