2016年4月12日火曜日

事前報道に懐疑的な週刊エコノミスト種市房子記者に期待

いずれ発表されるネタを発表前に書く--。この社会的にも経営的にもほとんど意味がないことに多大な労力を割いているのが新聞社の大きな問題だ。「こんなことに意味があるのか」と疑問を抱いている記者は、少なくとも日経には多くいた。なのに日経は容易には変わりそうにない。なぜかと言えば、疑問を持たず走り続ける記者が偉くなっていくからだ。編集局でそこそこ偉くなった人に限れば、いずれ発表されるネタを発表前に書くのが新聞の使命と信じている人が多数派だと思える。他の大手新聞社も似たようなものだろう。
千鳥ヶ淵の桜(東京都千代田区) ※写真と本文は無関係です

この問題に関して、週刊エコノミスト4月19日号の「編集部からFrom Editors」というコーナーに種市房子記者が興味深いことを書いていた。内容は以下の通り。

【エコノミストの記事】

新聞業界には事前報道主義がはびこっている。毎日新聞経済部記者として次年度予算案の取材をしていた時のこと。あと10時間もすれば発表される地方交付税額を事前報道するために、深夜1時まで関係者を回った。その結果、朝刊での事前報道には成功したが、不毛な仕事をした徒労感のみが残った。

官庁の政策・予算、企業の社長人事、春闘の妥結水準まで事前報道合戦は果てしない。裏付けが十分でないために起こる人事報道の誤報も見受けられる。「あの予算額が決まった背景にある社会情勢は」「この人事はどういうパワーバランスで決まったのか」。ニュース発表後でも、背景検証の余地はある。

4月に経済部からエコノミスト編集部に異動しました。あやふやな速報性にこだわらず、埋もれた事実を掘り起こす姿勢で取材に当たります。よろしくお願いします。

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待っていればいずれ発表されるネタを、夜討ち朝駆けまでして発表前に書くのは、もう止めた方がいい。大企業同士の合併など大きなネタを取ってきても、部数にはほとんどプラスに働かないと言われている。それはそうだろう。「どの新聞社が抜いたのか」をきちんとチェックするためには、少なくとも読売、朝日、毎日、産経、日経を購読する必要がある。

だが、今どき、新聞を2紙以上読んでいる人がどのくらいいるのか。しかも、どの新聞社が早く報じたかを知っている人の多くは、既に新聞を読んでいる。発表前のネタを事前に記事にすることが新たな読者獲得につながると期待する方がどうかしている。「社会を良くする」といった効果に至っては、疑いようもなくゼロだ。

なので、種市記者の言っていることはもっともだ。一読者の立場で言えば「発表されるものを発表前に書くこと」をメディアには微塵も求めていない。種市記者は「あやふやな速報性にこだわらず、埋もれた事実を掘り起こす姿勢」をエコノミストでも毎日新聞でも貫いてほしい。

それにしても、この内容を載せた週刊エコノミスト(あるいは毎日新聞社)の懐の深さには感心した。例えば、日経から日経ビジネスに移った記者が「新聞業界には事前報道主義がはびこっている」などと書けば、99%以上の確率で書き直しを命じられるだろう。

ちなみに種市記者は4月19日号に「セブン&アイHDお家騒動 鈴木会長電撃退任へ 創業家と確執の果て」という記事を書いていた。内容は可もなく不可もなくといったところか。エコノミストでの仕事はまだ始まったばかりだ。色々な意味で今後に期待したい。


※「セブン&アイHDお家騒動 鈴木会長電撃退任へ 創業家と確執の果て」という記事の評価はC(平均的)。種市房子記者への評価も暫定でCとする。

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