2015年9月5日土曜日

可能性は感じるが…日経 川瀬智浄記者の「会社研究」

5日の日経朝刊投資情報面に出ていた「会社研究~ドンキホーテホールディングス 攻守自在で19期連続最高益」を書いていた川瀬智浄記者には、書き手としての可能性を感じた。全体の流れがスムーズで、書き出しから結びまで淀みなく展開させている。ただ、残念ながら説明の粗さが目立つ。そこを改善すれば、かなり優れた書き手になれるはずだ。

今回の記事に関しては、気になる部分を日経に問い合わせた。こちらが何か見落としている可能性もあるが、回答は期待できないので、記事に問題があるとの前提で問い合わせの内容を紹介する。

(注) 驚くべきことに、下記の問い合わせに対して回答が届いた。「日経に何が? 『問い合わせ 無視せず回答』の衝撃」を参照してほしい。 

ブリュッセル(ベルギー)のグラン・プラス 
              ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

拡大路線は続く。ドンキHDは2020年に500店体制で売上高を現状の1.5倍の1兆円とする目標を掲げる。上積みを担うのが「ポストGMS(総合スーパー)」と呼ぶ新業態。2千坪程度とGMSの中型店と同程度の広めの店舗に、コンビニのように購買頻度の高い商品を詰め込んだ作りの店で、現在の4店舗から200店舗程度まで拡大できるとみる。

名前が示す通り、狙うのは流通大手の本丸、GMSの顧客層の奪取だ。布石になっているのが「飛躍のきっかけとなった」(ドイツ証券の風早隆弘氏)07年の中堅スーパー、長崎屋の買収。生鮮食品の販売が増え、来店頻度の向上や家族客への浸透につながった。


【日経への問い合わせ】

記事ではドンキホーテHDに関して「上積みを担うのが『ポストGMS(総合スーパー)』と呼ぶ新業態。2千坪程度とGMSの中型店と同程度の広めの店舗に、コンビニのように購買頻度の高い商品を詰め込んだ作りの店で、現在の4店舗から200店舗程度まで拡大できるとみる」と書いてあります。電子版のインタビューによると、この「新業態」は「NEW MEGA ドンキホーテ」のようです。しかし、同社の決算資料を見ると「NEW MEGA」の店舗数は41となっており、記事の「現在の4店舗」と食い違います。記事の店舗数は誤りと考えてよいのでしょうか。記事の説明で正しいとすれば、その根拠も併せて教えてください。


上記のくだりだけでも、説明の粗さが窺える。まず、「『ポストGMS(総合スーパー)』と呼ぶ新業態」の具体名が出てこないのは感心しない。「電子版を見れば分かる」と言いたいのかもしれないが、読者の全員が電子版を契約しているわけではないし、この記事だけできちんと伝わるように書くべきだ。

布石になっているのが『飛躍のきっかけとなった』(ドイツ証券の風早隆弘氏)07年の中堅スーパー、長崎屋の買収」という説明も引っかかった。長崎屋の買収をきっかけに飛躍したのが「新業態」だとすると、4店舗では少なすぎる。「ドンキホーテ全体が長崎屋の買収をきっかけに飛躍した」という可能性も考えてみた。しかし、ドンキホーテのグループ全体で長崎屋買収をきっかけに生鮮食料品を扱うようになったとは考えにくい。結局、この辺りはどう理解すべきかよく分からなかった。何か説明を省いている部分があるはずだ。

他にも雑な面はある。列挙してみよう。


◎初出から「インバウンド」?

インバウンド消費を手掛かりに、ドンキホーテホールディングスの株価は昨秋から7月の高値までに約2倍になった」と書いているが、初出から説明なしに「インバウンド」を使うのは避けてほしい。それほど定着している言葉とは思えない。日経の他の記事では「海外からの訪日客(インバウンド)」といった表記をしているはずだ。


◎いきなり「粗利」?

店頭の約4割は季節商品など非定期仕入れの商品が占める。その粗利は約3割と高く、利益の源泉になる」との説明も雑だ。少なくとも初出では「粗利益率」と書いてほしい。それに「約3割と高く」と言われても、どの程度が「普通」なのか、多くの読者は分からないはずだ。ドンキ全体の粗利益率と比較するといった工夫が欲しい。


◎都道府県は分かるように…

13年11月に開店したドン・キホーテ東雲店はわずか11カ月で閉店した」と書いてあっても、どこにある店か読者の多くは分からないだろう。「ドン・キホーテ東雲店(東京・江東)」などと表記する配慮はあっていい。


※記事の評価はC(平均的)とする。川瀬智浄記者に関しても暫定でCと評価する。

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