2015年11月6日金曜日

日経1面「郵政上場」解説記事 瀬能繁編集委員に問う(2)

瀬能繁編集委員が5日の日本経済新聞朝刊1面に書いた「官業脱却、市場が監視」について、引き続き疑問点を挙げていく。記事では「経営陣が求めていないお節介はやめろ」と言いながら「経営陣が求めていないお節介もやるべきだ」と訴えているように見える。つまり矛盾している。瀬能編集委員は具体的には以下のように書いている。
英彦山山頂(福岡県添田町) ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

官業の引力はなお強い。自民党はゆうちょ銀行への預入限度額を増やすよう求める。資産効率化をめざす経営陣が求めない提言は「お節介」に等しい。政治の介入で経営が迷走し時価総額が減れば郵政株の売却益を財源とする復興資金も足りなくなる。このねじれを政治はどうとらえるか。

過疎地が求める郵便局網の維持は切実な願いだが、法律でユニバーサルサービス(全国展開)義務を課す仕組みが正しいかは別問題だ。日本郵政自身が「(全国津々浦々の郵便局網は)大きな組織の基礎であり、国民の支持がある」(西室泰三社長)と考えている。民の工夫を生かす仕組みにしなければ草の根の改革も芽生えないだろう。

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預入限度額の引き上げに関して「経営陣が求めない提言は『お節介』に等しい」と断じ、「政治の介入で経営が迷走し時価総額が減れば郵政株の売却益を財源とする復興資金も足りなくなる」と訴えている。預入限度額の引き上げは規制緩和なので日本郵政にメリットがありそうな気もするが、取りあえず「経営陣が求めないお節介は控えるべき」との立場を受け入れてみよう。

すると「ユニバーサルサービス義務」の話と辻褄が合わなくなる。「日本郵政自身が『(全国津々浦々の郵便局網は)大きな組織の基礎であり、国民の支持がある』(西室泰三社長)と考えている」のならば、経営陣はユニバーサルサービス義務の見直しを求めてはいないのだろう。であれば、見直しは明らかな「お節介」であり、控えるべきとの結論になるはずだ。

しかし、実際は逆になっている。「過疎地が求める郵便局網の維持は切実な願いだが、法律でユニバーサルサービス(全国展開)義務を課す仕組みが正しいかは別問題だ」と瀬能編集委員は主張する。そして「民の工夫を生かす仕組みにしなければ草の根の改革も芽生えないだろう」と見直しの必要性を強調する。「経営陣が求めない提言はお節介に等しい」と言っていたのは、何だったのだろうか。「政治の介入で経営が迷走」すると困るのであれば、ユニバーサルサービス義務に関しても、経営陣が求めてこない限り政治が手を突っ込むべきではない。

そもそも「資産効率化をめざす経営陣が求めない提言は『お節介』に等しい」からと言って、預入限度額の引き上げという規制緩和を否定するのが、よく分からない。規制に守られている業界の主要企業が資産効率化を進めていた場合、「規制緩和は必要ありません」と経営陣が言えば規制緩和は控えるべきなのか。経営陣が求めていてもいなくても、市場全体あるいは社会全体にとってプラスになると思えれば、規制は緩和すべきだろう。

結局、瀬能編集委員には論理的に記事を構成する能力が欠けている。理屈に合わない記事を世に送り出しているのは、今回が初めてではない。社内でもかなりの数の人間がそのことに気付いているはずだ。なのに、編集局の幹部はなぜ瀬能編集委員に記事を書かせてしまうのだろうか。


※記事の評価はD(問題あり)。瀬能繁編集委員への評価もDを維持する。この評価については「ほとんど何も分析しない記事」を参照してほしい。

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