2015年9月6日日曜日

初回から無理がある1面企画 日経「新産業創世記」(2)

4日の日経朝刊1面企画「新産業創世記~消える垣根(1) 常識は邪魔だ ロボットに感情/ヒトより安全に」について、さらに注文を付けていく。



ユトレヒト(オランダ)のドム塔 ※写真と本文は無関係です
◎「AI」だけが性能を左右?

【日経の記事】 

運転席に人は乗っているが、運転は人工知能(AI)がこなす。開発着手から5年。走行にぎくしゃくした動きはなく、熟練ドライバーのようなハンドルさばきだ。ヒトより安全に走行する日が迫る。

自動車産業への影響は計り知れない。クルマの性能を左右するのはエンジンの馬力でも燃費でもない。AIの賢さだ。約130年にわたって磨いた技術やノウハウに安住しては生き残れない。


自動運転が当たり前になれば、運転を制御するAIが重要になるのは分かる。しかし「クルマの性能を左右するのはエンジンの馬力でも燃費でもない。AIの賢さだ」という説明は明らかな誤りだ。記事の言う通りだとすると、AIの賢さが同じならば、どんなエンジンを積んでも性能は同じになってしまう。これが誤りなのは自明だ。例えば「AIの賢さが同じならば、軽自動車でもレーシングカーと互角のレースができる」と言われて、信じる人がいるだろうか。

8、9ページの特集も気になる部分が目立った。中山淳史編集委員の記事について指摘しておく。


◎「1つ」で収まってる?

【日経の記事】

産業も社会も当然、大きく変わる。1つは企業の成長力、スピード、変革力、市場の期待感だ自動運転に必須とされる電気自動車とソフトウエア技術を豊富に持つ新興のテスラ・モーターズは株式時価総額が3兆円台後半に拡大し、日産自動車に迫りつつある。


上記のくだりで中山編集委員が言う「1つ」とは「企業の成長力、スピード、変革力、市場の期待感」なのだろう。しかし、個人的には「4つ」に見える。

自動運転には電気自動車が「必須」との解説も疑問だ。ガソリン車と電気自動車を比べると電気自動車の方が自動運転に向いているらしいが、ガソリン自動車での自動運転も実用化に向けて研究が進んでいるらしい。なのに「必須」と書くのは、無理がある。そもそも1面の記事では「クルマの性能を左右するのはエンジンの馬力でも燃費でもない。AIの賢さだ」と書いていた。「エンジン」という表現からして、ガソリン車なども自動運転の対象に想定していると思える。


◎いくら何でも…

【日経の記事】

産業や金融の世界では新旧や大小、国境は関係がなくなる。


いくら何でも言いすぎだろう。本気でこんなことを信じているのだろうか。だとしたら、中山編集委員に聞いてみたい。「もうすぐ世界中から関税が消えますか?」「近い将来、世界中の誰でも北朝鮮で自由にビジネスができるようになりますか?」「カジノを運営する会社が世界中で自由にカジノを作れるようになる日は、目前に迫っていますか?」

記事が言い過ぎでないのならば、答えは全て「イエス」になるが…。


※特集面を含め記事の評価はD(問題あり)とする。中山淳史編集委員の評価もDを据え置く。

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