2020年11月28日土曜日

日経ビジネス「賢人の警鐘」で気になる川本裕子 早大大学院教授の男性頼み

女性識者が女性問題を論じる場合「女性に問題はない。変わるべきは男性あるいは社会構造」と持っていきがちだ。日経ビジネス11月30日号に早稲田大学大学院教授の川本裕子氏が書いた「賢人の警鐘」という記事も、そうなっている。だが、それだとどうしても説得力に欠ける。記事の一部を見ていこう。

錦帯橋

【日経ビジネスの記事】

 果たして今の日本は、小さな女の子が可能性を感じられる国だろうか、と自問した。確かに働く女性は増え、女性管理職の女性も増えつつある。しかし日本の性別役割意識は男女かかわりなく根強く、女性の挑戦意欲をそいでいる。先日の意識調査で多くの働く女性は幹部への昇進を望まないという結果が報じられていたが、そもそも環境を変えなければ解決できない

注目したいのはバイデン氏の勇気だ。能力を見極め、多様性を重んじ、従来の慣習にとらわれず挑戦者に道を開く。その勇気なしにハリス副大統領誕生はなかった。動かざる岩のような環境を変えるため、大きな一歩を踏み出す勇気を持つ。日本でもそんな「身近な職場のバイデン氏」が増え、少しずつでも状況を改善してほしいと思う


◎「環境」は自ら変えられるのに…

女性管理職」をもっと増やしたいと川本氏は願っているのだろう。そして「少しずつでも状況を改善」するために「『身近な職場のバイデン氏』が増え」てほしいらしい。つまり「女性登用に積極的な男性上司が増えればいいのに…」という訳だ。なぜそんなに男性頼みなのか。

優秀で昇進に意欲を見せる女性がたくさんいるのに、能力でも意欲でも劣る男性を積極的に登用する男性上司ばかりだから「女性管理職」が増えないのならば「『身近な職場のバイデン氏』が増え、少しずつでも状況を改善してほしい」と自分も思う。

しかし「先日の意識調査で多くの働く女性は幹部への昇進を望まないという結果が報じられていた」という。ならば、まずは女性自身の意識改革が必要だ(「女性管理職」を増やすべきとの前提に立てばだが…)。しかし川本氏はそこには踏み込まない。

そして「環境を変えなければ解決できない」と「環境」のせいにしてしまう。「人間は環境の中で育つ。可能性を否定されたり、不当な困難を伴ったりする環境であれば、多くの場合無意識に、人はその可能性を追わなくなる」と川本氏は記事の中で書いている。仮にそうだとしよう。しかし今は「働く女性は増え、女性管理職の女性も増えつつある」。それでも「多くの働く女性は幹部への昇進を望まない」のであれば「環境」のせいと片付けるのは無理がある。今の日本で「女性管理職」を目指す女性が「可能性を否定されたり、不当な困難を伴ったりする」ケースはかなり稀ではないか。

「女性よ自らの意識を変えろ」と訴えれば女性からの反発が予想される。だから多くの女性識者は腰が引けるのだろう。

百歩譲って「環境を変えなければ解決できない」としよう。だとしたら女性自身が起業して数多くの有力企業を育て、そこに女性幹部を登用していけばいい。「身近な職場のバイデン氏」に頼らなくても、自分たちの力で「環境」は変えられる。そこに踏み込まないで「男性が変わらないと…」「社会構造が今のままでは…」と訴えても甘えた主張としか思えない。

川本氏には歴史を振り返ってほしい。例えば、幕末の志士にとって倒幕は「可能性を否定されたり、不当な困難を伴ったりする」ものだっとと推測できる。実際に命を落とした者も多い。その時に志士たちが「その可能性を追わなく」なれば、明治維新は成立しなかっただろう。

女性が「管理職」を目指したからと言って暗殺されたり投獄されたりする訳ではない。なのになぜ女性に関しては「環境を変えなければ解決できない」となってしまうのか。

付け加えると「女性管理職」を増やすべきとの考えには同意できない。「果たして今の日本は、小さな女の子が可能性を感じられる国だろうか」と自問した川本氏は直後に「女性管理職」へ思いを巡らす。なぜ「女性管理職」なのか。アイドルでもケーキ屋でも看護師でもユーチューバーでもいいのではないか。

小さな女の子」が自分の将来について「可能性を感じ」る対象が「女性管理職」である必要はない。「女性管理職」に憧れる「小さな女の子」などいるのかとさえ思う。「小さな女の子」の多くが「可能性を感じ」たがる職業がアイドルやユーチューバーだとしたら、そちらの道がしっかり開かれているかどうかの方が重要だ。

女性識者の多くはいわゆるキャリアウーマンが多いので、自分と同じような道を進む「女性管理職」を増やしたいのは理解できる。しかし「小さな女の子が可能性を感じられる国」かどうかとは関係が薄い。

さらについでに言うと「従来の慣習にとらわれず挑戦者に道を開く」と言うが、米国で女性副大統領候補となったのは「ハリス」氏で3人目だ。選挙に勝ったのは初めてだが、副大統領候補に女性を選んできた歴史はあるのだから「従来の慣習にとらわれず」と見るのは無理がある。


※今回取り上げた記事「賢人の警鐘」https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00121/00102/


※記事の評価はD(問題あり)

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