2019年12月19日木曜日

「ドラッグ出店年50店」で大丈夫? 日経 荒木望記者に感じる未熟さ

基礎的な技術が身に付いていないのに、十分な指導を受けないまま記事を世に送り出している--。日本経済新聞の荒木望記者はそんな状況にあるのだろう。19日の朝刊九州経済面に載った「ドラッグ出店年50店 ナチュラルHD、まず関西・東北~同業買収も検討 全国展開目指す」という記事からは、そう判断できる。
筑後川の河川敷(福岡県久留米市)
      ※写真と本文は無関係です

記事の全文を見た上で、問題点を指摘したい。

【日経の記事】

九州が地盤の「ドラッグストアモリ」などを展開するナチュラルホールディングス(HD、福岡県朝倉市)は、年50店舗を新規出店していく方針を明らかにした。並行して各地の同業をM&Aなどで傘下に入れ、全国に店舗網を広げる。ドラッグストア業界は競争激化で、再編・提携が進んでいる。規模を拡大して生き残りを目指す。

ナチュラルHDは約280店舗あるモリのほか、中国地方を拠点に約160店舗ある同業のザグザグ(岡山市)を傘下に持っている。10月には宮城県の「くすりのベル」(同県美里町)を買収し、東北にも進出した。売上高も全体で2200億円規模まで増えている。

今後はまず、関西や東北などに出店していく。ナチュラルHDの森信社長は「5年以内に年50店を新規出店できる体制を整える」と話す。

新規出店で必要となる登録販売者らの確保へ、福利厚生を充実する。モリは2017年、本社内に保育園を開設して人手の確保につなげてきた。今後もこうした取り組みを出店エリアで実施することで、登録販売者をはじめ従業員を確保していきたい考えだ。

新規出店と並行し、各地の同業を買収することも検討している。規模拡大で仕入れ価格の低下など経費の削減も進められることから「出資比率は3割程度でも提携先を探し、出店と合わせ全国展開を目指す」(森社長)考えだ。

ナチュラルHDは規模拡大と同時に「専門知識を武器に、コンサルタントとして付加価値をつける」(森社長)ことで顧客満足度を高め、他社との違いを出していく。モリは起源である漢方薬局時代から、顧客との「対話販売」に力を入れてきた。今後も薬は登録販売員や薬剤師らが顧客に症状を聞きながら販売し、飲食料品などは低価格で提供していく。ナチュラルHDは30年にはグループで売上高5000億円を目指す。

ドラッグストアは店舗数が全国で2万店を超え、競争が厳しい。インバウンド(訪日外国人)による化粧品や薬などの「爆買い」は落ち着いてきている。飲食料品や日用品などは、コンビニエンスストア・食品スーパーなど他業態との価格競争も激しくなっている。

生き残りへ再編や提携も進んでいる。大手のマツモトキヨシホールディングスとココカラファインは8月、経営統合の協議入りを発表した。


「年50店舗を新規出店していく方針」?

最初の段落で「年50店舗を新規出店していく方針」と荒木記者は書いている。しかし読み進めると「ナチュラルHDの森信社長は『5年以内に年50店を新規出店できる体制を整える』と話す」と出てくる。この発言からは「年50店舗を新規出店していく方針」とは判断できない。「体制を整え」た上で、出店を「50店」より少なくする選択もあり得る。

5年以内に年50店を新規出店できる体制を整える」と話しただけで「年50店舗を新規出店していく方針」と書かれた場合、自分が「森信社長」の立場ならば「危ない記者だな。先走ったことを書くので要注意」と評価するだろう。

問題はそれだけではない。今回の記事は九州経済面のトップを飾っている。なので行数もそこそこある。しかし出店に関する話は前半で終わる。出店について十分な情報を提供した後ならば、背景説明に多くを割いてもいい。だが、そうはなっていない。

まず、これまでの出店数の推移が分からない。記事に付けたグラフで「店舗数」が増えてきたことは分かるが、これは「出店数」ではない。できれば具体的な過去の「出店数」を記事に盛り込みたい。

その上で、2020年の新規出店(できれば閉店も)の計画も見せたい。「5年以内に年50店を新規出店できる体制を整える」との発言から判断すると、2020年は「年50店」を下回るはずだ。

年50店を新規出店できる体制を整え」た後は実際に「年50店」を出していくのか。何年ぐらい「年50店」を続けるのか。どの程度の投資負担になるのか。入れたい情報はたくさんある。

今後はまず、関西や東北などに出店していく」と言うならば、それがどの程度の数になるのか。九州経済面なので地盤の九州での出店がどうなるかも触れたい。

各地の同業を買収することも検討している」といった話は、出店についてしっかり情報を盛り込んだ後で、余った行数の中に潜り込ませればいい。

メインテーマについてしっかり書き込むという基本が、この記事ではできていない。最近の日経の企業ニュース記事によく見られる傾向でもある。「業界の動向などをあれこれ書いて行数を伸ばして記事を仕上げれればいい」と荒木記者は考えているかもしれないが、その甘さは捨ててほしい。

まずはメインテーマに関して十分な情報を読者に与えるべきだ。業界動向などは「行数に余裕があれば触れる」との認識でいい。


※今回取り上げた記事「ドラッグ出店年50店 ナチュラルHD、まず関西・東北~同業買収も検討 全国展開目指す
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53523660Y9A211C1LX0000/


※記事の評価はD(問題あり)。荒木望記者への評価も暫定でDとする。

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