2017年3月23日木曜日

バスは無視? 週刊ダイヤモンド「国鉄 vs JR」のご都合主義

週刊ダイヤモンド3月25日号の特集「国鉄 vs JR 民営化30年の功罪」ではJR北海道の問題を大きく取り上げている。その中で納得できなかった記述を取り上げたい。特に引っかかったのが「JR再結集での支援は不可避 『北海道』『四国』の救済プラン」という記事だ。まず冒頭部分を見ていく。
桜(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係です

【ダイヤモンドの記事】

2月23日の早朝、記者はJR北海道函館本線で札幌駅へ向かうはずだった。本特集の取材で島田修・JR北海道社長にインタビューする予定だったからだ。だが、函館駅に特急北斗がやって来ることはなかった。

何でも、前日深夜に貨物列車が脱線してしまったらしい。記者はタクシー(出費は5万円!)と別の在来線を乗り継いで何とか間に合ったが、基幹路線がストップすると道内交通はたちまち大混乱に陥ってしまう。鉄道という大動脈のありがたさが身に染みた。



◎高速バスがあるのでは?

鉄道」が止まってしまうと、函館から札幌に行くにはタクシーしかなくなるような書き方をしている。しかし、高速バスがあるのではないか。調べてみると複数の会社が函館-札幌間で高速バスを走らせているようだ。料金は片道5000円弱。「記者はタクシー(出費は5万円!)と別の在来線を乗り継いで何とか間に合った」と言うが、高速バスを使えば10分の1の出費で済んだはずだ。

高速バスではダメな事情があったのかもしれない。だとしたら、そこは触れるべきだ。「基幹路線がストップすると道内交通はたちまち大混乱に陥ってしまう」と筆者は断定しているが、どうも怪しい。「鉄道の重要性を訴えたいがために、あえて高速バスの存在を伏せたのでは」と疑われても仕方がない。

記事の主題である「救済プラン」についても首をひねりたくなる。

【ダイヤモンドの記事】

極論ではあるが、低金利時代に突入し、6822億円の経営安定基金がもはや「運用益を生む装置」として役に立たなくなったのであれば、取り崩してしまえばいい。この巨費を使えば、老朽化した線路や車両などの鉄道設備を一新することができる。そうすれば、保守費が一気に軽くなる。例えば、木製の枕木をコンクリート製に一新すれば、雪の影響が抑えられるので安全性も高まる。

とはいえ、鉄道事業の赤字が年100億円だったJR九州とは違い、450億円に上るJR北海道が抱える問題は深刻だ。北海道だけで解決できるのだろうか



◎「取り崩してしまえばいい」と言うならば…

6822億円の経営安定基金がもはや『運用益を生む装置』として役に立たなくなったのであれば、取り崩してしまえばいい」と記事では訴えている。「この巨費を使えば、老朽化した線路や車両などの鉄道設備を一新することができる。そうすれば、保守費が一気に軽くなる」というのが、その理由だ。
アントワープ(ベルギー)のギルドハウス
          ※写真と本文は無関係です

知りたいのは、それで問題が解決できるかどうかだ。「保守費が一気に軽くなる」と鉄道事業の黒字化ができるのならば、有力な選択肢だ。だが、具体的な数値は出てこない。そして「北海道だけで解決できるのだろうか」と投げ出してしまう。

基金を取り崩しても黒字化は難しいのだろう。だから「極論ではあるが」と入れたのではないか。だとしたら「救済プラン」として提示する意味は感じられない。

JR再結集での支援は不可避」という主張も納得できなかった。

【ダイヤモンドの記事】

国鉄分割民営化から30年、全国で高速道路の整備が進み、地方では猛スピードで人口減少が進んでいる。鉄道を取り巻く環境は激変し、当時、作り上げたスキームは制度疲労を起こしている。

当時は、JR7社が公平になるよう「基金」と「負債」というかたちで資産分割したはずが、30年の時を経て、各社の格差が広がっている。地方があえぐ一方で、巨額の利益を稼ぐようになった本州三社(JR東日本、JR東海、JR西日本)が、例えば、JR基金を創設するなど、相応の負担をしていくべきではないだろうか

また、資金援助のみならず、JR北海道に欠けている経営人材の支援も必要だ。JRグループが結集する構図に「ミニ国鉄」の復活との批判は避けられないが、それくらい対応は急を要するのだ。



◎「JR基金を創設」は本気?

本州3社に「資金援助」を求めているが、筆者は本気でそんなことを考えているのか。本州3社は上場企業だ。3社が自発的に資金援助を決めた場合、株主の利益侵害は甚だしい。自社の利益や資産を削って子会社でもないJR北海道の経営を助けるべきだと言うのか。
平尾台(北九州市)※写真と本文は無関係です

国が本州3社に「資金援助」を強制させるのならば、カネを出さざるを得ないだろう。この場合も、JR北海道の経営支援のために民間企業に負担を強制させるという問題が生じる。

JRグループが結集」すると「『ミニ国鉄の復活』との批判は避けられない」と記事では書いているが、問題は「結集」ではないと思える。それよりも、株主の価値を大きく棄損させるような「資金援助」が上場企業に許されるのか問われてしかるべきだ。なのに記事では全く触れていない。

ついでに「トップを直撃~ 青柳俊彦(JR九州社長)」というインタビュー記事に注文を付けておきたい。この中に「マンション事業も第1号物件は笹丘でしたが、もう売れなくて、売れなくて」と出てくる。初出でいきなり「笹丘」は辛い。「マンション事業も第1号物件は(福岡市内の)笹丘でした」などとすべきだ。


※今回取り上げた特集「国鉄 vs JR 民営化30年の功罪
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/19664

※この特集に関しては以下の投稿も参照してほしい。

2件の間違いあり? 週刊ダイヤモンド「国鉄 vs JR」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/03/vs.html


※特集全体の評価はD(問題あり)。担当者の評価は以下の通りとする。

浅島亮子副編集長(暫定B→暫定D)
須賀彩子記者(Fを維持)
千本木啓文記者(暫定D)
竹田孝洋記者(暫定D→D)
山本 輝記者(暫定C→暫定D)

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