2019年12月2日月曜日

「収益力」との関連付けに無理がある日経「SDGs経営調査」

調査にカネをかけた以上、何か意義ある結果が見つからなければ困るのは分かる。しかし、強引に意義付けすると調査そのものへの信頼性が低下してしまう。2日の日本経済新聞朝刊1面トップを飾った「『課題解決力』収益けん引 本社SDGs調査~環境・社会問題への対応『経営計画反映』6割」という記事を読むと、日経が「SDGs」と「収益力」で無理のある関連付けをしているのが分かる。
筑後川橋(福岡県久留米市)と夕陽
      ※写真と本文は無関係です

当該部分を見ていこう。

【日経の記事】

日本経済新聞社は上場企業など国内637社について、国連の「持続可能な開発目標(SDGs=総合・経済面きょうのことば)」にどう取り組んでいるかの視点で格付けした「SDGs経営調査」をまとめた。環境や社会など「非財務」の成果を投資判断に加える動きが広がるなか、上位34社で後続グループよりも自己資本利益率(ROE)などの指標が高い傾向がみられた。新規事業の開発や経営計画にSDGsを取り入れ、課題解決の力を成長につなげる機運が高まっている。

中略)偏差値65以上は34社。このグループの売上高営業利益率とROE(16~18年度平均の中央値)は、それぞれ8.2%、11%だった。偏差値60以上65未満だと、7.8%、10.1%。55以上60未満では6.7%、8.2%と下がっている。SDGsを経営に生かしている企業ほど、収益力が高い傾向が鮮明となった



◎「業績」を評価に加えたからでは?


SDGs経営調査」では企業を「『SDGs戦略・経済価値』『環境価値』『社会価値』『ガバナンス』の4つの視点で評価した」という。特集面に載った「評価の方法」でさらに詳しく見ると「SDGs戦略・経済価値」は「方針、報告とコミュニケーション、推進体制・社内浸透、ビジネスでの貢献、業績の5指標」となっている。

業績」も含めて評価すれば、「業績」の良い企業が「上位」に来るのは当然だ。なのに「上位34社で後続グループよりも自己資本利益率(ROE)などの指標が高い傾向がみられた」「SDGsを経営に生かしている企業ほど、収益力が高い傾向が鮮明となった」などと訴えて意味があるのか。

SDGs経営調査は今回、初めて実施した」らしい。この種のごまかしに手を染めなければ記事として成り立たないのならば、調査は今回を最後にした方がいい。


※今回取り上げた記事「『課題解決力』収益けん引 本社SDGs調査
環境・社会問題への対応『経営計画反映』6割
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191202&ng=DGKKZO52834640R01C19A2MM8000


※記事の評価はD(問題あり)

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