2020年11月1日日曜日

東洋経済「ニュースの核心」結果論で語らない山田雄大氏の姿勢を評価

 経営の失敗を分析するのは難しくない。結果論で物が言えるからだ。しかし経営判断を下す時点では様々な不確定要素がある。なので「あそこでこうしておけば良かったのに…」と安易に語るのはズルい気もする。その意味では週刊東洋経済11月7日号に山田雄大氏(肩書は本誌コラムニスト)が書いた「ニュースの核心~『正しそう』な戦略ほどうまくいかない」という記事は評価できる。

沖端川大橋(柳川市)※写真と本文は無関係

三菱重工業が取り組んできた旅客機スペースジェット(旧MRJ)が事実上の事業断念に追い込まれた」件に触れて山田氏は以下のように記している。


【東洋経済の記事】

とはいえ、サイズは違うが同じ航空機事業では、未経験のホンダがホンダジェット事業を軌道に乗せつつある。参入時点の成功確率を客観的に評価すれば、MRJのほうが高かったのではないか。

ここで三菱重工を非難しようとしているのではない。四半世紀に及ぶ経済誌記者の経験からいえば、新事業やM&Aなどで「正しそう」な戦略が、当初の印象に反してうまくいかないのだ。


◇   ◇   ◇


新事業やM&Aなどで『正しそう』な戦略が、当初の印象に反してうまくいかない」と感じるのはよく分かる。「『正しくなさそう』な戦略」を積極的に選ぶ経営者もそれほど多くはないだろう。ただ、なぜ「うまくいかない」のかに関しては山田氏の意見に同意できない。そのくだりを見ていこう。


【東洋経済の記事】

東芝による米原子力メーカー、ウエスチングハウス(WEC)の買収も似た色合いがある。06年の買収時、原子力発電は世界中で再評価されていた。東芝が手がけるのは沸騰水型炉(BWR)で、世界で主流の加圧水型炉(PWR)の親玉であるWECを買収すれば、BとPを持つ唯一の原子炉メーカーとして躍進できる。

決定時の社長だった西田厚聰氏は最後まで正しかったと主張していたが、実際、その戦略は論理的には正しかったのだろう。

しかし、多数あった新設計画は机上のものが大半だったうえ、東日本大震災と福島第一原発事故で市場環境は一変した。名門意識が高いWECを御し切れないまま、数少ない受注案件は安全規制強化もあって費用が膨張していった。最終的に1兆円を優に超える損失を招き、東芝を危機に追い込んだ。

「正しそう」であるがゆえに、状況判断が甘くなる──。そう結論づけるのは強引すぎるだろうか(反証する事例も多々あるかもしれないが)。いずれにしろ、当事者は失敗原因を分析したうえで、今後の事業計画の教訓として生かし、新たな挑戦を続けるべきだ。


◎そもそも成功確率が低いのでは?

今回の記事には「『正しそう』な戦略ほどうまくいかない」という見出しが付いている。しかし「『正しそう』な戦略ほどうまくいかない」と言えるデータは示していないし、記事中では「『正しそう』な戦略ほどうまくいかない」とも訴えていない。「『正しそう』な戦略が、当初の印象に反してうまくいかない」と述べているだけだ。

その要因として「『正しそう』であるがゆえに、状況判断が甘くなる」のではないかと山田氏は分析している。とは言え買収額や投資額を勘案しても「正しそう」ならばゴーサインが出るのは必然だ。「戦略は論理的には正しかった」のにストップをかける方がどうかしている。

推測だが、そもそも「新事業やM&A」の成功確率がかなり低いのではないか。だから「正しそう」な案件でも多くの失敗例を目にすることになる。市場環境の激変や強力な競合相手の登場を事前に見通せる経営者は基本的にいない。「原子炉」に関して「東日本大震災と福島第一原発事故で市場環境は一変した」が、これを織り込んで「戦略」を練るのはまず無理だ。

なので「失敗原因を分析したうえで、今後の事業計画の教訓として生か」すのは難しいと思える。「新たな挑戦を続ける」ならば、成功確率は低いとの前提に立って、失敗した時に備えたリスク管理をしっかりすべきとの結論になるだろう。


※今回取り上げた記事「ニュースの核心~『正しそう』な戦略ほどうまくいかない」https://premium.toyokeizai.net/articles/-/25055


※記事の評価はB(優れている)。山田雄大氏への評価はBを据え置く。山田氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

東洋経済 山田雄大記者の秀作「スズキ おやじの引き際」https://kagehidehiko.blogspot.com/2016/10/blog-post_5.html

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