2017年11月20日月曜日

「脳梗塞死亡率」の分析が不十分すぎる日経「砂上の安心網」

20日の日本経済新聞朝刊社会面に載った「砂上の安心網~脳梗塞死亡率 県内で格差  予防・治療体制の違いが影響?」という記事はデータ分析が不十分なまま「脳梗塞死亡率」と「予防・治療体制」の関連を示唆しており、読者に誤解を与えかねない。日経はこの手のデータを最近よく出してくるが、あまり意味がない。
国道210号線沿いのコスモス(福岡県うきは市)
         ※写真と本文は無関係です

まず最初の段落を見ていこう。

【日経の記事】

脳梗塞で亡くなる人の割合を人口1万人以上の市区町村で比較したところ、男性で6県、女性で14道府県の県内の格差が3倍を超えていることが18日、日本経済新聞社の調査で分かった。格差が最も大きかったのは男性は佐賀で3.73倍、女性は沖縄で5.11倍だった。高血圧や動脈硬化などを防ぐ予防対策のほか、治療体制の違いが影響している可能性がある


◎「可能性がある」のは否定しないが…

脳梗塞死亡率」に関して「高血圧や動脈硬化などを防ぐ予防対策のほか、治療体制の違いが影響している可能性がある」のは否定しない。「可能性」はゼロではないだろう。問題は本当に「影響している」かどうかだ。見出しでは「予防・治療体制の違いが影響?」とクエスチョンマークを付けているし、記事でも「可能性がある」と書いているだけなので、逃げは打っている。だが、今回のような記事を載せるのであれば、「治療体制の違いが影響している」のではと思わせる材料が欲しい。それが見当たらない。

記事では「県内で格差」が大きかった佐賀県と沖縄県について以下のように記している。

【日経の記事】 

男性で最も格差が大きかった佐賀県では白石町が152.6と全国平均(100)の約1.5倍。最も低い基山町は40.9で全国平均の半分以下だったため県内格差は3.73倍に達した。

日本経済新聞社が電子版に作成した「全市区町村マップ」をみると、基山町を含む佐賀県の北東部は鳥栖市なども死亡率が低く、基山町と隣接する福岡県の南西部も死亡率が全体的に低いことが分かる。一方、脳卒中の専用の病室が集中する佐賀市は102.6でほぼ全国平均だった

女性で県内格差がトップだった沖縄県は死亡率は全体に低いものの最も高い県中部の金武町が107.8だったのに対し、県南部の北中城町が21.1と全国平均より8割ほど低く、県内格差は大きくなった。

脳梗塞の治療は発症から4時間半以内ならば脳の血管内に詰まった血栓を溶かす血栓溶解剤(t―PA)が効果的だが、迅速に検査して投与できる医療機関が近くにない地域もある。脳梗塞は高血圧や動脈硬化などが引き金になるため、予防対策が充実していれば治療体制を整えた医療機関が近くになくても死亡率は低くなる


◎ここから何か読み取れる?

佐賀県や沖縄県に関して「脳梗塞死亡率」と「予防・治療体制」に関連があると解釈できるデータは何も出てこない。両県で関連があったとしても、それを全体に結び付けてよいとは限らないし、相関関係があるからと言って因果関係があるとも断定できない。
桜滝(大分県日田市) ※写真と本文は無関係です

だが、そもそも両県で「脳梗塞死亡率」と「予防・治療体制」に関連があると思わせるデータ自体が記事に全く出てこない。なのに「予防・治療体制の違いが影響?」と見出しを付けて関連を匂わせるのは頂けない。

その上、上記のくだりでは「予防対策が充実していれば治療体制を整えた医療機関が近くになくても死亡率は低くなる」と「予防対策」と「死亡率」の因果関係を断定している。そう言える根拠を本当に持っているのか疑問が残る。

佐賀県に関しては「脳卒中の専用の病室が集中する佐賀市は102.6でほぼ全国平均だった」とも述べている。これはどちらかと言えば「脳梗塞死亡率」に「治療体制の違いが影響していない可能性がある」と示唆するデータではないのか。

今回のような記事を世に出すならば、「予防・治療体制」の充実度と「脳梗塞死亡率」に相関関係があるのかどうかは分析すべきだ。それを怠ったか、あえて読者に見せていないとすれば、今回の記事には読む価値がない。


※今回取り上げた記事「砂上の安心網~脳梗塞死亡率 県内で格差  予防・治療体制の違いが影響?
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171120&ng=DGKKZO23669480Z11C17A1CR8000

※記事の評価はD(問題あり)。

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