2015年11月30日月曜日

何のためのパリ取材? 産経 松浦肇編集委員への注文(1)

誰でも書けそうな話を改めて書かれると、カネを払って雑誌を読んでいるのが無意味に思えてくる。週刊ダイヤモンド12月5日号に松浦肇・産経新聞ニューヨーク駐在編集委員が書いていた「World Scope (from 米国)~ パリ同時テロの実行犯は 『ホーム・グロウン』型  根っこに国内政策の失敗」という記事は、その典型だ。
英彦山の登山道(福岡県添田町)
     ※写真と本文は無関係です

欧州のイスラム系移民」に関して「若者は就職難で失業率が高い。経済格差に対する不満がくすぶっている」ことが域内でテロリストを育てる温床になっていると松浦編集委員は分析する。分析が的外れとは言わない。しかし、その手の話はパリでのテロの発生後にテレビなどで「これでもか」と言うほど聞かされた。松浦編集委員も耳にしたり目にしたりしたはずだ。なのに、テロ発生から半月が経過した今頃になって、ありきたりな分析を披露するのはなぜか。

from 米国」とタイトルに付いているのに、米国関連の話がほとんど出てこないのもどうかと思うが、とりあえずは問わないでおこう。ただ、「11月13日夜にフランスで起きた同時多発テロ事件を取材するため、首都パリに数日間ほど滞在した」のならば、パリで取材したからこそ言える何かを語ってほしい。

現地取材に関しては「パリ検察の会見取材」しか出てこない。しかも、その中身が乏しい。「パリ検察の検事は計8カ所で起きた襲撃を時系列的に説明した。記者団が息をのんだのは、『フランス国籍の自爆テロ犯が存在した』というくだり。テロは『内なる脅威』が直接の引き金になったのだ」と松浦編集委員は綴る。

現地の情報として伝えられるのがこれだけならば、わざわざパリに出向く必要はない。例えば現地の一般市民に話を聞いて、何か感じたりはしなかったのか。「自分にしか伝えられないことは何なのか」を松浦編集委員にはもっと真剣に考えてほしい。

週刊ダイヤモンドの執筆陣には良い手本がいる。「金融市場 異論百出」というコラムを担当している東短リサーチ代表取締役社長の加藤出氏だ。このコラムでは加藤氏が海外出張で見聞した話がよく出てくる。それは現地に赴かなければ分からないような中身で、分析にも独自性がある。松浦編集委員にもぜひ見習ってほしい。

今回の記事には他にも問題を感じた。それらについては(2)で述べる。

※(2)へ続く。

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