名護屋城跡(佐賀県唐津市) ※写真と本文は無関係です |
記事の前半部分は以下の通り。
【日経の記事】
いまどきの子どもたちは、正月の雑煮よりも節分の恵方巻きのほうが身近らしい。国立青少年教育振興機構が小3~中3の約3万4千人に、年中行事の体験を聞いた結果である。調査によれば「雑煮」は79%で「豆まきや恵方巻き」が87%。「七草がゆ」は27%だった。
豆まきだけならこれほど高い数字にはなるまい。近年みるみる普及した恵方巻きが、節分イベントに大いに寄与していよう。伝統的な七草がゆなど引き離し、雑煮をも上回るその人気なのだ。もともとは関西で生まれ、コンビニがキャンペーンを打って全国区になったのが20年ほど前。平成日本の巨大ヒットといっていい。
◎二重に問題が…
まず「身近」について考えてみたい。「年中行事の体験を聞いた結果」として「『雑煮』は79%で『豆まきや恵方巻き』が87%」となった場合、「正月の雑煮よりも節分の恵方巻きのほうが身近」と言えるだろうか。「恵方巻き」だけを取り出しての比較はできないと考えるのが普通だ。
例えば「野球」の経験者より「サッカーやフットサル」の経験者が多いとしても、ここから「フットサルは野球より身近」という結論は導けない。これが理解できないで新聞の1面コラムを執筆しているとしたら、かなり問題だ。
次は「人気」かどうかだ。「年中行事の体験」の多さは、その「行事」の人気を表すとは限らない。ちなみに「国立青少年教育振興機構」の調査では「雑煮」の「79%」に対して、「年末に家の大掃除をした」は80%だった。この場合「大掃除は雑煮並みに人気がある」「大掃除の人気は七草がゆを圧倒している」と筆者は理解するのだろうか。
ついでに記事の後半にも注文を付けておきたい。
【日経の記事】
とはいえ、昨今はアルバイト店員が販売ノルマを課せられたとか、達成できずに自腹で買い取らされたとか、後味の悪い話も聞く。あげくの果ては売れ残り商品の大量廃棄である。きのう農林水産省は需要に見合った販売をするよう業界団体に呼びかけたが、食品ロスの極みのような行いは自発的にやめるのが賢明だろう。
◎人のこと言える?
「印刷した新聞の99%以上は読者の元に届いています。読まれないまま廃棄される新聞は我が社の場合ほとんどありません」と日経が自信を持って言えるのならば「食品ロスの極みのような行いは自発的にやめるのが賢明だろう」と書くのも分かる。しかし、現実は違うのではないか。
次は最後の段落について。
【日経の記事】
余るとわかっているのに作っては捨て、また作る。昨年の節分の夜も、大幅に値引きされてなお売れぬ光景を眺めて悲しくなった。もちろんのり巻きになんの罪もなく、すこし見える断面のうまそうなことよ。丸かじりもいいが、サンドイッチよろしく流行の「萌(も)え断」を楽しめば、食べ物の尊さが身に染みるかもしれぬ。
◎いきなり「萌え断」と言われても…
十分な説明なく「萌え断」を使っているのが気になる。流行語を使うなとは言わないが、馴染みのない読者も多いはずなので説明はしっかりすべきだ。
さらに言えば「のり巻き」の「断面」を見て「楽しめば、食べ物の尊さが身に染みるかもしれぬ」と考えたのも理解に苦しむ。「うまそう」な「断面」に食欲をそそられるのは分かるが、そこから「食べ物の尊さが身に染みるかもしれぬ」となるのは飛躍が過ぎる。
そもそも、消費者が「萌え断」を楽しんでも「余るとわかっているのに作っては捨て、また作る」供給側の行動に変化が生じる訳ではない。「食品ロス」を減らすには供給側に訴える必要があると思える。
ひょっとすると、作り手に対して「節分の夜」に「萌え断」を楽しめと提案しているのか。その場合、万が一「食べ物の尊さが身に染みる」としても、今年の「食品ロス」を減らすには手遅れだ。
※今回取り上げた記事「春秋:いまどきの子どもたちは」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190112&ng=DGKKZO39958730S9A110C1MM8000
※記事の評価はD(問題あり)。
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