2016年8月1日月曜日

もはや記事型広告 日経「低リスク型の投信 あおぞら投信」

1日の日本経済新聞 朝刊金融面に「低リスク型の投信 あおぞら投信、為替ヘッジ活用」という広告と見紛う記事が出ている。 こうした記事を載せないと紙面が埋まらないのならば、金融面をニュース記事で構成するのは諦めた方がいい。
三柱神社(福岡県柳川市) ※写真と本文は無関係です

問題の記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

あおぞら投信は低リスクを売り物にした投資信託商品を販売する。為替リスクを避けるヘッジ手法を活用し、資産価値の目減りリスクを抑える。預金金利が低下するなかで、新たな資産運用手段として売り込む。

新たに販売するのは期待利回り年3%の「森のしずく」と年1%の「海のしずく」の2つのファンド。為替ヘッジの活用で想定リスクを抑える。高い利回りを求める投資家に年5%の「星のしずく」も販売する。

あおぞら投信は業務を始めた2014年からの2年間で運用資産残高が1千億円を超えた。柳谷俊郎社長は「今後も顧客が安心して利用できる独自商品を提供していきたい」と話す。

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ニュース記事を書くときは「どこにニュース性があるのか」を考えるべきだ。この記事には、そのニュース性が見当たらない。強いて挙げれば「低リスクを売り物にした投資信託商品を販売する」ことだろう。あるいは「為替リスクを避けるヘッジ手法を活用」する点か。

「低リスク投信の販売は日本初」「投資信託では初めて為替ヘッジを採用した」というのであれば、記事にするのは分かる。現実には低リスクの投信は山のようにあるし、為替ヘッジも珍しくない。なのに、なぜわざわざ記事にするのか。

しかも「どの程度の低リスクなのか」には言及していない。「低リスク型の投信」という見出しを付けているのだから、必須な情報だ。「柳谷俊郎社長は『今後も顧客が安心して利用できる独自商品を提供していきたい』と話す」という読者にとっては無駄とも言える情報を載せる余裕があるのならば、低リスクの度合いに触れるべきだ。この記事を「記事型広告」と見なせば、宣伝臭い社長コメントを入れているのも頷けるが…。

ちなみに、あおぞら投信のサイトを見ると、期待利回り年1%の「海のしずく」は購入手数料が1.08%、信託報酬の実質的な負担が年0.925%となっていた。保有期間を仮に10年とすると、手数料負担を差し引いた期待利回りはほぼゼロだ。低リスクとは言え、わざわざリスクを取って購入するような商品ではない。

ニュース性もないし、金融商品として魅力的なわけでもない。なのに記事で紹介して「今後も顧客が安心して利用できる独自商品を提供していきたい」という社長コメントまで載せてあげる。この救いようのなさは、ある意味で凄い。

しかも「低リスクを売り物にした投資信託商品を販売する」と書いているのに、いつから販売するのか不明だ。調べてみると、7月に販売が始まっているようだ。だったら「販売を始めた」と書くべきだ。この辺りにも記者の節操のなさが出ているのだろう。

※記事の評価はE(大いに問題あり)。

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