2017年3月2日木曜日

なぜ対象は「6割」? 日経「JFE、定時退社日を自ら決定」

最近の日本経済新聞に目を通していると、「働き方改革」に絡めた記事の多くに疑問が湧いてしまう。流行に便乗して企業も情報を出すし、記者も乗せられてしまうのか。2日の日本経済新聞朝刊総合1面に載った「供給網の最上流 素材大手が働き方改革 JFE、定時退社日を自ら決定/三菱ケミ、来月から会議を半減」もそんな記事の1つだ。
戒壇院(福岡県太宰府市) ※写真と本文は無関係です

まず「JFEスチール」から見ていこう。

【日経の記事】

JFEスチールは4月、社員一人ひとりが定時退社日を決められる新制度を導入する。1週間に1回以上、課長など管理職と相談して定時退社日を決め、残業しない9500人と全社員の6割が対象となる。三菱ケミカルホールディングスは会議の半減に取り組む。素材メーカーは産業界の要で、多くの取引先を持つ。2社のような動きが広がれば、他社の働き方にも影響を与えそうだ。

JFEは社員ごとに午後5時半の定時退社日を週に1回以上、自分で設ける。当日、製鉄所のトラブルや緊急の顧客対応などやむを得ない事情で残業しなければならないときは別の日に振り替える。多くの取引企業とつながりがある製造業で、こうして個人が自由に定時退社日を設ける取り組みは珍しいという。

一般に企業が設ける「ノー残業デー」や、月末金曜日の午後3時以降に退社する「プレミアムフライデー」は、社員に一斉休業を求める。だが、社員が抱える仕事量や繁閑は個人ごとに違うほか、退社後の時間の過ごし方も曜日によって一人ひとり異なるなど多様な「ワークライフバランス」に対応できない。

JFEスチールの今回の取り組みは、一律の残業禁止など「組織型」の働き方改革を柔軟な「個人型」にシフトさせる。産業界に一石を投じることになりそうだ。

◇   ◇   ◇

疑問点を列挙してみる。

(1)これまでは「残業が当たり前」?

「定時退社が当たり前で、たまに残業がある」という状況ならば、JFEスチールのような取り組みは必要ない。記事では触れていないが、「残業が当たり前で、あらかじめ定時退社日を決めておかないと毎日のように残業になってしまう」という状況がJFEスチールにはありそうに思える。そこに言及しないで「改革」への取り組みだけ強調されても…とは感じた。
ブリュッセルの小便小僧 ※写真と本文は無関係です

(2)「週5日」の設定も可能?

記事には「社員ごとに午後5時半の定時退社日を週に1回以上、自分で設ける」と書いてある。だとすると「月曜から金曜日まで全て定時退社」という設定もできるのだろうか。そこは知りたかった。「課長など管理職と相談」する必要があるので、ここで止められるのかもしれない。ただ、その場合は「個人が自由に定時退社日を設ける」と言えるのかとの疑問が残る。

(3)なぜ「6割」限定?

9500人と全社員の6割が対象となる」との説明も引っかかる。なぜ「全社員」ではないのか。対象となるかどうかは何を基準に決めているのか。そこは記事中で説明してほしかった。また、4割の社員は改革から取り残されると考えれば、大した「働き方改革」ではないとの見方もできる。

次は「三菱ケミカルホールディングス」を見ていく。

【日経の記事】

三菱ケミカルホールディングスは4月に傘下の化学系3社を統合して「三菱ケミカル」を発足させるのに合わせて、社内会議の半減に取り組む

会議の時間と回数、参加者をそれぞれ2分の1に削減。海外拠点とのやり取りで必要な場合を除き、早朝や夕方の会議もやめる。9月までに定着させる。土日の業務メールも原則禁止する。

◇   ◇   ◇

本当ならばすごい話だと思う。特に「会議の時間と回数、参加者をそれぞれ2分の1に削減」というのは強烈だ。例えば、20人が属するある部署では週2回、1回2時間、20人が参加して会議を開いていたとしよう。この場合、1人当たり週4時間を会議に費やす。

それを「それぞれ2分の1に削減」すると、週1回、1回1時間、10人の参加となる。部員が隔週で参加する場合、1人が会議に費やす時間は週30分にまで減る。つまり8分の1だ。

「本当かなぁ…」とは思う。あまりに急激だからだ。そこまで減らすならば、かなりの工夫が必要になりそうなものだが、記事にはそうした記述が見当たらない。なので「それぞれ2分の1に削減」を信じていいのか不安になる。「会議の時間と回数、参加者のいずれかを2分の1に削減」ならばまだ分かるのだが…。

※今回取り上げた記事「供給網の最上流 素材大手が働き方改革 JFE、定時退社日を自ら決定/三菱ケミ、来月から会議を半減

http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170302&ng=DGKKASDZ01H7K_R00C17A3EA1000

※記事の評価はC(平均的)。

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