2019年9月7日土曜日

「修会長」には「資本提携がゴール」と日経ビジネス奥貴史記者は言うが…

日経ビジネス9月9日号に載った「時事深層 INSIDE STORY~スズキ・トヨタ、難産の末の資本提携 修会長がたどり着いた安寧の地」という記事は説得力に欠ける内容だった。
金華山黄金山神社(宮城県石巻市)※写真と本文は無関係

トヨタ自動車とスズキが8月28日、資本提携で合意した」ことを受けて奥貴史記者は「資本提携がゴールとの鈴木修会長の思いは揺るがなかった。大手の庇護(ひご)を求めた38年間の紆余曲折の末、修会長は90歳を目前にやっと安寧の地にたどり着いた」と解説している。しかし「ゴール」とも「安寧の地」とも言い切れない気がする。

記事によると「『中小企業のおやじ』を自任する修会長は、生き残りには大手の傘下に入ることが必要というのが持論」らしい。ならば「資本提携がゴール」とは考えにくい。今回の「資本提携」でトヨタはスズキ株の「4.9%」を握るに過ぎない。何を以って「傘下」とするか明確な基準はないとしても「4.9%」の出資を受け入れただけで「傘下に入る」と考える人は稀だろう。鈴木の経営が傾いた時にトヨタからの「庇護」を受けられる保証もないはずだ。

なぜ「安寧の地」と言えるのかも奥記者は教えてくれない。記事でも触れているように、スズキはゼネラル・モーターズ(GM)やフォルクスワーゲン(VW)と資本提携をしながら、それらを解消している。

「GMやVWとは違い、トヨタとの提携関係は安定する。スズキが経営危機に陥ったらトヨタは必ず助ける」と奥記者は確信しているのだろう。でなければ「やっと安寧の地にたどり着いた」「長い長いドラマの最終章をようやく迎えた」とは書かないはずだ。

しかし、両社の関係に詳しくない者から見れば「二度あることは三度あるのでは?」と思てしまう。GMやVWからの出資は20%程度に達したようだが、今回は「傘下」と呼ぶのが苦しい「4.9%」。スズキの独立性は十分に保たれているのではないか。裏返せば、ケンカ別れの可能性も十分にある。「安寧の地」かどうかを見極めるには、もう少し時間が必要だろう。

付け加えると「(スズキはかつて)GMの追加出資を受け入れ完全にGM傘下に入った」と書いているのも引っかかった。記事に付けた表を見ると、2000年に「GMが出資比率を20%に引き上げ、事実上、スズキはGM傘下に」となっている。

明確な基準がないのは前に述べた通りだが、個人的には「出資比率を20%に引き上げ」ただけならば「GM傘下」とは感じない。「完全にGM傘下に入った」とまで言うならば、子会社化は要ると思える。


※今回取り上げた記事「時事深層 INSIDE STORY~スズキ・トヨタ、難産の末の資本提携 修会長がたどり着いた安寧の地
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00315/


※記事の評価はC(平均的)。奥貴史記者への評価は暫定D(問題あり)から暫定Cへ引き上げる。

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