2022年1月30日日曜日

「非食品」の伸びで利益押し下げ? 日経ビジネス江村英哲副編集長の誤解

日経ビジネスの江村英哲副編集長が1月31日号に書いた「時事深層 COMPANY 海外で好調のセブン&アイ~国内コンビニに忍び寄る不安」という記事は、業績関連の説明に問題を感じた。「2022年2月期通期の連結業績予想を上方修正したセブン&アイ・ホールディングス」の「国内コンビニ事業」について江村副編集長は以下のように記している。


【日経ビジネスの記事】

それ(海外コンビニ事業)と対照的だったのが国内コンビニ事業。通期見通しを営業収益、営業利益ともに下方修正した。営業利益は前の期比5.1%増としていた予想を同2.0%減に引き下げた。

国内ではテレワークの広がりでオフィス街の昼間人口が減少し、都市型店舗の売り上げが減っている。セブン&アイは住宅街やロードサイドの店舗で巣ごもり需要を取り込み、「加工食品」や「ファストフード」など粗利率の高い商品を伸ばす想定だったが、その狙いが外れた。

食肉価格が世界的に高騰する「ミートショック」で鶏肉の供給が不足。カウンターなどで販売する鶏肉商品を思うように伸ばせなかった。たばこ増税前の駆け込み需要により、相対的に粗利率の低い「非食品」が伸長したことも利益を押し下げる一因となった


◎「非食品」が伸びたのに「利益押し下げ」?

上記のくだりで最も引っかかったのが「たばこ増税前の駆け込み需要により、相対的に粗利率の低い『非食品』が伸長したことも利益を押し下げる一因となった」との解説だ。「非食品」の「粗利率」がプラスとの前提で言えば、記事の説明は間違っている。

非食品」の売上高が「伸長」すればするほど「利益」は押し上げられる。普通に考えれば分かるはずだ。仮に「たばこ」の粗利益率が10%で低いとしよう。それ以外の商品は売上高も粗利益率も不変とする。販管費なども変化しない。「増税前の駆け込み需要」で「たばこ」の売上高だけ前年同期の10倍になったと考えてほしい。「国内コンビニ事業」の営業利益はどうなるだろうか。当然に増える。

相対的に粗利率の低い『非食品』が伸長」した場合、「国内コンビニ事業」全体(あるいは会社全体)で見た「粗利率」を「押し下げる」要因にはなる。「利益」ではない。「利益」率だ。江村副編集長はそこを混同しているのではないか。

食肉価格が世界的に高騰する『ミートショック』で鶏肉の供給が不足。カウンターなどで販売する鶏肉商品を思うように伸ばせなかった」という説明にも似た問題を感じる。「思うように伸ばせなかった」という書き方だと「ある程度は伸びた」と取れる。だったら「粗利率」が下がっていない前提で言えば増益要因となる。

国内コンビニ事業」の「営業利益」は通期見通しで「2.0%減」。記事で触れていないので21年3~11月期について調べてみると3%減となっていた。営業収益はいずれも2%増なので増収減益だ。「粗利率」が落ち込んだり販管費が増えたりといった要因がないと増収減益にはならない。しかし、記事を最後まで読んでも、3~11月期と通期がなぜ増収減益なのか見えてこない。

もう1つ気になったのが「国内ではテレワークの広がりでオフィス街の昼間人口が減少し、都市型店舗の売り上げが減っている」との説明だ。2021年2月期ならば分かる。しかし記事で解説しているのは「2022年2月期」だ。前期に比べれば「巣ごもり」が減り「都市型店舗の売り上げ」が戻っている気がする。そうなっていないのならば、その理由は触れてほしい。

江村副編集長は記者を指導する立場にいるはずだ。しかし今回の記事は悪い見本にしかなっていない。そこはしっかり反省してほしい。


※今回取り上げた記事「時事深層 COMPANY 海外で好調のセブン&アイ~国内コンビニに忍び寄る不安

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/01334/


※記事の評価はD(問題あり)。江村英哲副編集長への評価も暫定でDとする。

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