2016年11月16日水曜日

期待外れの東洋経済「日経&FTは世界で戦えるか」

週刊東洋経済11月19日号の特集「そのメディアにおカネを払いますか?」の中で最も期待して読んだのが「デジタルで先行する新聞同士が統合~日経&FTは世界で戦えるか」という記事だ。そして、期待は裏切られた。「日経曰く『読者数で世界最大の経済メディア』は、激変する世界のメディアビジネスを勝ち抜けるだろうか」と冒頭で問題提起しておきながら、筆者であるジャーナリストの小林恭子氏は、勝ち抜けるかどうかをほとんど論じない。

競秀峰(大分県中津市) ※写真と本文は無関係です
英国在住だからなのか、記事の前半はFTがどう編集作業を進めているのかという紹介に終始している。終盤でいよいよ本題に入るかと思いきや、完全に肩透かしに終わる。その辺りを見てみよう。

【東洋経済の記事】

FTのアジア・太平洋地域マネジング・ディレクター、アンジェラ・マッカイ氏は、日経傘下に入った利点として「尊敬する、価値観を共有する企業が所有者兼ビジネス上のパートナーになったこと」を挙げる。「FTは英国、欧州、米国に展開したが、日経は主にアジア・太平洋地域にリーチする。共同イベントの拡大など、この地域で収益を上げる方策を一緒に考えている。日本で購読者を増やすための対策も17年に実現させたい」(マッカイ氏)。

「競合相手はすべてのメディア。『デジタルの爆発』が起きている」とマッカイ氏。FTの競合がニューヨーク・タイムズやウォールストリート・ジャーナルだけだと考える時代は終わっているという認識だ。

近い将来、新聞メディアは「次第に縮小してゆくだろう」とマッケイブ氏(注:英メディア調査会社エンダースのCEO)は予想する。「経費カットでしのぐやり方は通用しなくなってきた。複数の新聞が印刷機、経理部、営業部などを共有するのも手だ。既存のビジネスを維持するのではなく、ゼロベースでニュースのコンテンツ作りを考えるべき」(マッケイブ氏)。生き残りのためのバトルが来年も続きそうだ。

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上記の説明で「日経&FTは世界で戦えるか」の答えは出ただろうか。「戦えるか戦えないのか明確にしろ」とは言わない。だが、「生き残りのためのバトルが来年も続きそうだ」が結論では困る。何の答えもないに等しい。

FTのアジア・太平洋地域マネジング・ディレクター」の当たり障りのないコメントを紹介した後で、メディア調査会社に新聞業界の将来を語らせて「生き残りのためのバトルが来年も続きそうだ」と締める。これでどうやって「日経&FTは世界で戦えるか」を判断すればいいのか。

記事を読む限りでは、「日経&FTは世界で戦えるのか」を小林氏がきちんと論じるのは難しそうに思える。ダラダラとFTの編集作業の流れを説明したり、「FTのアジア・太平洋地域マネジング・ディレクター」のコメントを長々と使ったりしているのは、そうしないと誌面を埋められないからではないか。だとすると、東洋経済編集部の人選ミスとも言える。

ついでに、いくつか細かい指摘をしておく。

◎英国は欧州外?

FTは英国、欧州、米国に展開」と書くと「英国は欧州ではない」とのニュアンスが出てしまう。コメントとは言え、これは避けたい。今回の場合、「FTは欧米に展開」で十分ではないか。


◎日経では実施済みだが…

複数の新聞が印刷機、経理部、営業部などを共有するのも手だ」というコメントを小林氏は使っているが、日経では何十年も前からやっている。日経本紙に加えて、日経産業新聞、日経MJ、日経ヴェリタスは「印刷機、経理部、営業部」だけでなく、記者も共有している。

日経の現状をきちんと理解した上で小林氏が記事を書いていれば、この手のコメントを注釈なく使うとは考えにくい。やはり今回は人選を誤ったのだろう。


※記事の評価はD(問題あり)。小林恭子氏への評価も暫定でDとする。今回の特集「そのメディアにおカネを払いますか?」に関しては、以下の投稿も参照してほしい。

雑誌の苦境は伝えたくない? 東洋経済のメディア特集
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_14.html

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