2017年11月16日木曜日

「ピクセルワーカー」が魅力的に映らぬ日経未来学面の記事

16日の日本経済新聞朝刊未来学面に載った「ポスト平成の未来学 第1部 若者たちの新地平 AI時代の働き方~好きな職 好きな所で」という記事はそれほど悪い出来ではない。ただ、話の中心に据えた「ピクセルワーカー」が筆者の意に反して魅力的に映らないのは気になった。他にも引っかかるところがあったので、記事の最後に付いていた「ご意見や情報」を送るためのメールアドレスに以下の内容で意見を届けてみた。
平塚川添遺跡公園(福岡県朝倉市)
            ※写真と本文は無関係です

【日経に送った意見】

日本経済新聞社 若山友佳様 相馬真依様

16日の朝刊未来学面に載った「第1部 若者たちの新地平 AI時代の働き方~好きな職 好きな所で」という記事に関して、意見を述べさせていただきます。

まず「複数分野の仕事をプロジェクト単位で組み合わせて働く『ピクセルワーカー』ともいえる存在」として紹介した「石川陽子さん(42)」についてです。筆者は石川さんの働き方を魅力的なものとして取り上げていますが、そうは思えませんでした。

記事によると、石川さんは「週半分は暮らす実家のある千葉県館山市、半分は顧客と会うため東京」で過ごすようです。「11月初旬、午前10時。私(29)は6時半発の高速バスで東京へ来た石川さんと合流」との記述から判断すると、自宅を出発してから東京で仕事を始めるまでに4時間は経っているようです。これを「週半分」もやるのは大変です。石川さんの通勤時間は、少なめに見ても往復で6時間程度にはなるはずです。

1日の通勤費用を約5000円とすると、通勤だけで月に7万~8万円に上ります。東京に宿泊するにしても費用がかかります。さらに「数カ月に1度ベトナムを訪れる」とすれば、交通費・宿泊費は年間で100万円を軽く超えるでしょう。それで「会社員の時より収入は減った」となると、状況はかなり厳しそうです。

移動のために多大な労力とコストをかける石川さんは「長時間の移動も厭わないでバリバリ働くキャリアウーマン」に見えます。だったら、高収入は確保したいところです。

次に「総務省の調査では、16年の就業者数に占める転職者比率は4.8%で増加傾向。転職も副業も当たり前になる日は遠くない」との説明についてです。「転職」が「当たり前になる日」は既に訪れています。日本では年間300万人以上が転職しているのですから、「転職」を特殊なことと捉える人はかなり少数派ではないでしょうか。
国道210号線沿いのコスモス(福岡県うきは市)
           ※写真と本文は無関係です

1年間働きながら世界12カ国を旅するプログラム『リモートイヤー』」の説明にも気になる点がありました。このプログラムに触れた後で筆者は「この日40人以上と出会うなか、これからはどんな仕事が必要とされ、私にはピクセルワーカーとしてどんな可能性があるだろうかと考えた」と記しています。

この書き方だと「プログラムの参加者=ピクセルワーカー」だと受け取れます。しかし、違うのではありませんか。記事では、プログラム参加者の「ジェシカ・イエーガーさん(26)」について「勤める米ソフトウエア会社に合わせ、日本時間の夕方から翌朝までが『オフィスアワー』」と説明しています。だとすると、会社員としての仕事を札幌でやっているだけだと推測できます。これでは「ピクセルワーカー」とは言えません。

2050年 オフィスが消える」という関連記事に関しても意見があるのですが、長くなってきたので別に送ります。

◇   ◇   ◇

※今回取り上げた記事「第1部 若者たちの新地平 AI時代の働き方~好きな職 好きな所で
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171116&ng=DGKKZO23514330V11C17A1TCP000

※記事の評価はC(平均的)。若山友佳記者と相馬真依記者への評価も暫定でCとする。「ポスト平成の未来学 第1部 若者たちの新地平」については以下の投稿も参照してほしい。

「シェア経済」に食傷を感じる日経「ポスト平成の未来学」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/11/blog-post_9.html

日経 未来学面「2050年 オフィスが消える」に足りないもの
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/11/2050.html

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