2019年9月27日金曜日

「トランプ流の通商政策」最初の成果は日米?米韓? 日経 菅野幹雄氏の矛盾

日米貿易協定は、意外にも2国間の取引(ディール)を振り回すトランプ流の通商政策が成果を表す最初の例になる」と日本経済新聞の菅野幹雄氏(肩書は本社コメンテーター)は言う。一方で同じ記事の中で「1月に発効した米国と韓国の自由貿易協定の改定を除き、米政権は農家や産業界に具体的な果実を与える通商合意を実行できていない」とも書いている。
東北大学 片平キャンパス(仙台市)※写真と本文は無関係

トランプ流の通商政策が成果を表す最初の例」は「日米貿易協定」なのか。それとも「米国と韓国の自由貿易協定の改定」なのか。以下の内容で問い合わせを送ってみた。


【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 本社コメンテーター 菅野幹雄様

26日付で電子版に載った「Nikkei Views~日米、首の皮一枚の自由貿易 対象絞った『ミニ合意』」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは冒頭の説明です。菅野様は以下のように書いています。

安倍晋三首相とトランプ米大統領が合意した日米貿易協定は、意外にも2国間の取引(ディール)を振り回すトランプ流の通商政策が成果を表す最初の例になる。対象を絞る『ミニ合意』は功を急ぐトランプ政権への格好の助け舟だが、多国間の枠組みに基づく世界貿易ルールを傷つけるリスクもある。首の皮一枚の自由貿易体制をどう守るかが、日本の宿題だ

これを信じれば「トランプ流の通商政策が成果を表す最初の例」は「日米貿易協定」のはずです。しかし記事を読み進めると「1月に発効した米国と韓国の自由貿易協定の改定を除き、米政権は農家や産業界に具体的な果実を与える通商合意を実行できていない」との記述があります。

米国と韓国の自由貿易協定の改定」が「農家や産業界に具体的な果実を与える」ものならば「トランプ流の通商政策が成果を表す最初の例」は「米国と韓国の自由貿易協定の改定」ではありませんか。

日米貿易協定は、意外にも2国間の取引(ディール)を振り回すトランプ流の通商政策が成果を表す最初の例になる」との説明は誤りと考えてよいのでしょうか。あるいは「米国と韓国の自由貿易協定の改定」に関する説明が間違っているのでしょうか。いずれにも問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

付け加えると「首の皮一枚の自由貿易体制をどう守るかが、日本の宿題だ」との説明も引っかかりました。

自由貿易」が「貿易取引に対する数量制限、関税、輸出補助金などの国家の干渉を廃止し、自由に輸出入を行うこと」(日本大百科全書)だとすれば、現状は「自由貿易体制」とは程遠いはずです。しかし「首の皮一枚の自由貿易体制をどう守るかが、日本の宿題だ」と菅野様は書いているので「現状はギリギリで自由貿易体制の範囲内」との判断なのでしょう。

関税」などの「国家の干渉」は当たり前にあり、米中の貿易戦争まで起きているのに「自由貿易体制」の枠内には収まっている。しかし、「首の皮一枚」でつながっているだけで、わずかな状況変化で「自由貿易体制」ではなくなってしまう--。

だとすると「自由貿易」や「自由貿易体制」とは何かとの疑問が湧きます。まずはここを明確にすべきです。何を以って「自由貿易体制」とするのか明確ではないのに「首の皮一枚の自由貿易体制をどう守るかが、日本の宿題だ」と訴えても意味はないでしょう。

問い合わせは以上です。御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社の一員として責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇


追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「Nikkei Views~日米、首の皮一枚の自由貿易 対象絞った『ミニ合意』
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50220310W9A920C1I00000/?nf=1


※記事の評価はD(問題あり)。菅野幹雄氏への評価もDを据え置く。菅野氏については以下の投稿も参照してほしい。

「追加緩和ためらうな」?日経 菅野幹雄編集委員への疑問
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_20.html

「消費増税の再延期」日経 菅野幹雄編集委員の賛否は?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_2.html

日経 菅野幹雄編集委員に欠けていて加藤出氏にあるもの
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/08/blog-post_8.html

日経「トランプショック」 菅野幹雄編集委員の分析に異議
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_11.html

英EU離脱は「孤立の選択」? 日経 菅野幹雄氏に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/03/blog-post_30.html

「金融緩和やめられない」はずだが…日経 菅野幹雄氏の矛盾
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/blog-post_16.html

トランプ大統領に「論理矛盾」があると日経 菅野幹雄氏は言うが…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/blog-post_24.html

日経 菅野幹雄氏「トランプ再選 直視のとき」の奇妙な解説
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_2.html

MMTの否定に無理あり 日経 菅野幹雄氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/mmt-deep-insight.html

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