2015年11月14日土曜日

仲介通さず?日経ビジネス「『青田売り』離れが加速する」(1)

日経ビジネス11月16日号に載った「時事深層~横浜『傾きマンション』問題 『青田売り』離れが加速する」は分析の甘さが目立つ記事だった。杭のデータ改ざん問題を受けて「新築から中古への大転換が起き始めた」と書いているが、色々と説得力に欠ける話が出てくる。まずは日経BP社へ送った問い合わせから見ていこう。この件では筆者(島津翔、広岡延隆、林英樹の3記者)がヤフーやソニー不動産にうまく“騙された”可能性が高い。

【日経BP社への問い合わせ】

英彦山神宮奉幣殿(福岡県添田町) ※写真と本文は無関係です
日経ビジネス11月16日号「横浜『傾きマンション』問題 『青田売り』離れが加速する」という記事についてお尋ねします。

記事ではヤフーとソニー不動産が始めた「おうちダイレクト」というサービスについて「11月5日、個人所有の中古物件情報紹介サイトを立ち上げた。不動産仲介業者を通さずに個人が販売できる環境を整え、中古市場の活性化を狙う」と書かれています。

しかしヤフーのホームページでこのサービスに関する説明を見ると「オーナーは初回見学時にソニー不動産と媒介契約を締結していただく必要があります」と出てきます。つまり購入希望者が物件を見学する時点で、売り主はソニー不動産という仲介業者と契約関係が生じるわけです。これでどうやって「不動産仲介業者を通さずに個人が販売できる環境」が整うのでしょうか。

記事を素直に解釈すれば「おうちダイレクト=仲介業者を通さずに個人が不動産を販売できるサービス」となります。しかし、実際にはソニー不動産を通さずに売却することは不可能なようです。

記事中の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題ないとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

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筆者は「おうちダイレクト=仲介業者を通さずに個人が不動産を販売できるサービス」と信じ切っているはずだ。これは発表内容にも原因がある。ニュースリリースには「マンション所有者は、『おうちダイレクト』を利用することにより、不動産仲介会社を介することなく、自由にマンションの売り出しを行うことができます」と明記されている。これを読んで筆者は「このサービスなら仲介業者抜きで不動産を販売できる」と思い込んだのだろう。

しかし、その後に「物件見学から売買代金の決済・物件の引渡しまでのオフラインでの不動産取引実務は、ソニー不動産がサポートします(以下「仲介サービス」)」と出てくる。つまり、「売り出し」は仲介業者を介さずにできるが「売却」には仲介業者が関わるということだ。ニュースリリースでは「仲介業者を通さずに不動産を販売できる」とは一言も書いていない。同情の余地はあるものの、“騙された”のは日経ビジネスの記者の読解力が足りないからだ。

記事には他にも気になる点がある。それらについては(2)で触れたい。日経BP社からの回答もあれば紹介していく。


※11月6日の日本経済新聞 朝刊企業総合面に出ていた「ビジネスTODAY~中古マンション、自ら売る 個人間取引、仲介業者に頼らず ヤフーとソニー系がサイト開設」という記事も「おうちダイレクト」の発表内容を誤解していると思われる。これに関しては「『仲介業者に頼らず』に偽りあり 日経『ビジネスTODAY』」を参照してほしい。

※(2)へ続く。

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