2021年7月9日金曜日

「本格参入」済みでは? 「グーグル、日本で金融参入」に見える日経の悪癖

9日の日本経済新聞朝刊1面に載った「グーグル、日本で金融参入~スマホ決済会社を買収」という記事には日経の悪い癖が出ている。全文を見た上で具体的に指摘したい。

筑後川と片の瀬橋

【日経の記事】

米グーグルが日本で金融事業に本格参入することが8日までにわかった。国内のスマートフォン決済会社を200億円超で買収し、インドや米国に続き日本でも2022年をめどに自社グループで送金・決済サービスを始めるもようだ。巨大IT(情報技術)企業の参入で金融と異業種の合従連衡が一段と加速する。

グーグルが買収するのはスタートアップ企業のpring(プリン、東京・港)。17年に決済代行のメタップスや、みずほ銀行などが共同出資して設立した資金移動業者だ。複数の関係者によると、グーグルがみずほ銀行などプリンの既存株主から全株式を200億~300億円で取得する方向で最終調整に入った。

日本は先進国のなかでもキャッシュレス決済の普及が遅れており、開拓の余地が大きいと判断したようだ。米国のITプラットフォーマーは膨大な顧客基盤やデータを生かし、金融に事業領域を広げている。グーグルの参入で日本でもデジタル金融を巡り既存の金融機関やネット企業との競争が激しくなる。

グーグルの広報担当者は日本経済新聞の問い合わせに対し「噂や臆測にはコメントしない」と回答した。

プリンは銀行口座をひも付けて入金しQRコード決済ができるアプリを手がける。登録者は数十万人程度とみられるが、使い勝手の良さが若年層を中心に支持を集める。


◎「本格参入」ならば…

記事の冒頭で「本格参入」の文字を見て「またやったな」と思わずにはいられなかった。

見出しは「本格参入」ではなく「参入」だ。「金融事業」を新規に立ち上げるのかと思って読み始めると「本格参入」になっている。「本格」的ではない「参入」はしているのだろう。嘘は書いていないとしても、騙された感じにはなる。

さらに問題なのは、「本格」的ではない「参入」の具体的な内容に触れていないことだ。

本格参入」という表現にしたのはグーグルペイの存在があるからだろう。「米グーグルが日本で金融事業」を実験的にしか展開していないのならば「本格参入」でいい。しかしグーグルペイなどでかなり「本格」的にやっているのならば「本格参入」とは言い難い。

本格」的ではない「参入」について記事中で規模などを説明してくれれば「本格参入」という説明が適切かどうか読者が判断できる。言及しなかったのがうっかりなのか意図的なのかは分からない。ただ後者の可能性が高そうな気はする。

グーグルペイなどの現状に触れると「既に本格参入済みでは?」との疑いを持たれてしまうので言及を避けたのならば、さらに騙しの要素が強くなる。

日経の記事で「本格参入」の文字を見たら要注意。このことは改めて訴えておきたい。

ついでに語順の問題にも触れておきたい。

17年に決済代行のメタップスや、みずほ銀行などが共同出資して設立した資金移動業者だ」と書くと「17年に」と「共同出資して設立した」が離れてしまう上に、間に読点が入ってしまうので読みづらい。「決済代行のメタップスや、みずほ銀行などが17年に共同出資して設立した資金移動業者だ」などとした方が良い。


※今回取り上げた記事「グーグル、日本で金融参入~スマホ決済会社を買収

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210709&ng=DGKKZO73716210Z00C21A7MM8000


※記事の評価はD(問題あり)

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