2021年2月24日水曜日

「橋本龍太郎=小泉純一郎バイアス」? 牧原出 東大教授が東洋経済で展開した謎の解説

東京大学教授の牧原出氏は賢い人なのだろうが、記事にはその賢さが出ていない。週刊東洋経済2月27日号の「フォーカス政治~破綻した官邸主導政治から転換を」という記事でも辻褄の合わないことを平然と書いている。

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当該部分を見ていこう。

【東洋経済の記事】

内閣機能強化論なかんずく官邸機能強化論は、2001年の省庁再編の大きなテーマであった。省庁間セクショナリズムを打破し、国家の基本方針を大胆に定めるには、首相と官邸に権力を集中すべきとする改革論が叫ばれた。

しかし、今にして思い返せば、そのときの改革論には大きなバイアスがあった。それは、「橋本龍太郎=小泉純一郎バイアス」とでも呼ぶべきものである

省庁再編を政治課題に掲げた橋本首相は、そのための諮問機関であった行政改革会議を自ら議長として取り仕切った。各省庁の状況を熟知していたうえに、財界人、言論人、法律専門家らが居並ぶ会議をまとめ上げるだけの識見も十分備えていたのである。

そして、再編された省庁を担ったのは、自民党総裁選挙で橋本氏を破り首相に就任した小泉氏であった。小泉内閣は確かに「官邸主導」を実質的に作り上げたが、小泉首相は経済財政諮問会議の議長として、閣僚たちに役所のペーパーの読み上げを許さず、自分も意のままに発言した。小泉首相は政策の細部にこだわらない姿勢を変えはしなかったが、おおむね全体の流れを直感的であったにせよ、把握していた。

こうしたリーダーがその後も連綿と続くことを、改革論の担い手は安易に想定しすぎたのである。新型コロナウイルス感染症という直面する果てない危機に際して、官僚のペーパーを読むことしかできない前首相・現首相を見ると、かつての想定がいかに甘いものであったかがわかる。2人とも、多数の意見が入り乱れる会議の中で、それぞれの発想を踏まえて合意点を見いだしつつ、リーダーシップを発揮するということができていない。官邸強化論は、現在のような、いわば平均的な自民党総裁には荷が重すぎるというべきである。


◎2人の首相は見えなかった?

官邸機能強化論」には「橋本龍太郎=小泉純一郎バイアス」があり「こうしたリーダーがその後も連綿と続くことを、改革論の担い手は安易に想定しすぎたのである」と牧原氏は言う。「橋本龍太郎」氏から「小泉純一郎」氏へ首相のバトンが渡ったのならばまだ分かる。しかし両者の間に小渕恵三氏と森喜朗氏がいる。橋本氏と小泉氏が○で小渕氏と森氏が×ならば「リーダー」は○××○となる。なのになぜ○タイプの「リーダーがその後も連綿と続くことを、改革論の担い手は安易に想定しすぎた」のか。

直近4人の「リーダー」のうち○は2人。直近3人に絞れば○は1人だけだ。なのに○タイプが「その後も連綿と続く」と「想定」するのは不自然だ。今後は×タイプが「リーダー」になることはないと「想定」できる理由は考えにくいし、牧原氏も言及していない。

森氏や小渕氏が首相だったことを「改革論の担い手」は知らなかったとも考えにくい。「橋本龍太郎=小泉純一郎バイアス」があったという牧原氏の分析に問題がある気がする。

牧原氏が書く政治関連記事は要注意。そう見ておくべきだろう。


※今回取り上げた記事「フォーカス政治~破綻した官邸主導政治から転換を

https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26198


※記事の評価はE(大いに問題あり)。牧原氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

東洋経済「フォーカス政治」に見える牧原出 東大教授の実力不足https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/02/blog-post_10.html

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