2015年11月14日土曜日

編集部からの回答に残る気がかり 東洋経済「フォーカス政治」

週刊東洋経済11月14日号に載った「フォーカス政治~党内分権から官邸独裁へ 結党60年で自民党様変わり」という記事に関する問い合わせに対して、編集部からの回答があった。問い合わせにきちんと対応している点では改めて「さすが」と思わせてくれる。ただ、問題のある説明に対して反省が見えないのは気になった。

英彦山参道(福岡県添田町) ※写真と本文は無関係です
東洋経済とのやり取りは以下の通り。

【東洋経済への問い合わせ】

11月14日号の105ページの記事で、筆者の千田景明氏は自民党に関して「民主主義国の中では極めてまれな一党支配体制を築いた。(中略)『疑似政権交代』によって危機を乗り越えてきた」と書いた上で「衆院選を経た本格的な政権交代が起きたのは2009年のことだった」と説明しています。これだと「自民党の支配体制が確立した後、08年までは衆院選を経た本格的な政権交代はなかった」と解釈するしかありません。しかし、実際には1993年の総選挙を経て細川政権が成立し、自民党は下野しています。細川政権の成立を「衆院選を経た本格的な政権交代とは言えない」と結論付けるのは極めて困難です。

例えば「二大政党の間での本格的な政権交代が起きたのは2009年」となっていれば問題はありません。記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。説明に問題なしとの判断であれば、その根拠も教えてください。

【東洋経済編集部からの回答】

下記、お問い合わせいただきました内容について、筆者に代わりまして返信させていただきます。

1993年の細川政権の成立時は、自民党は議席数を減らしておらず(第1党を維持)、衆院選直前に自民党を離党した議員中心の新生党や新党さきがけが選挙後の連立工作に勝ったというものです。選挙前に連立、政権交代の枠組みを示していないことから、本格的な政権交代ではなかったと一般的に認識されています。

以上、よろしくお願いいたします。


【東洋経済編集部へ送ったメールの内容】

回答ありがとうございました。ただ、回答内容には疑問が残ったので、追加で思うところを述べてみます。

今回の記事では「衆院選を経た本格的な政権交代が起きたのは2009年のことだった」と書かれています。この場合、本格的な政権交代かどうかは「衆院選」を基準に判断していると考えるのが妥当です。細川政権の誕生が本格的な政権交代と一般に認識されているかどうかは、極端に言えばどうでもいい問題です。実際に私は最初の問い合わせで「例えば『二大政党の間での本格的な政権交代が起きたのは2009年』となっていれば問題はありません」と記しています。この書き方ならば、本格的な政権交代かどうかは、二大政党の間での政権交代だったかどうかで判断していると理解できます。

「第一党を維持」「選挙後の連立工作に勝った」「選挙前に連立、政権交代の枠組みを示していない」といったことを材料に「本格的な政権交代ではなかった」と判断しているのであれば、そう書くべきです。この記事を読んだ人が「確か細川政権の時に自民党は下野したはずだけど、あれは衆院選を経てなかったのか」と理解した場合、読者の読解力不足でしょうか。もちろん違います。今回の回答を見る限り、記事の書き方には大きな問題があったと断言できます。厳しく言えば誤りです。

例えば、「第一党が入れ替わる形での本格的な政権交代が起きたのは2009年のことだった」と書けば、文字数をそれほど増やさずに問題を解決できます。読者に誤った知識を与えるリスクもありません。しかし、今回のような書き方を反省なしで済ませてしまえば、自尊心は守れても記事の作り手としての進歩はありません。

私には助言することしかできません。今回の記事で読者に誤解を与えかねない説明はなかったのか、もう一度自問してみてください。自ずと答えは浮かび上がってくるはずです。


※記事の評価はD(問題あり)。筆者であるジャーナリストの千田景明氏の評価も暫定でDとする。

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