2021年7月26日月曜日

「米国では暮らしが一変」に無理がある日経1面連載「キャッシュレス新世紀(上)」

悪い癖は簡単にはなくならないということか。日本経済新聞朝刊1面でまたも「世界一変系」の連載が始まった。世界はそんなに簡単に一変しないので、この手の連載はどうしても無理が生じる。26日の「キャッシュレス新世紀(上)塗り替わる世界金融地図~フィンテック、決済席巻 低所得層に恩恵大きく」という記事も例外ではない。

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最初の事例では「デジタル金融の最前線をいく米国では暮らしが一変した」と言い切っている。その説明に説得力があるかどうか見ていこう。


【日経の記事】

デジタル金融の最前線をいく米国では暮らしが一変した。ニューヨークに住む高校生ダニエル・モーティマー君(18)は、親からお小遣いを送金アプリ「ベンモ」で受け取る。「外での支払いは99%がアプリかカード。財布に現金は5ドルくらいしかない」。友達とカフェで割り勘するときもベンモで決済する。

現金以外の支払い手段はこれまでクレジットカードやデビットカードだった。コロナ下ではスマホ決済や送金も広がった。独調査会社スタティスタによるとベンモの送金額は1~3月に510億ドル(約5兆6000億円)と2年で2.4倍に急増した。米アクセンチュアは世界で30年までの10年間に48兆ドル、2兆7000億件の決済が現金からキャッシュレスにかわると予測する。


◎どこが「一変」?

ダニエル・モーティマー君」の事例はいつ、どんな変化が起きたのか不明だ。とりあえず1年前は「現金」のみを使っていたと仮定しよう。それが「親からお小遣いを送金アプリ『ベンモ』で受け取る」ようになり「外での支払いは99%がアプリかカード」になっただけだ。

友達とカフェで割り勘する」といった生活スタイルに変化はないのだろう。「支払い手段が一変した」かもしれないが「暮らしが一変した」感じはない。わざわざ事例に出した人物の変化がこの程度なのだから「米国」全体の「一変」度合いは推して知るべしだ。

現金以外の支払い手段はこれまでクレジットカードやデビットカードだった。コロナ下ではスマホ決済や送金も広がった」という説明も引っかかった。米国では小切手決済が昔から普及している。日本だとSuicaなどの電子マネーもかなり歴史がある。「現金以外の支払い手段」が「これまでクレジットカードやデビットカード」に限られていたかのような説明には問題がある。

さらに言えば「コロナ下ではスマホ決済や送金も広がった」という説明も苦しい。「送金」は「コロナ下」で「広がった」訳ではない。「コロナ下」でさらに「広がった」かもしれないが、「送金」自体は昔から当たり前にある。「スマホ決済やスマホ送金」という趣旨で「スマホ決済や送金」と記したのだろうか。だとしたら書き方が下手だ。

連載はあと2回続く。先が思いやられる。


※今回取り上げた記事「キャッシュレス新世紀(上)塗り替わる世界金融地図~フィンテック、決済席巻 低所得層に恩恵大きく

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210726&ng=DGKKZO74168980W1A720C2MM8000


※記事の評価はD(問題あり)

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