2020年11月11日水曜日

少子化克服を「諦めるわけにはいかない」日経 辻本浩子論説委員に気付いてほしいこと

少子化問題を語る多くの書き手が「問題解決のために社会を進歩的な方向へ動かすべきだ」と訴える。これだと必ず説得力がなくなってしまう。11日の日本経済新聞朝刊オピニオン面に辻本浩子論説委員が書いた「中外時評~男性育休をニューノーマルに」という記事もその例に漏れない。個人的には少子化は放置でいい。だが辻元論説委員は違うようなので、ここでは「少子化を食い止めるべき」との前提で考えていく。


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【日経の記事】

29年ぶり――。そんな言葉にわいたのが、11月上旬の東京株式市場だ。日経平均株価は1991年以来の水準にまで回復した。その一方で、同じぐらいの月日がたっても回復の道のりが見えない分野がある。少子化だ。

いわゆる少子化対策が始まったのは90年だった。1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率が、前年に過去最低の1.57になったのがきっかけだ。いま出生率は1.36(2019年)とさらに低い。生まれた赤ちゃんの数も19年は過去最少の86万人まで減少した。もはや少子化は当たり前。日本の「常態」となっている。

これさえすれば解決という特効薬はない。そもそも若い人からしてみれば、少子化対策のために子どもを持とうとは思わないだろう。大事なのは環境整備。若者が安心して暮らせる社会、将来に希望を持てる社会であるかどうかだ。残念ながら、いまだにそういう社会にできていない。その結果がいまの出生率や出生数なのだ


◎社会を良くすれば少子化は克服できる?

若者が安心して暮らせる社会、将来に希望を持てる社会」にすれば「出生率や出生数」が上向くと辻本論説委員は考えているようだ。しかし、その根拠は示していない。

辻本論説委員にはぜひ考えてほしい。戦後間もない第1次ベビーブームの時代は「若者が安心して暮らせる社会」だったのか。「安心して暮らせる」という意味では圧倒的に今の方が上だ。しかし、ベビーブームを実現したのは、食べる物にも困るような貧しい「社会」だ。

現在で考えてみよう。北朝鮮と韓国。どちらの方が「若者が安心して暮らせる社会、将来に希望を持てる社会」と言えるだろうか。圧倒的多数は韓国と答えるはずだ。しかし「出生率」は北朝鮮の方がはるかに高い。

若者が安心して暮らせる社会、将来に希望を持てる社会」を実現できれば少子化問題が解決するというのは、おそらく幻想だ。むしろ逆ではないか。例えば新型コロナウイルスの問題が深刻化して今後1年間で日本の人口の9割が失われるとしよう。そうなれば「若者が安心して暮らせる社会、将来に希望を持てる社会」には程遠い。しかし「出生率」は急激に上向きそうな気がする。

記事の続きを見ていこう。


【日経の記事】

諦めるわけにはいかない。安心して、希望をもって暮らせる社会に変えていく。そのための大前提となることは、大きく2つあろう。

1つは若い世代への就業支援だ。いまの少子化の流れを決定づけたのは90年代から00年代にかけての就職氷河期だった。不安定な非正規雇用のため家族を持てない人が多くいる。

いま新型コロナウイルス流行の影響で、若者のあいだに再び不安が広がっている。第2の就職氷河期が起きれば、その影響は長期に及びかねない。どう支援し、就業のチャンスを広げるか。官民あげて対策を考えることが急務だ。


◎根拠に欠けるような…

若い世代への就業支援」が少子化克服のために有効かどうかも怪しい。辻本論説委員の見方が正しいのならば「就職氷河期」が終わり「若者」の雇用環境が大幅に改善する過程で「出生率」も大きく上昇するはずだ。しかし、そうはなっていない。

雇用が無関係とは言わない。ただ、産みたい人は貧しくても産むし、産みたくない人は収入が多くても産まないという傾向が強いのではないか。

さらに続きを見ていこう。


【日経の記事】

もう1つは多様な生き方を許容する職場づくりだ。共働きが増えて価値観も多様になっているのに、働き方はいまなお極めて単一的だ。これが子育ての壁になっている。

例えば男性の育休取得率はいまだ7%台だ。職場の横並び意識はなお強い。


◎さらに関係なさそうな…

男性の育休取得」が容易になるのは悪くない。ただ、少子化対策としての意味はほとんどないだろう。「夫が育休を取ってくれるならば出産したいが、それが難しければ諦める」という女性がたくさんいるのならば、少子化対策として意味がある。だが、普通に考えれば、いてもわずかではないか。

「男性ももっと積極的に育児を」と辻本論説委員は望んでいるのだろう。それが少子化克服にもつながるとなれば主張に説得力が出てくる。しかし、男性の育休取得率が高い北欧諸国などが少子化を克服できていないという不都合な事実には触れていない。

進歩的な方向に社会を動かしたいのは理解できるが、それを少子化対策と絡めると無理が生じる。そのことを辻本論説委員は気付いてほしい。


※今回取り上げた記事「中外時評~男性育休をニューノーマルに」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201111&ng=DGKKZO66051700Q0A111C2TCR000


※記事の評価はD(問題あり)。辻本浩子論説委員への評価もDを据え置く。辻本論説委員については以下の投稿も参照してほしい。


日経 辻本浩子論説委員「育休延長、ちょっと待った」に注文
https://kagehidehiko.blogspot.com/2016/10/blog-post_16.html

「人生100年時代すぐそこ」と日経 辻本浩子論説委員は言うが…https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/100.html

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