2015年11月2日月曜日

読み応えあるが…東洋経済の特集「VWショック」に細かい注文

週刊東洋経済11月7日号の44ページにわたる特集「VW(フォルクスワーゲン)特集」(48~91ページ)は読み応えのある内容だった。「これを全部読むのはしんどいかなぁ」と思いながら読み始めたが、休むことなく一気にページをめくっていけた。特集の最初の記事で「VWスキャンダルに出口はあるのか。そして、ドイツはどこへ向かうのか。現地取材も交え、VWとドイツの『今』を追う」との宣言通りの中身だったので、特集の内容は多岐にわたっていたものの、「どこに向かって話を進めているのか」との不安は最後まで抱かずに読めた。

大濠公園(福岡市中央区) ※写真と本文は無関係です
強いて言えば「プリウスはリッター40キロも走らない!? カタログ燃費のふしぎ」(75ページ)は脱線しすぎだろうが、問題にするほどではない。もちろん細かい注文はある。「細かすぎる」と思われるかもしれないが、いくつか挙げてみよう。


◎「15年以上ぶり」?

48ページに「VWが四半期で赤字に転落するのは実に15年以上ぶりだという」との記述がある。この中の「15年以上ぶり」が引っかかった。「15年ぶり」ならばそう書くだろう。しかし「15年以上ぶり」だと、極端に言えば「50年ぶり」かもしれない。「何年ぶりかはっきりは分からないが、少なくとも過去15年は赤字になっていない」という話だろうか。そうならば、そう分かるように書いてほしかった。


◎答えは「ノー」だとすると…

例えば「この取引にリスクはないのだろうか」と質問した時に「答えは簡単。ノーだ」と返ってきたら、相手は「リスクがある」と言っているのだろうか。それとも逆だろうか。55ページの記事では、以下のように書いている。

【東洋経済の記事】

大手部品メーカーのボッシュは、インダストリー4.0の先頭を切って取り組んでいる企業の1つ。ドイツ南西部の大都市・シュトゥットガルトから200キロメートル離れたホンブルク工場で地道な研究を進めている。だが、VWの不正によって、インダストリー4.0の取り組みに影響が出るリスクはないのだろうか。

「答えは簡単。ノーだ」

4.0を担当する同社チーフエキスパートのヨハイム・フランゲンはそう言い切る。

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文脈から判断すると「答えは簡単。リスクはない」ということだろう。しかし、個人的には「答えは簡単。リスクあり」と読めてしまって、やや混乱した。コメント部分をちょっと工夫すれば、迷わずに済むのだが…。

付け加えると、上記の「同社」は「ボッシュ」を指しているのだろうが、形式的には「VW」になってしまう。この辺りは注意してほしい。


◎「盤石」それとも「混沌」?

67ページの記事では「不正発覚で、VWが積極拡大策の修正を迫られることは間違いない。世界ナンバー2のつまずきで自動車業界勢力図は混沌としてきた」と解説している。しかし、記事のタイトルは「混沌時代の自動車勢力図 VW陥落で『トヨタ一強』へ」となっていて、図にも「VWのつまずきでトヨタの一強体制が盤石に」と見出しを付けている。「トヨタ一強体制が盤石」ならば、あまり「勢力図は混沌としてきた」ようには思えない。


◎「ユーロ危機ショック」に見舞われている?

ドイツは今、3つのショックに見舞われている」との書き出しで始まる76ページの記事も気になった。「3つのショック」については「債務危機以降、解決の出口が見えないユーロ危機。シリアを中心とした大量の難民の流入。そして、今回発覚したフォルクスワーゲン(VW)による排ガス不正問題だ」と列挙している。難民とVWはいいとしても、ドイツが現在「ユーロ危機のショック」に見舞われている感じはしない。ショックを「2つ」にして、「ユーロ危機の問題も完全解決には程遠い」などと付け加える形にした方が現状に即しているのではないか。


※色々と注文は付けたが、全体としての完成度は高い。記事の評価はB(優れている)。山田雄大デスク の評価を暫定でBとするほか、宮本夏実、山田徹也の両記者の評価をBで確定させる。中川雅博記者は暫定C(平均的)から暫定Bへ評価を引き上げる。

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