2017年11月13日月曜日

「アクティブ型」擁護が恣意的な東洋経済「いま買える株・投信」

アクティブ型の投資信託を有望な投資対象として紹介しようとすると、論理構成に無理が生じやすい。週刊東洋経済11月18日号の特集「いま買える株・投信」に出てくる「アクティブ投信で好成績のファンドを探す」という記事もその1つだ。筆者で金融ジャーナリストの鈴木雅光氏は以下のように書いている。
大刀洗平和記念館(福岡県筑前町)のMH2000ヘリコプター
              ※写真と本文は無関係です

【東洋経済の記事】

では、インデックスファンドを超えるアクティブファンドを選ぶことは本当にできないのだろうか。

そこで、ちょっとした検証を行ってみた。


対象は日本株式を組み入れて運用する投資信託だ。このうち、SMA(一任契約のラップ口座)やDC(確定拠出年金)向けのファンドは除外し、運用期間が5年以上、純資産総額が30億円以上を条件として、5年騰落率でランキングを作成してみた(下表)。2017年9月末時点の、12年9月末との比較による騰落率でランキングしてある。

トップは528.8%の騰落率となった「ジャパン・テクノロジー・ファンド」で、参考値にした国内株式指数ファンドの147.7%を大きく上回る。

掲載してはいないが、16年9月末、15年9月末、14年9月末でも、それぞれ5年前と比較し(たとえば16年9月末の場合は11年9月末との比較)、インデックスファンドの成績を上回るものの中から、上位20本をランキングした。もし14年9月末から1年ごとのラップタイムで、つねに上位に入っているアクティブファンドがあったとしたら、かなり優れたファンドであるといえる

はたして、そのようなアクティブファンドがあったのかというと、実はあった。17年9月末の騰落率で2位に入った、アセットマネジメントOneの「DIAM新興市場日本株ファンド」と、3位に入っているSBIアセットマネジメントの「中小型割安成長株ファンド ジェイリバイブ」がそれだ。この2つのファンドは、17年9月末の過去5年騰落率ランキングでは2位と3位だが、14年9月末、15年9月末、16年9月末の3つの時点のランキングは、年によって順序が入れ替わったものの1位と2位になっている。


◎答えになってる?

インデックスファンドを超えるアクティブファンドを選ぶことは本当にできないのだろうか」という問いに対する単純な答えは「できる場合もある」だ。問題はそうしたファンドを過去の実績から高確率で選び出せるのかだ。例えば「どの時期を取っても、過去5年の上昇率5位以内のファンドを選べば、その後の5年間も90%以上の確率でインデックスファンドを上回る成績が残せる」といった法則が成り立つのならば、アクティブファンドは有望な投資対象と言える。
西鉄甘木駅(福岡県朝倉市)※写真と本文は無関係です

だが、記事の「検証」では何とも言えない。「DIAM新興市場日本株ファンド」と「中小型割安成長株ファンド ジェイリバイブ」が過去の実績で「かなり優れたファンド」だとしよう。だが、それが実力なのか運なのか分からない。

例えば、100人以上が参加する年に1度の「じゃんけん大会」で5年連続ベスト8に入っている人がいるとする。この人は今後も上位に入ってくる可能性が高いと言えるだろうか。答えは「分からない」だ。じゃんけんに関して特殊なノウハウを身に付けているのかもしれないが、運が良かっただけかもしれない。上記の2つのファンドも同様だ。

さらに言えば、記事で紹介したデータから「DIAM新興市場日本株ファンド」と「中小型割安成長株ファンド ジェイリバイブ」を「かなり優れたファンド」と評価するのは問題がある。

鈴木氏は「2017年9月末時点」だけでなく「14年9月末、15年9月末、16年9月末」で見ても好成績だから「かなり優れたファンド」だと結論付けている。だが、比較しているのがいずれも「5年前と」であるのには注意が必要だ。

13年10月~14年9月の上昇率が非常に高い場合を考えてみよう。「5年前」との比較であれば、13年10月~14年9月の成績は「14年9月末」「15年9月末」「16年9月末」「17年9月末」という4時点全てに関係してくる。記事には「毎年、好成績のファンドも」という小見出しが付いているが、4時点の好成績が13年10月~14年9月の上昇率の高さによってもたらされている場合、「毎年、好成績」とは限らない。

毎年、好成績」のファンドを探したいのならば、単年ベースで連続して上昇率上位のファンドがあるかどうか調べてみれば済む。それはやらないで(やってみたものの上手くいかなかったのかもしれなが…)、「5年前と比較」を繰り返すという恣意的とも言えるデータの使い方に、今回の「検証」の怪しさを感じる。

記事の中で鈴木氏は「『長期で見た場合、アクティブ型はインデックス型のファンドに勝てない』というのが、昨今の投資信託業界では常識となっている」とも書いている。その「常識」を否定するために今回のようなデータを用いてみたものの、成功したとは言い難い。「好成績を残すアクティブファンドを事前に見つけ出す特別なノウハウを編み出した」と確信できる人は別だが、そうではない一般の投資家が手数料の高さを受け入れてアクティブファンドに資金をつぎ込むべき理由はやはり見当たらない。


※今回取り上げた記事「アクティブ投信で好成績のファンドを探す

※記事の評価はD(問題あり)。鈴木雅光氏への評価も暫定でDとする。

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