2016年12月15日木曜日

大塚家具に負債なし?週刊ダイヤモンド泉秀一記者の誤り

週刊ダイヤモンド12月17日号の「Close Up~大塚家具が業績悪化で窮地 因縁の土地に売却話も浮上」という記事に、誤りと思える記述があった。大塚家具について「負債はない」と言い切っているが、どうも怪しい。以下はダイヤモンド編集部に送った問い合わせの内容だ。
筑後川(福岡県朝倉市・うきは市)

【ダイヤモンドへの問い合わせ】

週刊ダイヤモンド12月17日号の「Close Up~大塚家具が業績悪化で窮地 因縁の土地に売却話も浮上」という記事についてお尋ねします。筆者の泉秀一記者は大塚家具について「勝久前会長の時代から無借金経営を続けているため負債はない。自己資本比率は73%と高いので、銀行が資金を借す可能性はある」と記しています。しかし、本当に「負債はない」のでしょうか。

同社の決算短信で今年9月末の数字を見ると、「負債合計」が94億円余りとなっています。短信を信じれば、負債はあります。そもそも「自己資本比率は73%」と泉記者も書いています。ここからも27%分の「負債」があると判断できます。「無借金経営を続けているため負債はない」との説明は「無借金経営を続けているため有利子負債はない」の誤りではありませんか。

記事の説明が間違っているのであれば、訂正記事の掲載をお願いします。「負債はない」で正しいとの判断であれば、その根拠を教えてください。御誌では、読者からの間違い指摘を握りつぶし、誤りを闇へと葬り去る対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアとして責任ある対応を心がけてください。

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ダイヤモンドの体質を考えれば、回答はないはずだ。なので記事の説明は誤りと推定するしかない。

この記事には他にも気になる点があった。いくつか指摘してみる。

◎「赤字を止血」?

【ダイヤモンドの記事】

大塚家具は16年12月期の第3四半期までの9カ月(1~9月)累計で41億円の純損失を計上した。10月以降も業績は伸びず、11月の店舗売上高は対前年同月比59%。前年同時期に実施したセールの影響を考慮しても落ち込みは大きく、赤字を止血できずにいる。

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赤字を止血」が気になる。言いたいことは分かるが不自然な日本語だ。この場合「」が「赤字」を表しているのでダブり感が出てしまう。「赤字を止められずにいる」などとした方がいい。

ついでに言うと「対前年同月比59%」の「」は省ける。また、「前年同月比59%」よりも「前年同月比41%減」の方が個人的には読みやすい。簡潔に書くという点では「前年同時期に実施したセール」の「実施した」も要らない。「前年同時期のセール」で十分に伝わるはずだ。

記事には「土地売却は赤字を補填することだけが目的ではない」という文もあった。これも「土地売却は赤字の補填だけが目的ではない」で事足りる。泉記者には「できるだけ簡潔に記事を書く」という意識を持ってほしい。

大塚家具の経営戦略に関する分析にも疑問が残った。


◎「勝久前会長」の路線が正解?

【ダイヤモンドの記事】

大塚家具の業績はなぜこれほどまでに落ち込んだのか。大きな理由は二つある。

一つは中途半端な価格戦略だ。家具業界は、低価格商品を強みとするニトリやスウェーデンのイケアの勃興によって、高級品と普及品への二極化が進んだ。勝久前会長は、そうした変化の中にあっても高級品路線を貫いてきた。

一方、久美子社長はニトリやイケアに対抗すべく、従来よりも低価格な商品を増やし、全方位戦略を敷いている。そのため、「誰がターゲットなのか」がぼやけてしまった。

より大きな理由は二つ目にある。安売りセールによる「大塚家具ファン」の心離れだ。

大塚家具は創業以来、問屋を通さないという流通形態を取ることで百貨店などの競合と差別化し、高級品をできるだけ安く販売するモデルを築いてきた。

1993年以降は、商品は最初からできる限り低価格に抑え、どれだけ客に頼まれても「原則、値引きはしない」をおきてにした。客が愛想を尽かして帰っても、百貨店などで同じ商品の価格を比較して、大塚家具に戻ってくるケースが多かったという。それ故、リピーターが多いのが特徴だった。

安易なセールは、このモデルでつかんだファンからの信頼を裏切ることになる。しかし、15年4~5月に開催した「大感謝セール」以降、久美子社長体制ではこれまでに計4回のセールを実施した。

“禁断の果実”に手を出した結果、15年3月の株主総会以降、セール実施月を除くと、店舗売上高が前年実績を超えた月はほとんどない。結局、業績悪化に拍車が掛かるばかりとなった。

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上記の解説で気になるのは「勝久前会長の戦略が正解で、それを軌道修正した久美子社長に問題がある」と受け取れる点だ。勝久前会長が指揮を執っていた時期は収益が伸びていたのに、久美子社長になってからダメになったのならば分かる。

だが、勝久前会長のやり方が行き詰まったから久美子社長の登場となったのではないのか。勝久前会長は「高級品路線を貫いてきた」し、「どれだけ客に頼まれても『原則、値引きはしない』をおきてにした」のだろう。その戦略は久美子社長の登場までは当たっていたのか。泉記者の書き方だと、勝久前会長の戦略には何の問題もなかったかのようだ。

過去10年に限って言えば、どちらの経営戦略も失敗だったのではないか。「久美子社長の失敗の方が酷い」と描写するならば分かる。だが、勝久前会長を一方的に持ち上げるような説明には納得できなかった。


※記事の評価はD(問題あり)。泉秀一記者への評価はDを維持する。泉記者については以下の投稿も参照してほしい。


「ザ・モルツ大失速」? 週刊ダイヤモンド泉秀一記者に問う(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_10.html

「ザ・モルツ大失速」? 週刊ダイヤモンド泉秀一記者に問う(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_11.html

週刊ダイヤモンド「美酒に酔う者なきビール業界」への疑問
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/07/blog-post_21.html


追記)結局、回答はなかった。

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