2020年11月23日月曜日

減価償却や引当金の計上でANAは「巨額の資金が必要」と書いたFACTAの誤解

FACTA12月号の「『雇用守る』ANAに勝算ありや」という記事におかしな記述があった。「航空機の売却や人員削減には、資産の減価償却や退職給付引当金の計上で巨額の資金が必要だ」という説明は意味不明だと思える。FACTAには以下の内容で問い合わせを送っている。

福岡市を流れる那珂川
【FACTAへの問い合わせ】

FACTA編集人兼発行人 宮嶋巌様

12月号の「『雇用守る』ANAに勝算ありや」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。

コロナ危機がリーマンショックよりも長期の航空需要低迷を招くのは確実であり、特にANAはリストラの深掘りを迫られるだろう。航空機の売却や人員削減には、資産の減価償却や退職給付引当金の計上で巨額の資金が必要だ

上記の記述は厳しく言えば意味不明です。「航空機の売却や人員削減には、資産の減価償却や退職給付引当金の計上で巨額の資金が必要だ」と書いていますが「減価償却や退職給付引当金の計上」を進めるための「資金」は必要ありません。会計上は費用・損失となるもののキャッシュアウトは伴わないはずです。

人員削減」に関しては「退職給付引当金」を「計上」した後で実際に「退職」金を支払う段階になると「資金」が必要になりますが「引当金の計上」に限れば「資金」は不要です。

航空機の売却」に関しては「資金」の手当てなしで完了できるはずです。売却損が出るとしても売却代金相当が「資金」として入ってきます(諸経費などはここでは考慮しません)。常識的に考えても分かるはずです。生活が苦しくなって、500万円で買った車を100万円で「売却」するとしましょう。この場合に「売却」のために「資金」の手当てが「必要」ですか。

記事では「航空機の売却」のためには「減価償却」しなければならないので「巨額の資金が必要」と説明しているのでしょう。ここは、さらによく分かりません。「航空機」を「売却」すれば資産が減るので「減価償却」の負担はむしろ軽くなります。売却前に一気に「減価償却」する訳でもありません。

航空機の売却や人員削減には、資産の減価償却や退職給付引当金の計上で巨額の資金が必要だ」との記述は誤りだと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

参考までに、筆者が伝えたかったことを推測して改善例を考えてみました。

航空機の売却や人員削減には、資産の売却損や退職給付引当金の計上を伴うため巨額の損失が避けられない

どうでしょうか。問い合わせは以上です。回答をお願いします。御誌では読者からの間違い指摘を無視して記事中のミスを放置する対応が常態化しています。読者から購読料を得ているメディアとして責任ある行動を心掛けてください。


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※今回取り上げた記事「『雇用守る』ANAに勝算ありや

https://facta.co.jp/article/202012007.html


※記事の評価はD(問題あり)

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