2015年9月8日火曜日

読む価値を感じない日経 川上穣記者の「スクランブル」

8日の日経朝刊マーケット総合1面に載った「スクランブル~しぼむリスク選好 乱高下、みえぬ『適正株価』」はツッコミどころの多い記事で、読む価値を感じなかった。筆者の川上穣記者はこの出来に満足なのだろうか。もし「ちゃんと書けた」と思い込んでいるならば、なかり危険だ。

記事の中身を見てから、具体的に問題点を指摘していこう。


【日経の記事】
スヘフェニンヘン(オランダ)の海岸近くにある教会
                 ※写真と本文は無関係です

「(8月は)元気のいい押し目買いが目立った。最近は慎重な押し目買いに変わった」。ある大手証券の首脳は個人投資家の変化をこう語る。顧客の個人全体ではいまだ買い越し。だが日経平均が2万円を割り込む場面で旺盛に買い向かったときの勢いはない

みずほ証券は世界の株式や債券、円の対ドル相場の予想変動率などをもとに「リスク選好指数」を算出している。指数が低いほどリスク回避が強まっていることを示す。この指数が、直近で65前後と欧州の債務問題に揺れた2012年6月以来の水準に下がった。米量的緩和の縮小懸念から日経平均が急落した13年5月の「バーナンキ・ショック」よりも「萎縮」の度合いは大きい。

代わって市場を席巻しているのが投機マネーだ。7日は2倍の値動きを目指す「日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」(日経レバ)の売買代金が約3300億円と断トツの首位。2位のトヨタ自動車の4倍近くを記録した。


まず、みずほ証券の「リスク選好指数」が日本株市場のリスク選好度を示しているのかどうか判断に迷う。前の段落で個人投資家に関して「日経平均が2万円を割り込む場面で旺盛に買い向かったときの勢いはない」と書いている流れからすると、「日本株のリスク選好指数」なのだろう。しかし、「世界の株式や債券、円の対ドル相場の予想変動率などをもとに」算出されていると聞くと、もっと幅広くリスク選好度を計っているようにも思える。この辺りはきちんと説明してほしかった。

仮に「日本株のリスク選好指数」だとしても、「個人」に限っていないならば、この指数だけで「個人投資家のリスク選考が急速にしぼんでいる」とは断定できない。海外株なども含む幅広いリスク選好指数ならば、なおさらだ。次の段落では、さらに疑問が膨らむ。

「(個人投資家に)代わって市場を席巻しているのが投機マネーだ。7日は2倍の値動きを目指す「日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」(日経レバ)の売買代金が約3300億円と断トツの首位」と川上記者は述べている。では、日経レバを取引しているのは誰なのか。

8月29日の日経の記事では「値動きが通常の株価指数よりも大きい『レバレッジ型』のETF(上場投資信託)に個人投資家の資金が集中している」と出ていた。だとすると、日経レバの売買でかなりの部分は個人が担っているはずだ。個人が日経レバにつぎ込むマネーが「市場を席巻している投機マネー」だとすると、個人に関して「しぼむリスク選好」と言い切れるのか。「日経レバでも最近は個人の売買が急減していて、ヘッジファンドなどが主に取引している」といった状況があるのならば、そう説明すべきだ。

ついでに言うと「断トツの首位」にはダブり感がある。「断トツで2位」はあり得ないので「売買代金が約3300億円と断トツの首位」のくだりは「売買代金が約3300億円と断トツ」で十分だ。

記事の問題は上記の部分だけでは終わらない。記事の終わりの方では、リスク選好の低下とあまり関係のない話へ脱線したまま戻ってこない。


【日経の記事】

嵐のような値動きが続くなか、下値のメドはどこにあるのか。「日経平均で1万7000円近辺まで調整する可能性がある」(みずほ証券の三浦豊氏)。節目とみられた8月下旬の安値を先週末に下回り、「チャート上は二番底形成による本格回復が見込みにくくなった」(三浦氏)。半面、底堅い企業業績を考えれば「1万7500円を割り込むことは考えにくい」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘氏)との指摘もある。

カギを握るのは、16~17日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)だろう。世界的な金融市場の変調もあり、9月の利上げはひとまず見送りになるとの観測は根強い。

だが8月の米雇用統計は総じて良好な内容だった。「労働市場の引き締まりを考えれば、9月利上げは現実的な選択肢」(JPモルガン証券の足立正道氏)との声もある。市場が十分に織り込んでいない局面で利上げが決まれば、株価の下押しリスクが高まる。

中国では景気の下支えに向けた政府の財政出動の道筋もみえていない。日本企業の業績は底堅いものの、外部環境を見渡せば気がかりな材料が多い。投資家の憂鬱は深まるばかりだ。


これは単に「下値のメドはどうなるのか」「今後の注目要素は何か」を書いているだけだ。前半で論じた「個人のリスク選好」の話と直接の関係はない。こういう記事を読むと「安易に書いているなぁ…」という感想しか浮かんでこない。川上記者がまともな書き手を目指すのならば、こういうやり方はこれで最後にすべきだ。


※記事の評価はD(問題あり)、川上穣記者への評価も暫定でDとする。

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