2022年1月13日木曜日

「レジ袋の卸値上昇」を描いてる? 日経 田中浩司記者「価格は語る~レジ袋『有料』で卸値上昇」

13日の日本経済新聞朝刊マーケット商品面に田中浩司記者が書いた「価格は語る~レジ袋『有料』で卸値上昇 需要減でも店側には利益 原料高の転嫁しやすく」という記事は興味深く読めた。しかし肝心の「レジ袋」の「卸値上昇」の説明に問題が多い。「レジ袋の需要は急減しているが、なぜか卸値は上昇している」というのが記事の柱なのだから、ここはしっかり伝えてほしい。

ハクセキレイ

まず気になるのが、グラフに「原料の高純度ポリエチレン」の値動きを使っていることだ。記事の趣旨から考えても「レジ袋」の「卸値」の動きを見せるべきだ。

高密度ポリエチレンの国内価格は20年7月に約10%下落したが、21年に入って原油・ナフサ(粗製ガソリン)の高騰を受けて12月までに約28%上昇した」と「原料」についてはそこそこ詳しく価格動向を書いているのに「レジ袋」の「卸値上昇」の情報は見当たらない。関連がありそうと思えるのは以下のくだりぐらいだ。


【日経の記事】

これを受け、福助工業(愛媛県四国中央市)や大倉工業などフィルム・レジ袋大手が高密度ポリエチレンフィルムの転嫁値上げを表明。21年12月までにレジ袋有料化の直後から3割弱上昇した


◎「レジ袋」の「卸値」は?

高密度ポリエチレンフィルム」についてはメーカーが原料高の「転嫁値上げを表明」し価格が「3割弱上昇した」らしい。ただ、これは「高密度ポリエチレンフィルム」のメーカー出荷価格の話だ。「レジ袋」は「高密度ポリエチレンフィルム」から作るのだろう。なので「レジ袋」の一段階前の話と言える。

付け加えると「卸値」とは「卸売商が小売商に商品を売り渡す場合の値段」(日本国語大辞典)だ。「レジ袋」を仕入れた「卸売商」が売値を上げなければ「レジ袋」の「卸値上昇」とはならない。しかし、そういった話は出てこない。

記事には「レジ袋」に関して「小売事業者の仕入れ値は、サイズや取引量にもよるが、1枚1円前後といわれる」との記述がある。これが「卸値」だと思われる。

記事には以下の事例も出てくる。


【日経の記事】

首都圏に食品スーパー約130店を展開するいなげやは現在、店頭で1枚5円と2円で提供しているレジ袋の仕入れ価格の引き上げを受け入れることを決めた。メーカーとの価格交渉の席に着いた担当者は「無料のサービスとして配っている時ならおいそれとのめなかっただろう」と話す。


◎「卸売商」は介在してる?

いなげや」は「メーカーとの価格交渉」で「レジ袋の仕入れ価格の引き上げ」を決めたようだ。断定はできないが「メーカー」と直接取引していて「卸売商」は介在していないようにも見える。この辺りも引っかかる。

レジ袋」と「高密度ポリエチレンフィルム」。「卸値」とメーカー出荷価格。田中記者はその辺りをきちんと整理しないまま記事を書いてしまった印象がある。「レジ袋」の「卸値」をメインに据えるのならば「卸売商」の「レジ袋」販売価格がどう変化したのか、しっかり説明してほしい。


※今回取り上げた記事「価格は語る~レジ袋『有料』で卸値上昇 需要減でも店側には利益 原料高の転嫁しやすく」

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220113&ng=DGKKZO79156430S2A110C2QM8000


※記事の評価はD(問題あり)。田中浩司記者への評価も暫定でDとする。

0 件のコメント:

コメントを投稿