朝刊1面ワキという重要な場所に掲載しているのに、3日の日本経済新聞の「ヤマダ、郊外に大量出店~5年で150店、1000億円投資 巣ごもりに対応」という記事は完成度が低かった。全文を見た上で問題点を指摘したい。
下関駅前 |
【日経の記事】
家電量販店最大手のヤマダホールディングス(HD)が1000億円投じて郊外や地方で家電や家具を扱う大型店を大量出店する。2022年3月期から5年間で150店程度増やす。新型コロナ感染拡大に伴い家で過ごす人々の「巣ごもり消費」に対応する。他の小売業の出店も都市から郊外にシフトする可能性がある。
ヤマダは16年3月期に約60店舗の大量閉店に踏み切って以降、過当競争を避けるため直営店の店舗数は横ばいで推移していた。しかし、新型コロナで家電量販店を巡る事業環境が一変。攻めの出店戦略に転換する。
ヤマダは年間200億円超を投じ、年30店ペースで直営の大型店を開く。店舗の立地は郊外や地方に集中させる。郊外店舗はネット通販で注文した商品の受取場所や配送拠点としても活用する。
新規出店のうち年5~10店程度は店舗面積が約1万3000平方メートルと、都市部の主力店舗と同規模にする。新規郊外店はスペースを広く取り、買い物客が「3密」状態になるのを防ぐ。家電に加え大塚家具の家具や住宅設備機器、日用品なども展開する総合店とする。
20年の白物家電の国内出荷額は前年比1%増の2兆5362億円と24年ぶりの高水準となった。巣ごもり特需を受けヤマダHDの21年3月期連結純利益は前期比30%増の320億円を見込む。都心より郊外店舗が収益をけん引している。
◇ ◇ ◇
気になった点を列挙してみる。
(1)「大型店」の定義は?
記事では「大型店」の定義を示していない。これは必ず入れてほしい。
「新規出店のうち年5~10店程度は店舗面積が約1万3000平方メートルと、都市部の主力店舗と同規模にする」とは書いている。なので「店舗面積が約1万3000平方メートル」あれば「大型店」だとは分かる。しかし、例えば1万平方メートルの店が「大型店」かどうかは判断できない。
また「年5~10店程度」以外の店が「約1万3000平方メートル」より広いのか狭いのかも不明だ(狭いのだろうとは思うが…)。
(2)「大型店」は今何店舗?
「大型店」の出店ペースは今までどうだったのか。これまでも出店は「大型店」中心だったのか。これらも記事からは読み取れない。「直営店の店舗数は横ばいで推移していた」とは書いているが、だから「大型店」の出店がなかったとは言い切れない。
現状では「大型店」が何店舗あるのかも欲しい。できれば全体の店舗数に占める「大型店」の比率も入れたい。
(3)「大量出店」?
日経は過去の記事でヤマダについて「かつては年間40~50店出した時期もある」と書いている。「家電量販店最大手」というポジションからすれば「年30店ペース」だと「大量出店」とは感じない。「大量出店」だと日経が言い切るのならば、なぜそう言えるのか根拠を示してほしかった。
(4)「都市から郊外」?
最後に言葉の使い方に注文を付けたい。
「他の小売業の出店も都市から郊外にシフトする可能性がある」と書いていると「郊外」と「都市」が重ならないような印象を受ける。しかし、そうではない。例えば東京都の立川市は「郊外」かつ「都市」だろう。
記事では「郊外や地方で家電や家具を扱う大型店を大量出店する」とも説明している。筆者は「地方」を「都市」と見なしていないのかもしれない。当然だが「地方」にも「都市」はある。
※今回取り上げた記事「ヤマダ、郊外に大量出店~5年で150店、1000億円投資 巣ごもりに対応」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210203&ng=DGKKZO68771980T00C21A2MM8000
※記事の評価はD(問題あり)
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